パンデミック禍に生まれた、学費出世払い方式のプログラミングスクールMicroverse
グローバル人材育成を目指すプログラミングスクール
近年、COVID-19が世界中に襲いかかり、就職も転職も困難な時代に突入している。その影響で、多くの人々はグローバル人材を目指し、語学力と同じくプログラミングスキルを重要視し始めた。それに伴って、人々のプログラミング学習への意欲や需要が高まっている。
しかし、世の中には様々な価格帯のプログラミングスクールが存在しており、どこで学べば良いのかを見極めることは難しい。そんな中、米国では入学費も授業料も無料で、世界中からプログラミングを学べるスクール「Microverse」が人気を誇っている。そこにはどんな背景があるのだろうか。
全学費出世払いのMicroverse
Microverseの創設者兼CEOのAriel Camus(アリエル・カマス)氏は、企業が必要とする役割を果たせる人が世界中にたくさん存在しているのにも関わらず、そのような機会を提供する場所が少ないことに衝撃を受けた。
それが動機となってMicroverseを創設し、今日までのプログラミングスクールとは全く異なる形態のサービスを提供するに至った。
同社は、ソフトウェア開発者向けのトレーニングプログラムを設計しており、約6ヶ月間をかけて就職・転職までをサポートする。卒業生の就職率は驚異の95%を超えているが、その理由は、同社の卒業生の就職先が米国だけに限らず、世界中に候補企業があるからである。
昨今のパンデミックの影響もあり、大手テクノロジー企業は地理的な境界や複数のタイムゾーンをまたぐリモートワークを積極的に採用していることも、同社のビジョンを後押しする追い風となっている。
これにより、肝心の卒業生の就職という問題で行き詰まることが減少した。同社から大手企業に就職する場合も多く、カマス氏は「同社のおよそ300名の卒業生がMicrosoftやVMWare、Huaweiなどのテクノロジー企業に就職している」と語っている。
さらに入学費と授業料が無料な為、これまで金銭的な事情でスクールに通うことができなかった人でも、レベルの高いプログラミングを学ぶことが可能になった。
ただし、Microverseは、同業他社と比べて、学費の徴収が厳しいという特徴もある。Microverseは就職した生徒の月額給与が1000ドル(約11万1000円)を超えたら、その額の15%を要求する。上限はなく、生徒は1万5000ドル(約167万円)を完済するまで支払いを続ける。生徒が払うのは彼らが学んだことの関連分野で雇用されたときに限るが、所得共有協定(ISA)の期限切れがないため、学習内容に関連する分野で職に就いたら、終わりなく返済義務を負う。
トレーニングプログラムには、世界188ヵ国から多くの生徒が参加しているが、学ぶだけでなくリモートを通してP2P(クライアント同士が繋がる)ラーニングを行っており、社会で必要とされるチームワーク力の育成にも役立つ。これは運営コスト削減と高い月収を得られる優秀な生徒を輩出したいMicroverse側にとってもメリットが大きい。
日本のプログラミングスクールとの違い
日本には、プログラミングスクールが数多く存在しており、学費も比較的高い傾向にある。だがその一方で、Microverseのような入学費や授業料が無料のスクールが、近年日本でも増加しており、その後の所得シェアも無料である点で同社とは異なる。
無料の理由は、提携先から協賛金や契約料を得て運営が成立しているからだが、それによって就職先がある程度限定されてしまうため、エンジニアとして就職したい企業に入社することができなかったり、以前の給与とあまり変わらない可能性があるという課題がある。
入学前から始まる厳しい選抜と、今後の拡大
CEOのカマス氏によると、毎月数千の応募はあるが、現段階で会社の負荷が大きくなりすぎないように、数千の中のごく一部だけを受け入れているという。2021年の年間の受け入れ生徒数は1000人ほどだ。そのため、就職の可能性が高い人材を選抜しなければならず、入学前に出されている課題やトライアルに合格しなければ入れないという制限がある。これは、既存のプログラミングスクールとは大きく異なる点である。
しかし、同氏は「テクノロジー企業とのパートナー提携を今後計画しており、今後の年間の受け入れ生徒数は現在の5倍以上になるだろう」と語っている。これにより、毎月数千人、年間数万人の中で合格しなければならないという、入学希望者にとって狭き門だった入学の入り口が、今後広がりを見せることが予想される。
初期費用の壁をなくし、世界に門戸を開くMicroverseのプログラミングスクールが、世界に羽ばたく人々が増えていくことは間違いない。
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