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花組『銀ちゃんの恋』 ~銀ちゃん、本日も反省の色なし~ つかこうへい作「蒲田行進曲」より@KAAT神奈川芸術劇場の感想

宝塚ライトファンのあきです。

先日、マイティー(水美舞斗さん)の「銀ちゃんの恋」を観劇してきましたー!

世代的には、つかこうへいの名前は知っていても、蒲田行進曲ってピンと来ないんで、正直どうかな?と。。。思っていました。以前、大空祐飛さんが演じていたのは知っていて、演目名としてはすごく面白そうだなというのが初めの印象でした。

そして、ビジュアル発表があり、なんとまあ!ハエ叩きをこんなにもカッコよく持てるのは、マイティーだけでしょう!と思いました。ほんと、ポスタービジュアルからして、絶対におもしろいでしょう!と踏んで行きました。

昭和感プンプンな雰囲気

まずですね(たしか冒頭に)、紫のライトアップからの秘書(美風 舞良さん)と、専務(航琉 ひびきさん)のお二人でのダンスと歌唱があって、それがもうたまらなく「ザ・昭和!」という感じでして。二人のただならぬ関係もあって、のっけから、めちゃ濃いなあ〜〜〜〜〜〜!という印象。

客席はこれだけでかなりウケていて。みなさん、この世界観に入り込むのが早いな〜!と思いました。

私は「銀ちゃんの恋」は、初観劇でした。事前情報も全くなしで観たので、はじめのうちは、この濃ゆ〜〜〜い昭和感たっぷりな雰囲気と、やけに一人ひとりの圧の強いみなさまの演技にちょっと慣れずにいました。

でも、だんだんとこの世界に入っていけるから不思議ですよね(笑)

舞台上の熱気を感じていると、昭和当時の京都の映画撮影所って、きっとこんな感じだったんだろうなと。自分も当時のその場にいるような気持ちになってきましたよ。

劇場のサイズ感も、グッと舞台に近かったので、演者の方の繊細な空気感もとっても伝わってきて、いいな〜と思いました。(私、KAATでは初めて観劇だったのです。)

カメラ導入

今回からなのか、分かりませんが、舞台が京都の映画撮影所ということもあって、監督と助監督、カメラマンのクルーが舞台上にもいまして、カメラマンはカメラを回しているんですね!

そのカメラ映像がリアルタイムで、舞台上方の2つのスクリーンに映し出されるという!おもしろい趣向で、かなりの至近距離からアップで映してくれるので、このスクリーンを見てもおもしろいという。

ただ、カメラは方向転換はできるんですが、上下移動まではできないようで、後半は映し出される映像が、画的に残念な時もあり(笑)それも含めて面白いんですが。私は心の中で「もうちょっと右!」とか、「演者の立ち位置が重なってるよ〜!」とか思いながら観ていました(笑)

このカメラの小道具の果たす役割はとても重要で、これがあることで、映画撮影所らしく、臨場感が増していたと思います。

銀ちゃんカッコイイっ!マイティー最高!

マイティーは階段上から新撰組の格好で登場するんですけどね、それがまたカッコイイ!!!!!!カッコ良すぎる!!!!!!!キマリすぎ!!!!!

オペラグラスで覗いても、ほんとカッコ良すぎでした。オペラグラスなしでも、立ち姿が美しい!

今回マイティーは主役で、腹の据わった、すごく胆力のある、どっしりとキザるマイティーが見れて本当に嬉しかったです!!!!!

