小説『ノルウェイの森』を読んで②

私は自分の癖が嫌だなーと思うことがあります。

たとえば、私は完璧主義なところがあって、気がつかないうちに無理をしてしまう癖があります。
それから、自分と他人の境界線があいまいになるときがあって、そのせいでひどく傷ついたり考えすぎたり、自分の感情を無理に内にとどめてしまったりしてしまいます。
そういう癖があって、病気もあって、苦しくて、でももうどこから手をつけていいのか分からなくなって混乱したとき、私は直子の手紙を読んで気分を落ち着かせます。


それは、大学を1年休学し、療養施設に入った直子が「僕」に宛てて書いた手紙です。直子はまず、その施設のことについて紹介します。

直子が言うには、その施設はとても広くて、七十人くらいの患者と、二十人くらいのスタッフがいるそうです。そこでは、規則正しい生活をして、運動をしたり、野菜づくりをしたり、星を見たり、本や音楽を楽しんだりして、みんな穏やかに暮らしています。

そこで直子はテニスとバスケットボールをやっていて、バスケットボールのチームは、患者とスタッフが入りまじって構成されています。
ゲームに熱中するうちに直子は、誰が患者で誰がスタッフなのかわからなくなってきます。
ゲームをしながらまわりを見ていると、誰も彼も同じくらい歪んでいるように見えてしまう、というのです。

直子は手紙にこう書いています。

「ある日私の担当医にそのことを言うと、君の感じていることはある意味では正しいのだと言われました。彼は私たちがここにいるのはその歪みを矯正するためではなく、その歪みに馴れるためなのだといいます。
私たちの問題点のひとつはその歪みを認めて受けいれることができないというところにあるのだ、と。人間一人ひとりが歩き方にくせがあるように、感じ方や考え方や物の見方にもくせはあるし、それはなおそうと思っても急になおるものではないし、無理になおそうとすると他のところがおかしくなってしまうことになるんだそうです。
もちろんこれはすごく単純化した説明だし、そういうのは私たちの抱えている問題のあるひとつの部分にすぎないわけですが、それでも彼の言わんとすることは私にもなんとなくわかります。
私たちはたしかに自分の歪みにうまく順応しきれないでいるのかもしれません。だからその歪みがひきおこす現実的な痛みや苦しみをうまく自分の中に位置づけることができなくて、そしてそういうものから遠ざかるためにここに入っているわけです。」


これを読むと、私は少し気持ちが整理されます。

私はたぶん、歪みに馴れていなくて、受け入れることができていないから、その歪みが引き起こす現実的な苦しみを真っ向から被ってしまっているんだなと。この手紙を読んでから、歪みは誰にでもあるものだから、自分にはこういう歪みがあって、その歪みが原因でこういう苦しい気持ちになっていたんだなぁ、と苦しみを一歩引いて俯瞰的に見ることができて(直子のいう「苦しみを自分の中に位置づける」ということができて)、自分の人格全てを否定することが少なくなりました。

今は、その癖であり歪みに馴れる努力をしています。簡単に言うと、癖を受け入れてそれと上手く付き合う努力です。

以前と比べると、だいぶ癖に馴れて、それとうまく付き合うための工夫も増えてきたとは思います。でも心の変化は本当に少しずつです。
それに、その癖が、うつ病というこれまた厄介な「現実的な苦しみ」を引き起こしていて、闘病しながら、癖に馴れていくのはとっても大変です。

日々積み重ねた努力も、うつの波がきたり、誰かから悪意を向けられたりすると、一瞬で積み木のように崩れ落ちてしまうからです。もう本当に面倒くさいです。まじでめんどくさい。

でもそれも、仕方ないなーと思えてきて、だんだんと対処法もわかってきました。私は、上記のように積み木が崩れ落ちる現象を嵐と呼んでいて、嵐が来たら、まず避難して、鎮まるのを待ちます。嵐が去ったら、無造作に散らばった積み木を拾い集めるように、日常の破片を1つずつ取り戻していきます。
そうやって少しずつ日常に戻ると、また少しずつ積み木を上に重ねていきます。

これの繰り返しです。
はじめはしんどくて、嵐が来るたびに全壊で、修復作業にも時間がかかりました。
嵐がくる頻度も高かったです。
来るのが相葉くんとかだったらいいのに...😇

でも最近は、嵐がきても、崩れる部分が少ないし、修復作業の仕方もなんとなく分かってきたのかなぁと思います。
嵐も減ってきて、だんだんと住みやすくなってきたと思います。

こう思えるようになったのも、歪みを直すのではなく、歪みに馴れるんだという直子の考え方が腑に落ちたからだと思います。
直子の言葉だから信頼できるし、直子の希望が感じ取れて、私も希望を持とうと励まされました。

次回の記事では、直子のさらに力強い励ましの言葉を見ていこうと思います。

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