小説『ノルウェイの森』を読んで①

みなさんは、深い井戸の話を知っていますか?

それは草原が終って雑木林が始まるちょうど境い目あたりにあります。
どこにあるかは誰にもわかりません。
普段は草で隠れていて、周りには柵も石囲いもありません。
ただ直径1メートルばかりの暗い穴が、大地にぽっかりと口を開けているだけなのです。

その井戸はとっても深くて、この世のありとあらゆる種類の暗黒を煮詰めたような濃密な暗さだということだけが、知られています。
二、三年に一度、その井戸に落ちてしまう人がいます。
落ちてしまうと、出てくることは出来ず、誰にも気づかれないまま1人で死んでいくのです。

この話を教えてくれた直子は言います。
「それは本当にーー本当に深いのよ」と。丁寧に、言葉を選びながら。
「本当に深いの。でもそれが何処にあるかは誰にもわからないの。このへんの何処かにあることは確かなんだけれど。」

その話を聞いた僕が、
「あまり良い死に方じゃなさそうだね」と言うと、直子は「ひどい死に方よ」と答えます。

「そのまま首の骨でも折ってあっさり死んじゃえばいいけれど、何かの加減で足をくじくくらいですんじゃったらどうしようもないわね。声を限りに叫んでみても誰にも聞こえないし、誰かがみつけてくれる見込みもないし、まわりにはムカデやらクモやらがうようよいるし、そこで死んでいった人たちの白骨があたり一面にちらばっているし、暗くてじめじめしていて。そして上の方には光の円がまるで冬の月みたいに小さく小さく浮かんでいるの。そんなところで一人ぼっちでじわじわと死んでいくの」


私は正直、うつ病になる前は何の話をしているのか全く分かりませんでした。

でも2年前、診断を下された後は、
「これ、私の病気の話をしてるんだ」
と思いました。
ピンときたんです。
それで、
「わたし、落ちちゃったんだー。1人で死んでいくしかないのかー。」
って思いました。
なんだかあっさり理解できました。
そしてちょっと安心しました。

今、暗い井戸の中で、1人でいるあなたへ。
かつての私へ。

つらいね。
暗くて、怖いね。
冷たくて、痛くて、こんなに苦しいなら、死んだほうがマシだと思いますよね。
今自分がどこにいるのかも分からず、孤独で不安ですよね。

いっぱい泣いてわめいて、泣くことさえも疲れて、スイッチが切れたように眠って、そしてまた起きたとき。
気が向いたら、直子の言葉に耳を傾けてみてください。
直子は、まずあなたが今どこにいるのかを教えてくれます。
自分が今いる場所を知って、
「そうなんだ。」
と思うかもしれませんし、
その事実にまた絶望するかもしれません。

でも、大丈夫です。
直子はあなたに手紙を書いてくれます。
その手紙に、これからどうすればよいかを指し示してくれています。

それから、直子はあなたを応援しています。
私も、あなたを応援しています。
気が向いた時に気になったところだけでも読んでみてください。
ちょっと楽になったら私は嬉しいな。



直子の手紙は、次の記事に詳しく載せる予定です。もし読んでみたいと思ったら、ぜひ覗いてみてくださいね^ ^ 

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