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のんほいパークで成長するポケモン化石博物館、成長する生き物と展示

すでにこの記事のときにかはく会場で散々楽しんだポケモン化石博物館ですが、

こっちの記事では開催前から豊橋会場をゴリゴリに推しまして、

「この夏」って言っておきながら10月9日になってようやくのんほいパークに行くことが叶ったんですね。なにせ博物ふぇすの準備や天気の都合があったもので。

数年ぶりののんほいパーク

のんほいパーク自体、上の記事でも書いたとおり私にとって全国でも特に素晴らしい施設のひとつですし、元々よかったのがどんどん改良されているので定期的に見に行きたいものの、この数年外出を控えていたので本当に久しぶりでした。

最寄駅前のティラノのトピアリー。数年前までの羽毛復元みたいにふさふさです。

広々とした空に温室のドームとヤシの木がよく映えます……この日は時間が足りなくて植物園をほぼ見ることができませんでしたが。

せっかくなので花と実が両方ついているパパイヤだけでも。

このとき個人的な用事として、とあるかたに預かっていただいていたものを受け取ったのでした。改めて、本当にありがとうございました!

新たなる化石、新たなる視点(1)

いつもなら動物園部分を進みつつタイミングを見て博物館へ、という流れですが今回ばかりは博物館に直行です。門の前に突き出したピロティもこのとおり。

園内はかなり賑わっていました。ポケモンパワーかのんほいの実力か。両方だったら嬉しいです。

豊橋自然史のいかにも90年代な建物、看板に並んだ発掘ピカチュウの姿。

さあ入場です。豊橋自然史の特別展示室はかはくの企画展示室よりずっと広いのです。すでに高い天井の下にプテラノドンの骨格と、ポケモン化石博物館のアートワークが映ったスクリーンが見えています。
かはくでも出迎えてくれたプテラとピカチュウですが、今度は名前が最も近い翼竜であるプテラノドンと比較することができますね。

おおむねかはく会場と同じ展示ストーリーです。ポケモンの世界のカセキ研究とこちらの世界の化石研究の比較から入ります。

かはくで思う存分味わってきたのでもはや存在することが当たり前にすら感じられるオムナイトですが……、

アンモナイトの化石の展示に豊橋ならではの中部地方のものが加わっています。長野、静岡、そして恐竜化石でも有名な福井のものです。

これは豊橋自然史の所蔵品で、ドイツ産のアリエティテスです。ジュラ紀のアンモナイトとしてはかなり大きいものです。

会場が広いおかげか、豊橋会場ではカブトプスを後ろからも観察することができます。背面の甲羅がどうなっているかも気になるところですが……、

私が特に注目したのは首の付け根でした。後頭部から後ろ向きの大きな棘が生えて、脊椎動物でいう首に当たる節は頭部の下に直角に接続しています。
しかしカブトプスは活発に遊泳するということなので、遊泳中はもっと水の抵抗が小さくなるような頭の向きをしていてもおかしくありません。
おそらく、遊泳中はこの関節部分で頭だけが上向きに回転して胴体と同じ向きになり、棘はそのままの向きで垂直に立って、魚の背鰭のように体を安定させるのではないでしょうか。

登場!アマルルガ

さて、今回の注目ポイントであるアマルルガの骨格想像模型がかなり早いうちに登場しました!

こちらの世界の恐竜アマルガサウルスの骨格とかなり比較しやすい葉位置で並んでいます。

豊橋会場をお勧めする記事では手の親指や首の造りを比較のポイントとして挙げていて、確かにアマルルガの発達した親指やこちらの世界の竜脚類よりはるかに柔軟に動きそうな頸椎も見どころなのですが、

実際の骨格を目の当たりにして初めて、やはりこのヒレが最も見るべきところだと気付きました。

アマルルガのヒレは頭のすぐ上で最も幅広く、また左右にゆるやかに開いていて、正面から見たときによく目立つものになっています。

頭のすぐ上で幅広くなっているのはアマルガサウルスよりむしろバハダサウルスという竜脚類も連想させますし、正面から見て目立つというのは角竜類のフリルにも似ています。

アマルガサウルスの首の棘突起が真上を向いていて、首の途中から高くなっているのを見れば違いは一目瞭然です。
(なおこの棘突起が生前どうなっていたかについて、会期中に新たな説が提示されました。当初はこの棘突起の途中までが帆になっていて、先端1/3ほどが角質に覆われた棘であったという説がやや有力で、イラストもそのとおりに描かれたのですが、帆と棘の部分に違いがあるという観察結果を否定し、むしろ全体が1枚の大きな帆に包まれていたのではないかというのです。)

アマルガサウルスは横並びになった状態で帆を、アマルルガは向かい合った状態でヒレを見せ合ったのではないでしょうか。よく似て見えても細かい部分は異なり、生態にもそれだけ違いがあったというわけです。

