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東京五輪を中止すべき「7つの理由」 犠牲者が増える中での強行開催は人類史の汚点だ

感染防止の戦略なくして開催を強行する──これでは亡国のオリンピックになってしまう! 膨らむ国民負担、ワクチン接種の不平等、日本の「賠償責任」……開催すべきではない7つの理由を解説しよう。/文・後藤逸郎(ジャーナリスト)

強行開催は現実逃避

「我々は忍耐と理解を求めざるを得ない」

国際オリンピック委員会(IOC)は1月27日の会見で、東京2020オリンピック・パラリンピック大会について、新型コロナ感染に苦しむ日本人や選手らに開催準備を求めた。中止に傾く日本の世論を諫めるかのように、バッハ会長は「我々の役割はオリンピックを開催すること」と言い切った。

「平和の祭典」を名乗ってきた主催者が、感染防止より大会を最優先する「世界最大級のスポーツ興行主」(拙著『オリンピック・マネー』)の本性をむき出しにした瞬間だった。

延期を決定した20年3月より、新型コロナ禍は内外で悪化の一途をたどっている。英タイムズ紙は1月21日、匿名の連立与党幹部の話として、日本政府が内密に中止を決めたと報道した。内外で中止論が沸き起こる中、IOCのバッハ会長は1月22日、「206カ国の各国オリンピック委員会と話し、大会開催に全力を尽くすことを確認した」とのビデオメッセージを出し、「大会は我々がまだいるトンネルの先の光だ」とした。日本政府と東京都、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会もそろって英タイムズの報道を否定し、IOCと共に半年後のオリンピック開催を強調した。

だが、日本の国民の大半は、開催まで半年を切っても疫学的、科学的根拠のある感染防止策を伴った大会方針を示さないIOCと日本政府、都、組織委に絶望し始めている。共同通信が1月に実施した電話世論調査で、オリンピック開催を望む意見は14.1%と、前回調査より半減した。再延期は44.8%、中止は35.3%にのぼる。IOCは再延期を否定している現状を踏まえれば、日本国民の8割がオリンピック中止を受け入れていると言える。

菅義偉首相が口にする「人類がコロナに勝った証としてのオリンピック開催」は、感染収束があって初めて成り立つものだ。犠牲者が増え続ける中で強行開催するのは現実逃避に過ぎない。このまま開催に突き進むなら、東京オリンピックは人類史の汚点として記憶されるだろう。

以下、中止すべき7つの主な理由を見てみよう。

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(1)膨らむ国民負担

根拠なき開催方針の維持により、国民負担は日に日に膨らんでいる。

組織委は20年12月4日、延期に伴う追加負担を約3000億円増と発表。大会経費は総額1兆6440億円と過去最高だった12年ロンドン大会の約1兆5000億円を上回った。しかもこの金額は、関連経費を含めると3兆円に迫ると会計検査院が2度指摘したのを、官邸が否定し、少なめに再算出したものだ。

さらにこの大会経費は、オリンピックの各試合会場の観客席を満員とする前提で入場券900億円の販売収入を見込んだうえでの数字だ。これではあまりにご都合主義だろう。

緊急事態宣言の再発令に伴い日本政府や都は「人流」を抑えることが感染拡大を防ぐとして、スポーツ、演劇等の入場者数を制限し、飲食店の営業時間まで制限している。当然、開催時にコロナが収束していると見通せない限り、観戦客制限を図るべきだ。無観客という最悪の事態を想定し、予算を組むのが政府、都、組織委の当然の責務ではないか。

しかし、追加負担の算出時もなお満員の観客想定を維持している。海外メディアから出てきた中止論打消しのためか、無観客や定員の半数制限を政府が検討しているとのリーク情報が1月下旬に流れた。だが、無観客を決めれば、一定の感染抑制と引き換えに組織委は900億円の収入を失う。組織委に他の収入で900億円を用意できなければ、負担は都、政府の順番で付け回される。実際、昨年の追加負担の内訳をみると、収支調整費という名目で、都が組織委への150億円支出をきめている。

組織委の予算で足りない分は、税金で補うことがまかり通っている。一方で、国民は新型コロナ感染拡大で不足した病院病床に入れず、自宅で亡くなる事例が多発している。まず、目の前の感染症対策を優先すべきと、国民の多くは思っている。

