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この夏、のんほいパークのポケモン化石博物館から大冒険に出発しよう

ポケモン化石博物館の巡回展のなかで、東京のしかも最高峰の博物館で開催されただけあって特に盛り上がった国立科学博物館(かはく)会場ですが、その会期も来週末に終了が迫っていますね。

次の会場は7月からの豊橋市自然史博物館です。

愛知県の東の端ということで小さな会場なのかな?と思われてしまうかもしれませんが……、この豊橋市自然史博物館は、古生物に関しては国内でも特にいい博物館のひとつですし、この博物館があるのんほいパーク国内でも特にいい動植物園のひとつです。

この博物館のどんなところがよいかというと、地球や生物の歴史を順を追って丁寧に主要なところをしっかりとおさええつつ細かいものに関してはかなりマニアックなものも揃えていて、入門者は基礎から、マニアは細部を、どちらもたっぷり楽しめるところです。さらに地域の自然についてもぬかりなく、大都会名古屋ではない知らなかった愛知の姿が見られます。

そしてのんほいパークは、動物達の世界に飛び込んだかのようなアフリカ・サバンナエリアや、広々とした池を中心とした充実した設備の中で暮らすアジアゾウをはじめ、そもそもの設計理念が優れている動物園エリアと、とても高いドームの中で高く伸びた迫力の熱帯植物を擁する温室や、季節ごとに素晴らしい景観の中で咲き誇る花々の庭園など、植物園というものの素敵さが率直に伝わる植物園エリアからなります。

この博物館でポケモン化石博物館が開催されるということはのんほいパークのよさをさらに広めるチャンスだと身構えでいたのですが、なんと状況はそれにとどまらず、これまでの開催地で展示されていなかった大型カセキポケモン・アマルルガの骨格想像模型も展示されるというではありませんか。

重要なのは、このアマルルガの骨格がおそらく新造される作品だということです。

これまでの会場でも特に目を引いていたガチゴラスとトリデプスの骨格想像模型は実は以前のイベントで作られたものらしく、ポケモン化石博物館で新しく描かれた骨格想像図と同等のクオリティではなかったのです。そしてかはく会場で新しくお目見えしたアーケンとカブトプスの模型は、骨格想像図に準拠した細部まで説得力のあるものでした。

アマルルガの骨格が新しく作られるということならば、特大のカセキポケモンのハイディティールな骨格模型が見られると期待してしまいます。

アマルルガは竜脚類、長い首や尾と柱状の四肢を持つ植物食恐竜をモチーフにしたポケモンです。主要なモチーフは首に突起があり生前は棘だったとも鰭だったとも言われているアマルガサウルスです。どうやらこのアマルガサウルスの骨格も豊橋では展示されるようなのですが、豊橋にはそれだけではなく、元から竜脚類に関する展示がいくつかあり、アマルルガやアマルガサウルスと比較するにもぴったりなのです。

もちろんのんほいパークには他のカセキポケモンやポケモン化石博物館の展示と比較するのにぴったりの博物展示や、それらに限らずポケモンやその世界を連想させる動植物が揃っています。そこで今回は、かはく会場でのポケモン化石博物館の展示や新展示のアマルルガと比較して観察できるものに沿って、博物館を中心にのんほいパークをご紹介したいと思います。

ただこのご時世で私もここ数年あまり遠出ができず……、もし現況と異なる点があれば、ご容赦いただけると幸いです。

ポケモンより恐竜のほうが大きい?

パークに入園してすぐにあるのは植物園の温室ですが、今回は博物館から先にご案内しましょう。メインストリートであるメタセコイアの並木道を真っ直ぐ通って博物館に近付くと、まず目に飛び込んでくるのは超大型恐竜ブラキオサウルスの実物大模型です。白鳥のように首をもたげ尾を地面に下ろした復元スタイルはレトロですが、大きさは実感できるものです。

アマルルガのモチーフである竜脚類ですが、ここでアマルルガの「たかさ」を確認してみましょう。2.7メートル。ポケモンとしては破格の大きさですが、ブラキオサウルス像の子供のほうにも及びません。大怪獣のような姿のニドキングですら1.4メートルですし、ポケモンが親しみやすい大きさに収められていることがよくわかりますね。(小さい生き物がモチーフのポケモンも逆に大きく設定することで親しみやすくなっています。)

そういえばゲノセクトの分類は「こせいだいポケモン」

この博物館の特別展スペースは入り口近くにあるので、かはく会場と同じくポケモン化石博物館の後に常設展示を見ることになるでしょう。それを前提にして、順を追って見ていきましょう。