ところで、骨格模型に骨とよく似た質感のヒレが付いているということでヒレも骨なのかと勘違いするかたが散見されるのですが、アートワークに用いられている骨格想像図のとおり、波打ってはためくヒレにはアマルガサウルスの帆と違って骨はないと考えられています。

これは北九州市立いのちのたび博物館のズンガリプテルスという翼竜の骨格です。翼竜の翼は腕~指を除くと皮膜なので、その部分に骨はないのですが、こうして皮膜の部分も作って補ってあります。柔らかい部分がどうなっていたか推定できるものの復元骨格ではよくある手法といえます。

この部分の考えかたについて骨格の横に掲示してあります。

そもそも「ヒレのカセキ」から復元されるアマルスのしんかしたアマルルガの骨格からヒレを外すわけにはいかなかったというわけで、骨以外のものも化石に残りうるということを示す展示となりました。

アマルルガの棘突起を見てみましょう。アマルガサウルスの化石は前半身飲み見付かっているので後半身は推定なのですが、その推定されたアマルガサウルスの棘突起とアマルガサウルスの棘突起では似ているところも違うところもあります。
首や胴体の棘突起はアマルガサウルスと違って短いのですが形はよく似ています。

尾のへら状の棘突起はアマルガサウルスで推定されているものとそっくりです。何とも可愛らしい形。

続けて尾の先のほうを見てみると、可愛らしく巻いた中心、先端部分はこぶになっています。シュノサウルスという竜脚類によく似ていますが、デザイン担当の(あくまで向こうの世界の生き物として扱っていたのであんまりデザインとか言わないほうがいい流れでしたけれども!)ありがひとし先生によると、所十三先生の「DINO2」という恐竜マンガに登場した、長年生きている間に尾の先端がこぶ状に変形して打撃力が上がったディプロドクスが直接の発想元だったとのことです。

元々言っていたとおり親指も見ましょうね。生きている状態のとおり内向きに大きく発達しているのが分かりますね。他の指は軟組織に完全に覆われているようです。……アマルガサウルスのはちょっと見づらかったんですけれど、後でブラキオサウルスのが出てきますのでご安心を!

アマルルガの威容、

アマルガサウルスの威容。同じくらい見応えのある骨格標本であると感じられます。

ところでアマルガサウルスのかたわらにあるこの異様に大きな骨の板はスーパーサウルスの肩甲骨です。なんとアマルガサウルスの3倍ほどの全長があったと考えられています。アマルガサウルスで大きい大きいと言っていたらこれですから、やはりこちらの世界の恐竜の大きさは容赦がないです。

新たなる化石、新たなる視点(2)

メガヤンマのコーナーに追加された、中新世(恐竜が絶滅してかなり経った頃)のイタリアのリベルラ・ドリスというヤゴです。現生のベッコウトンボなどとごく近縁のようです。

アノプス・アーマルドのコーナーのそばに、たくさんのカンブリア紀の化石が添えられていました。その中から1つ、アノマロカリスと同じ放射歯目に属するものの触手にカニの爪のような棘が生えたアンプレクトベルアを。アノマロカリスにも様々な特徴を持った近縁種がいたのです。

プロトーガ・アバゴーラのコーナーに追加されたプロトステガというウミガメの骨格です。ポケモンは全体的にこちらの世界の似た生き物と比べて頭が大きいという話をかはく会場のときの記事に書いたのですが、プロトーガとプロトステガに限ってはあまり違いません。

肋骨の隙間であるところの甲羅の穴はかなり違うのですけれどね。

プテラノドンはディモルフォドンと並べてあり、大きさといいクチバシやプロポーションといい、翼竜がじつに多様であったことが表現され、名前と知名度だけでプテラをプテラノドンに似ていると断ずるのが軽率なことを示しています。

かはくでは離れていたチゴラスとガチゴラスが並びました。これでしんか前後のプロポーションの違いがいっそうはっきりします。おそらく頭ばかりが発達したチゴラスは顎の力に頼った戦いかたをして、胴体や後肢もしっかりしているガチゴラスは突進やフットワークを織り交ぜるのでしょう。

解説もなく展示されていた有孔虫(「星の砂」などの仲間である、殻に包まれた単細胞生物)です。ポケモンで有孔虫といえば有孔虫そっくりの体構造を持つメテノ……隕石のポケモンです。ポケモン化石博物館の最後に出てくると因縁めいたものを感じます。

これは有孔虫の殻の3Dデータを拡大して3Dプリントしたもの。

化石のクリーニングの作業場を見せて、ポケモン化石博物館の豊橋会場は終了です。

広々とした特別展会場を活かし、かはくよりいっそう見やすくボリュームも増して、素晴らしいポケモン観察になりました。

もちろん豊橋会場でも常設展示にポケモン化石博物館にからめた掲示が追加されているのですが、つい一番ポケモンを感じてしまったのが、今まで毎回見てきたこのホールのトリケラとティラノでした。

あいては ガチゴラスを くりだしてきた! ゆけっ トリデプス!