ところが、組織委と政府、都で構成する「新型コロナウイルス感染症対策調整会議」は昨年12月の中間整理で、オリンピック期間中の訪日外国人の入国規制緩和を打ち出した。「外国人観客については、14日間隔離・公共交通機関不使用を条件とすることは、観戦を事実上困難とする」ためだという。国民の求めに逆行し、感染防止よりもオリンピックが大事だと公言したに等しい。

(2)「入国緩和」という悪夢

政府は出国時の陰性証明と入国後の健康管理アプリで対応するとしている。しかし、PCR検査は偽陰性、偽陽性が一定数現れる不確かなものだ。検査漏れのリスクをなくすための14日間の隔離ではなかったか。

昨年12月下旬以来、日本でも新型コロナの英変異株が見つかっている。英国から帰国した男性は入国時の検査で陰性だったが、2週間の待機期間中に複数人と会食した後に陽性と判明した。2週間の自主隔離を免除された訪日外国人が同様に感染源となりうるのは明らかだ。また、日本入国後に訪日外国人が感染するリスクもある。政府が緊急事態宣言下で「人流」を防ぐため「不要不急の外出自粛」を求めたのと逆行する。

訪日外国人に健康管理アプリを利用してもらい、感染追跡に役立てるというが、実効性は定かでない。接触確認アプリ「ココア」の日本国内のダウンロード数は2400万件余、陽性登録は9000人余り(1月22日現在)に過ぎない。国内の陽性者は同時点で35万人を超えており、当初期待された効果を発揮していないのが実情だ。訪日外国人向け健康管理アプリは「義務付けを検討中」(内閣府)の段階だ。

英国のジョンソン首相は1月22日、英変異株の死亡率が従来株より高いことを明らかにした。新型コロナは警戒を緩める状況にはないのだ。

安倍政権は昨年、入国規制をせず、国内で感染が広がった。なのに、菅政権はビジネス関連で中国など11カ国・地域の入国緩和を続け、変異株の国内流入を招いた。年明けに11カ国・地域の入国も停止されたが、感染リスクを過小評価し、国内感染を広めた。オリンピックの訪日外国人の入国規制緩和で、同じ愚を3度繰り返そうとしている。

感染対策より優先されているのは聖火リレーも同じだ。

組織委は昨年12月15日、聖火リレーをほぼ当初案と同じルートで開催すると発表した。自治体に感染予防を求めたが、肝心のガイドラインは21年1月28現在未公表だ。ここでも「人流」を作るイベントを引き起こしながら、感染を抑える具体策を示さないのは、無責任の極みだろう。聖火リレーの具体的な感染対策と疫学的根拠について、筆者が組織委に尋ねたところ、「安全・安心な大会運営ができるよう検討し、12月の中間整理に至ったところです。引き続き、IOC・IPC(国際パラリンピック委員会)をはじめ、国、都、関係機関と緊密に連携し、準備を進めてまいります」とだけ回答した。疫学的根拠を具体的に示さず、実施だけを決めたことになる。

海外で中止論が報道された1月22日、「組織委は緊急事態宣言中の都府県で聖火リレーを見合わせるなど規模を縮小する」とのリーク情報が流れた。

コロナは「人流」で感染するのだから、聖火リレーの実施は参加者の感染リスクを高めることにほかならない。あえて実施しようというなら、まず組織委が疫学的根拠のある対策を公表し、社会の検証を受けるべきだろう。「緊急事態宣言中の都府県で縮小」することで、感染リスクがどの程度下がるのかを示さなければ、対策とは言えない。

オリンピック優先は、コロナ感染対策を実行する自治体にも負担となっている。組織委は国、地方自治体、民間企業出向者らからなる寄り合い所帯だ。組織委の職員数は約3500人(1月1日時点)で、都が約3割、国と都以外の地方自治体が2割弱、民間企業等が2割強、契約・派遣社員等が約3割を占める。

感染拡大で業務が捌けなくなった保健所を抱える地方自治体の多くは、人員のやりくりに苦労している。

聖火リレーで組織委が具体的な感染対策を示さない中、準備するのは自治体で、人的、金銭的負担は増えるばかりだ。組織委に派遣中の人員を戻し、自治体の業務に従事させることが、まず収束への近道であり、その先にオリンピック開催の環境が整うのではないか。そもそも、聖火リレーは競技でなく、関連イベントに過ぎない。1936年ベルリン大会でナチスが始めた国威高揚プロパガンダを起源とするものだ。

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オリンピック・ベルリン大会

(3)医療従事者減少の地獄

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