入り口からメインホールへの廊下では期間中には特に企画展がないので、化石で表した地球の歴史年表が見られると思います。そこを抜けてメインホールに出るといきなりトリケラトプスとティラノサウルスが対峙しています。角竜類をモチーフとしたトリデプスは角が横向きで守りに徹したポケモンですが、トリケラトプスは角が前に向いていて攻撃的なスタイルであることが分かるでしょう。さしものティラノサウルスも隙を突かなければトリケラトプスを捕食することは難しかったとも言われています。

このホールから順路に進んでも最初に現れるのは化石らしい化石ではなく、最古の化石よりさらに古い隕石や岩石、そしてごく初期の生物の活動の痕跡を示す岩石です。隕石もポケモンの世界にちょくちょく関わってきますね。

年代をよく見ればこのあたりで地球46億年の歴史の大半を占めてしまうことが分かるでしょう。地球の歴史とはそれほど長く、また私達多細胞生物の尺度を超えるものなのです。

多細胞生物が現れ始めるエリアに着くと、アノマロカリスの模型がジオラマと化石に添えられたもの2つも見られますが、ポケモン化石博物館で最新に近い復元のアノマロカリスの模型を見た後だと非常に意義深くなってきます。それは、これらの模型がある時期の意欲作であったということです。

これらのアノマロカリスをよく見ると、鰭の下になにやら足が生えています。これはパラペイトイアというアノマロカリスと比較的近縁だとされた生き物の化石に足が見られたことによります。その時期にならこれらは最新復元だったのです。

しかしその後、パラペイトイアはアノマロカリスの属するグループではなくもっと現在の節足動物に近いことが分かりました。これによりアノマロカリスとその仲間に足があるとは考えられなくなったのです。

これはかはく会場のアノマロカリスの模型です

さらにその後、頭部の甲羅や背中の鰓らしきふさふさなどの細かい特徴の証拠が集められ、そうしてできたのがかはく会場でも展示されたアノマロカリスの新しい復元模型です。これらを比較して古生物学の変遷を実感できることは豊橋会場のとてもよいところになると思います。

この博物館の古生代のあたりを細かく紹介している本当にきりがなくて、ちゃんと見ているとカセキポケモンのモチーフになっていない化石無脊椎動物がいくらでもあることが分かると思います。とりあえずこのユーリプテルスはご紹介しておきましょう。ウミサソリといってサソリに近いものの海を泳いで暮らしていた生き物なのですが、大きな頭や道具に変わった足はカブトプスやアーマルドのデザインに取り入れられているのではないかと思います。

冒頭にリンクしたかはく会場のレポで「はじめにジーランス(脊椎動物の上陸)」の部分は豊橋会場で詳しく触れられていると書いたのですが、この博物館の古生代の両生類に関する展示は非常に詳しく、かなりマニアックなニーズにも応えるほどです。写真は陸上生活に高度に適応した両生類のエリオプスです。

続く部屋ではディメトロドンが主役ですが、ポケモン化石博物館的にはメガヤンマのモチーフであるメガネウラが注目ポイントです。古生代の樹木の模型に隠されています。これもアノマロカリスと同じく少し古い復元なので頭の形などが今の復元と異なるのですが、大まかには実感が湧くでしょう。
この部屋では古生代の植物も詳しく扱っていて、当時の陸上の風景を想像させます。ゲノセクトの分類名「こせいだいポケモン」にも見られるように、ポケモンの世界の太古も現実の太古と似ていたのではないでしょうか。

アマルルガ・アマルガ・ブラキオ・ユアンモウ

中生代の部屋の最初にあるのはエオラプトルというごく初期の恐竜なのですが、そこを過ぎて部屋のメインに入るとまず大きな竜脚類、ユアンモウサウルスが視界に飛び込んできます。これは中国のジュラ紀中期の竜脚類で、後の年代のマメンチサウルスに近縁なものです。

「古生物飼育小説Lv100第十集」より

竜脚類とは首が長く柱のような四肢を持つ植物食恐竜と言いましたが、実はこのくくりはそれなりに広範なものです。
ここで竜脚類の系統を確認してみましょう。この系統樹は「古生物飼育小説Lv100第十集」のために作成したものです。ちょうどユアンモウサウルスに近縁なマメンチサウルスと、アマルルガの主なモチーフであるアマルガサウルス、先程登場してもう一度登場するブラキオサウルスの名前があります。
系統樹上で近縁かどうかは枝分かれでのみ表され距離とは無関係です。マメンチサウルス(とその仲間)、アマルガサウルス、ブラキオサウルスは別々のグループに属し、マメンチサウルスは初期に現れたものであることが分かります。

