短歌|黒瀬珂瀾
無観客われ
岸と水見分かぬまでに吹雪きたる庄川を越ゆ亡者のごとく
電線ゆ雪ほたほたとこぼれ散る朝は〈脱藩〉の響きを思ふ
五箇山の手漉き葉書に鷺と鷲また背の君は書き間違へて
老年に至りてなほも銭欲るは愚の極みとぞキケロー嗤ふ
すらすらと『鬼滅(きめつ)の刃(やいば)』の長台詞諳んじて児よ頼むから九九
傷心もややぬるむころ加越なる天田峠に春は降りきぬ
無観客相撲テレビに眺むればああ無観客人生のわれ
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