さて、常設展示も久しぶりに見てみると豊橋自然史の細かな部分の良さが改めて感じられました。

とてもマイナーな化石にすごく詳しい説明が付いていて、細かいところまで勉強になります。

ブラキオサウルスの手です。やはり巨大な種類ともなると親指はよりいっそう大きく発達しています。

トリケラトプスの断片的な骨ですが、骨格と比べて目を引かないこれらを、体のどの部分か考えてもらうという効果的な展示に変えています。

きちんと見てみると愛知県周辺の化石にも強いです。これは深海の化学合成生物群集と呼ばれる、化学物質を分解するバクテリアを源とする生態系に属する生き物の化石です。愛知県周辺は深海の生き物の化石がよく見付かるようです。

もちろん、先程のティラノとトリケラに勝るとも劣らない迫力のある恐竜や大型哺乳類の骨格や化石も揃っていて、マニアでない皆様も存分に楽しめます。

ポケモン化石博物館の会期は11月6日までということでそちらはもちろんのこと、もし終わってしまってもぜひご覧いただきたい素晴らしい博物館です。

今生きているものは今成長する

動物園部分を見ていきましたが、博物館と一緒に見るにはいささか広い動物園です。特に気になるところだけということで、まずは夜行性動物館へ。

ツチブタのアユミさんです。初めて見たときは東山動植物園で生まれた赤ちゃんでしたが、もうすっかりレディです。

サーバルのステルさんです。アニメ版けものフレンズ1期がブームを起こしたすぐ後に導入されたので話題になりましたが、当時まだまだ幼かったステルさんももうすっかり大人になりました。

ここのサバンナゾーンは私の大好きなエランドが主役なので嬉しいです。というよりここのエランドが見事だったのでエランドが好きになったというのが正しいのですが。

いやまあ普通はキリンが主役だと思いますよね。でもどちらも順調でなによりです。

ライオン舎が改良されたということで、猛獣関係の施設はもっと良くなってほしいところだったので気にしていたのでした。

そこまで広いというわけではないのですが、高低差を重視することで変化のある場内としています。ライオンのほうが来園者より位置が上なのもよいところです。

特に、大きな岩の上にいるオスライオンのほうです。こちらは安佐動物公園で生まれたアースさんです。アースさんといえば……、

2019年に安佐でまだ子供だった姿を見ていたのですね。(この写真はきょうだいのムーンさんのほうかもしれなくて申し訳ないのですが、まあ同じ大きさだったと思っていただければ。)

安佐は遠いのでのんほい以上においそれとは行けないのですが、その安佐から来てこんなに立派になったアースさんと改良されたライオン舎で再会し……、金網に守られながら見下ろされ、威厳に震えることになるとは。そう、この金網は見ているこちらを守るものでもあると感じられる、上下の位置関係です。

改めて動物の成長の幅とライオンの強大さを感じられました。

広々としたまだ新しいアジアゾウ放飼場で、長年のんほいに住んできたアーシャーさんが新しくやってきた若いゾウ達と接しています。ズーラシアからこの新しい施設にやってきたチャメリーさんも今ではすっかりアーシャーさんと仲良しで、アジアゾウのメス群れというものが形成されています。

メスの施設から遅れて整備されたオスの施設で、ダーナさんものびのび過ごしています。

のんほいに起こった数々の良い変化を目にして安心するとともに、次はあそことあそこを……と、ますます欲張ったことも考えてしまうのでした。

閉園時間が迫っていますが、木曽馬のところには寄らざるを得ませんでした。近い地域の在来馬がいるというのは日本の動物園にとって大事なことだと思います。

急いで出口に向かうところで気付いてしまってどうしてもスルーできなかった植物……博物館前の恐竜広場に植えられたナンヨウスギが実を結んでいたのです。

ナンヨウスギは恐竜のいた頃に特に繁栄していた針葉樹です。当時の植物の様子をしのばせてくれる木ですが、調べたところでは国内で実がなることはあまりないようなのです。何気ない植栽に見える植物も、ここではのびのび暮らして何かを読み取れる存在になっているのかもしれません。

展望塔。本当に空が綺麗に見える動物園です。また間が開かないうちに来なくてはと思わせてくれます。

……ところで、イワビー以外のけもフレマンホールってまだ見付けたことがないんですよね。せっかく展示期間を延長してくれたということなので、やはりその期間中に……。

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