横からの見た目でユアンモウサウルスとアマルガサウルスを比較してみましょう。これはアマルルガの姿とも関わってくるものです。

ユアンモウサウルスが属するマメンチサウルス科の恐竜の大きな特徴は、首が全長の半分近くを占めることです。
さらに、その首を構成する頸椎の一つひとつがやや長く、その下には頸肋骨、つまりヒトにはない首の肋骨が発達しています。生きていたときこの頸肋骨には弾力があり、首を支える助けになっていたようです。

これは名古屋市科学館の2016年の特別展「恐竜・化石研究所」で展示されたアマルガサウルスの骨格です。ポケモン化石博物館の豊橋会場でもほぼ同様の骨格が見られるようです。

アマルルガの首の鰭の元になった突起が見えると思います。アマルルガの首の鰭には骨がないと推定されていますが、アマルガサウルスではこの突起の間に軟組織の膜が張って帆になっていたとも推定されているのです。
胴体にも同様の突起があるのが見えますね。この突起はヒトの背筋のでっぱりと同じ棘突起です。アマルガサウルスが属するディプロドクス上科、特にディクラエオサウルス科ではこの棘突起がよく発達していて、アマルガサウルスの突起もその延長上にあるものなのです。腱を吊り橋のケーブルのように棘突起の間に張り巡らせることで首や尾を支えていたと言われています。

そしてマメンチサウルス科とは逆に、頸椎の一つひとつはそこまで長くなく、頸肋骨はあまり発達していません。マメンチサウルス科と比べると首を柔軟に動かすことができたのかもしれません。

アマルルガの鰭だけでなく、全長の半分にまでは達していない長さの首や、その首をもっぱら上向きにしていることも、どちらかというとユアンモウサウルスのようなマメンチサウルス科よりはアマルガサウルスのようなディプロドクス上科に近い特徴ということになるのではないでしょうか。

しかし、ユアンモウサウルスにも細部でアマルルガとよく似た特徴があります。それは前足の爪です。

これはユアンモウサウルスの左前足の裏です。豊橋ではユアンモウサウルスの骨格の下をくぐることができ、こうして細かいところが見られるのです。
親指だけ先端が大きく発達しているのが分かります。これは爪の芯になる骨です。多くの竜脚類はこのように親指にだけ大きな爪を持っていて、足を単純にして体重を支えやすくしつつこの爪を滑り止めなどに使っていたようです。
アマルルガもよく見るとこのような爪を持っています。巨体を支えて歩くという力学的要件が同じなため、同じ特徴を持つに至ったのかもしれませんね。

中生代のメインの部屋から隣の「恐竜劇場」という部屋に行くとブラキオサウルスの前脚の骨格模型も見られます。このブラキオサウルスも同様の爪を持っているのが確認できるでしょう。
この骨格模型はかつてウルトラサウロスと呼ばれていた特大のブラキオサウルスが元になっていて、外の模型の大きさが大げさでないことも分かると思います。

さて、中生代の部屋には主要な恐竜や大型爬虫類がだいたい揃っています。かはく会場では見られなかったものを中心にポケモン化石博物館的に重要なものをいくつか見ていきましょう。

アロサウルスの骨格の上にプテラノドンがぶら下がっています。かはく会場でもパネルに描かれていましたが、頭や翼が細長いこと、歯がないこと、後ろ脚がほっそりしていること、尾が短いことがプテラとは大きく異なることが分かると思います。

かはく会場のパネルでは歯のある翼竜としてディモルフォドンとプテロダクティルスが挙げられていましたが、歯のある翼竜は他にも色々な種類がいます。上の小さい種類はランフォリンクス、下の大きい種類はアンハングエラです。どちらもかはくで見ることはできましたが、アンハングエラは組み立て骨格ではないとはいえこちらのほうが近くで観察できると思います。

タテトプスに似た角竜として紹介されたプロトケラトプスは、豊橋では全身骨格を見ることができます。大きさが実感しやすいでしょう。また直接関係があるタテトプスとトリデプスの場合と違って、プロトケラトプスとトリケラトプスは同じ角竜ではあっても直接祖先と子孫だったりはしないので、よく見ればそれぞれ違った特徴があるのが分かるかもしれません。