階段での演技でも、声の出し方が素敵でしたーーーー♡お腹の下の方に響くような、劇場中を自分が持っていくような、場の空気を掌握して、ちゃんと座長を務めている、真ん中としてのマイティーの在り方に、「うんうん!このマイティーが見たかったぁ〜〜〜〜!!!!(T^T)」と喜んでいました。

以前に、「Dream on」にマイティーが特出するというので、私は初めてムラに行きました。なので、初めてのムラはバウだったんですが、その時も、マイティーが客席降りからの舞台のセンターに寄りかかって両肘をかけて立っていて、Jazzの曲で客席の心を掴んで、めっちゃ大盛り上がりしていて、その時のオラオラ感とかドヤ感が新鮮で、真ん中として務めていたのが思い出されました。

そして、これだけ銀ちゃんとしてド派手に大物感たっぷりにキメっキメっにキザっても、まったく役から浮つかないという、銀ちゃんを地で行けてしまうイケメンっぷり男前っぷりに、花男のすごさを改めて思いました。

銀ちゃんの衣装がものすごいですからね!金キラ、銀ギラ、白のハット、小道具にハエ叩き(笑)それも着こなしちゃったうえでの、キメっキメっですから、これをまるっと手中に収めて余りあるくらい成立させちゃうって凄いですよね!

登場人物は濃いめキャラが多いんですが、みんなが振り切って濃く演じているので、この世界観が統一感をもって成り立っていました。たぶん、この温度感や熱量をそろえて行かないと、ちょっとでも温度差のほころびがあると、この世界観が一気に冷めてしまう、そんな気がしました。

ある意味、強引にこの世界へとお客さんを連れて行かないと行けないので、ほんと、演者のみなさんが振り切って演じていて、見ていて清々しかったです。

ある意味、主役はつかさくん

作品の主役はもちろん銀ちゃん(マイティー)なんですけどね。銀ちゃんは、大スターでカッコよくて、モテて、中身は子供っぽくて、すごく分かりやすい性格で、でも繊細で人情にあつくて、男気もある。というかわいい人なんですね。そして人を見る目もある(小夏をヤスに託した)。

みんなは銀ちゃんに振り回されて・・・という展開なんですが、ストーリーの展開の仕方と銀ちゃんの子供のような素直な性格のためか、銀ちゃん自身の心の変化の軌跡はあまり丁寧に描かれていないかなと思いました。小夏への自分の想いに気づくところは、もっと丁寧に描かれていても良かったのでは?もっと観たかったなと、個人的に思いました。

銀ちゃんは、どこにいてもどんな時も銀ちゃんらしくある。かっこいい腹の座ったスターとしての銀ちゃん。子供っぽく、無邪気で、周りの人にひどいことをしてもなぜか憎めない銀ちゃん。愛されキャラの銀ちゃん。

一方、つかさくん演じるヤスさんは、銀ちゃんとの出会い、小夏との件、階段落ちへの決意、死への恐怖から自暴自棄になる、最後に男気を見せて役者人生としても自分の人生としても大きな節目を迎えるという。

ものすごく波乱万丈で、それも自分が大好きで惚れ込んだ銀ちゃんに関わったからこそのエピソードで、「平凡な人生を行きたくはない」とこの世界に飛び込んだヤスさんの希望でもある。

銀ちゃんに振り回されての相次ぐ急展開。ジェットコースターのような状況の目まぐるしい変化があったけど、その時々のヤスさんの心境の変化をつかさくんは違和感を感じさせることなく、本当にすばらしく演じていました。

気の優しい、銀ちゃん大好きな、真面目で、不器用な男を好演していました!もう言うまでもなく芸達者な方ですから、繊細な感情表現から、歌まで、非の打ち所がない、すばらしいものでした。

4畳半の部屋で歌う、つかさくんの歌を聞いていて、なんだか泣きそうになりましたもん。心が震えるような歌をさらっと歌える方ですよね。

後半、小夏ちゃんが銀ちゃんにプロポーズされるところをぐっとこらえて何も言わずに階段で聞いている。あの場面、セリフなしの、あの演技は観ているこちらもすごく辛かった。

主役の銀ちゃんが直接的で分かりやすい感情表現で、揺るぎないスター性をもっている分、そういう意味では銀ちゃんは安定しているキャラです。

なので、その時々に銀ちゃんに翻弄されるヤスの方が揺れる感情も多く、役者としての見せ場が多かったと思います。そこを見事に演じきった、つかさくん。ある意味、この作品の主役はつかさくん演じるヤスでしょうと私は思いました。

平凡な人生はイヤだ!と役者の世界に飛び込んだヤス。
そこで兄貴分として自分が惚れ込める銀ちゃんに出会えた。
銀ちゃんが好きだからこその小夏の件と、階段落ちへの決意。
一生を大部屋役者で終わりたくないと、映画に命をかける映画バカの意地を見せた最後。

男の人であれば、このヤスの生き方に親近感や憧れを抱くのでしょうね。きっと。

小夏(星空美咲ちゃん)

星空美咲ちゃん演じる小夏。すごく小夏をものにしていたと思います。まだ研3と聞いてびっくりの貫禄でしたー!

登場したては、大女優の疲れた感じが良く出ていました(笑)その後、話が進んできて、だんだんと等身大の小夏になるにつれて、表情も柔らかくなって、母親になるんだという小夏の母性的な面も出てきていました。

銀ちゃんに惚れて、お弁当作るあたり健気で可愛らしい。そしてね、ヤスさんの4畳半で、ヤスさんに「(自分とお腹の子を)お願いします!」って頭下げるところは泣けましたーーーー。

京 三紗さん演じるヤスのお母さんと二人きりで話すところも、すごく圧巻でしたーー!気迫のせめぎ合いで。

私は、ヤスのお母さんの九州弁が好きでしたー。すごく愛情たっぷり、でも嫁を戒めて、最後には息子のために泣いて懇願するという母親の気持ちが。九州弁のあたたかくも力強い感じが良かったです。

小夏は終盤にかけてどんどんと熱量高めになってくるところを、すごく好感を持って観続けられました。

他キャスト

・王道スターのまひろくん
銀ちゃんのライバル、橘(たちばな)を演じるまひろくん。王道のカッコよさ!でした。劇中劇の小夏と踊るショーも、キマっていて素敵でした。

後半に、秘書と専務と歌い踊る、クール♪はめちゃ面白かったです。あまりにも3人が真剣&カッコよくて、オチに笑うという、そのギャップにやられました。(笑)

・悠真 倫さん
悠真 倫さん演じる監督も、かなりはっちゃけていて、おいしい笑いをとっていました。

すみません、おもしろいやら、展開が早いやら、賑やかで、他キャストをちゃんと追えてないですが。。。みなさん色濃く、個性的に舞台で生きていましたよ。ほんと濃かった!

結末は????

最後って、ヤスさんどうなったんでしょうね?
きちんと明示はされていませんでしたが、映画では最後にヤスが赤ちゃんを抱いているということらしいので、生きていたのかと思いますが。

最後の銀ちゃんは、お衣装があっぱれでしたねー!
あのネオンのスーツはかわいかったー!

作品自体は、タイトルからして軽いノリですが、内容はすごく人間味あふれるヒューマンドラマでした♡

随所に重い空気を吹き飛ばすように、笑いが散りばめられていて、その笑いのおかげで最後まで楽しみながら観れるのですが、その笑いのおかげで悲しみもより一層と引き立つ感じでした。

軽いノリで観に行ったら、思いのほか涙もあり、心が忙しいドラマを体験しました。

濃ゆーいキャラの、ザ・昭和!がお嫌いでなければ、真剣に濃い物語を振り切って演じている花組生をぜひぜひ観に行ってくださいね。

マイティーの銀ちゃんのカッコよさと、銀ちゃんのキュートなかわいらしさは最高でした♡

なんと9月10日に梅芸の千秋楽がライブ配信されるそうです!
私は宙組さん観劇とかぶってしまい、見れなくて残念ですが、気になる方はぜひみて観てくださいね〜。

暑い夏に、熱くて濃ゆくてめっちゃ切ない青春の恋「銀ちゃんの恋」がおすすめです╰(*´︶`*)╯♡

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