中生代の部屋の壁際にはアンモナイトやシーラカンスを含めて中生代の様々な小さな化石が展示されていて、どんな世界だったかをよく表しています。先程のメガネウラがいた部屋のように、植物についても詳しく展示しています。アマルルガやトリデプスがどんなものを食べていたか想像する手がかりになるでしょう。まあポケモン世界の植物には謎が多いのですが。(これもかはくにもちゃんとあるのですが、豊橋では恐竜達のすぐ横にあるというのがポイントです。)

この博物館の中庭にも中生代の特徴をとどめた植物が色々と植わっているので、展示室を周り終えたら見てみましょう。

こおりのきば

恐竜絶滅後、新生代の展示室は一番最近リニューアルされた展示室で、明るく見やすい造りになっています。カセキポケモンの中にはあまり新生代のものがいないのですが、のんほいパークは動物園でもあることですし、動物園部分とのつながりもあるのでしっかり見ておくのがお勧めです。

かはく会場のレポのときもマンムーとの比較でコロンビアマンモスを紹介しましたが、豊橋もゾウ化石が充実していて、国内のゾウに強いのに加えてゾウの歴史全体を辿れます。

モエリテリウムの頭骨とアネクテンスゾウの顎です。(これらはかはくにも展示されていますが、かはくでは互いの位置は離れています。)
元々他の動物とさして変わらない体格だったのが大型化するものが現れ、それに伴って鼻と顎が伸び、体格に見合った多くの餌が集めやすくなりました。
さらに大型化してから、むしろ顎や頭が短縮して鼻だけが伸びたものが現れ、これが現生のゾウにつながりました。

日本国内で発掘されるアケボノゾウとナウマンゾウです。アケボノゾウは今のゾウと変わらなく見えますが奥歯の形などが異なっていて、ステゴドン科というグループに属しています。
ナウマンゾウはメスなこともありますが現在のゾウと比べて小柄です。すでに日本列島ができている頃のものなので狭い島に適応したのでしょう。

代表的なマンモスであるケナガマンモスです。現在のアジアゾウと同等の体格……ですがかなり背が高く見えますよね。島の中の森林に生息していた先の2種と違って大陸の草原に生息していた分、脚が長いように見えます。

この他にも壁際に他の植物食の哺乳類の化石、特にウマが詳しく展示されています。

かはく会場のレポでも触れた「おわりにホエルオー(哺乳類の海生適応)」の要素が豊橋にも少しあります。これはミンククジラとドルドンの骨格です。すでに遊泳生活にかなり適応していたドルドンとさらに特殊化したミンククジラが比較できます。

いよいよカセキポケモンと関係なくなってくるのですが、関東在住だけれどもかはく会場で予約が取れなかったから豊橋で……というかたに是非ご覧いただきたいのがマチカネワニです。これはなんと大阪大学の工事中に約45万年前の地層から発見された、つまり45万年前の日本に生息していた巨大なワニなのです。

さて、これで館内の現在の自然に関する展示についてまで話し始めるともう何のポケモンにでもからめられて危険なので……あっキョダイキングラーだ。じゃのうて。一応1階と2階でカセキポケモン、というかアバゴーラに関係あるものだけ紹介します。

1階の海の生き物のコーナーにはアカウミガメの骨格があります。ウミガメなだけあってプロトーガやアバゴーラと同じく軽量化されて泳ぎやすい骨格をしていますが、カセキ2種はアーケロンがモチーフなだけあって軽量化がさらに進んでいます。

これが2階のイシガメとなるとこう。穴のないドームと化しています。ゼニガメ系列、ナエトル系列、カムカメ系列はおそらくこのような骨格なのでしょう。

夢と冒険の野外へ

さて、すでに博物館の中だけでも何でもポケモンとからめられすぎてとりとめもないので、館外も素晴らしいということだけ記してこの記事を終えたいと思います。

ポケモン化石博物館のチケットは豊橋会場でも入場時間指定になると思われますが、(確認しましたところ豊橋会場では事前予約や入場時間の指定はないようです)のんほいパーク全体にも入園できることになるはずです。時間ぴったりにのんほいパークに来てポケモン化石博物館だけを見学して帰るのでは実にもったいないのです。

といってもパーク全体もそれなりに広いので、ぜひお時間に余裕を持って予定を立ててみてください。

博物館を出れば、そこは動物や植物の世界を全力で表現しようとしている日本有数の動植物園です。

水辺の大地に、

広大なサバンナに、

ジャングルや熱帯雨林に、

夜の砂漠に、

冷たい海の中に、

静かな水面に、

身近な牧場に、

いつでも本気で生きている生命があふれているのが見られるでしょう。ぜひ素敵な出会いをゲットしてください。

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