見出し画像

【歴史随想】大正男子が帽子を脱ぐと

九條です。

日中の陽射しが強くなって参りましたね。日焼けや熱中症の予防には帽子や日傘が役立つ今日この頃。女性の日傘は街でよく見掛けますが、男性は帽子か無帽が多いですね。

そんな帽子にまつわるチョットだけ歴史的なお話しを…。


【はじめに】
私は近年まで、夏にはカンカン帽を被っていました。でもキチンとした製品はそれなりのお値段がします(私が毎年買っていたのは、リアル店舗で1つ3,800円+税のカンカン帽でした。この値段でもかなり安いほうです)。

しかしカンカン帽は洗濯できませんし、また基本的にワンシーズン使い捨てなので、最近では布製で洗濯できて何回(何シーズン)でも使える、パッカブルハットを夏場に愛用しています。


【モボ・モガたちが闊歩した時代】
大正時代の終わり頃から昭和のはじめ(昭和10年代前半)の頃は、モダンボーイ(モボ)/モダンガール(モガ)たちが街を闊歩していました。

モボやモガたちにとって、東京の銀座や大阪の心斎橋しんさいばしの街をオシャレな洋服を着てブラブラとウィンドウショッピングをして歩くことが当時の流行の最先端で、それぞれ「ぎんブラ」「しんブラ」と言われていました。


【当時の時代背景 〜大阪市の栄光〜】
大正時代の終わり頃から昭和のはじめの頃の大阪市は、首都東京よりも人口が多く経済規模も東京を遥かに凌いでいて日本一(東洋一)の大都市、当時の世界から見ても6番目の規模を誇る大都市へと成長していました。

それまで(明治〜大正時代前半)の大阪市は「東洋のマンチェスター」と呼ばれ、ひたすら工業生産に邁進していたのですが、いっぽうで公害(おもに煤煙)や労働者の住環境の悪さ、そして失業率の高さなど大きな問題を抱えていました。

しかし大正時代の後半になると、いまでも多くの大阪市民から「大阪の父」「大阪の大恩人」として愛され尊敬され続けている第7代大阪市長の「関一せきはじめ」さんの時に、そうした山積していた都市問題を解決へと導き、街を大改造してその中心部はパリのセーヌ河畔をモデルに美しく整備しました。この頃になると、大阪市では工業のみならずあらゆる分野の産業が発展し、様々な文化が花開いて栄光と繁栄の時代を迎えていました。

当時の大阪市民はこの大阪市の飛躍的な発展と美しく整備された街を誇りに思い「大大阪だいおおさか」「モダン大阪」「モダン都市大大阪だいおおさか」などと呼びました。この時代がいわゆる「大大阪時代だいおおさかじだい」です。

しかしこの栄光の「大大阪時代だいおおさかじだい」は束の間でした。その後の太平洋戦争の開戦そして戦争末期の大阪大空襲によって、街も、経済も、そして大阪の人たちの心の中(誇り)も、何もかもが滅茶苦茶に破壊し尽くされました。


【大正男子の髪型】
さて、大正時代の終わり頃から昭和の初めの頃、すなわちモボ・モガの時代の男性の普段の髪型については、意外と知られていないのではないかと思います。どのような髪型だったのでしょうか。明治以来の「散切ザンギリ」だったのでしょうか?

当時の普段の男性の髪型が写っている写真資料や映像資料は意外と少ないのです。

なぜでしょうか?

当時はまだ写真撮影や映像撮影は一般化していなくて、とくに写真を撮るのは写真館へ出掛けて撮影をする「ハレ」の日の行事でした。ですからそのような日には男性は正装して帽子を被るか、油で髪型をビシッと決めていました。

そして当時は、男性は外出時に帽子を被る事が常識(マナー)となっていました。カンカン帽や中折れ帽が全国的に大流行していました。ですから帽子を被っていない「普段」の男性の髪型が写っているような写真や映像資料は意外と少ないのです。

では、当時の普段の日すなわち「ケ」の日の男性の髪型はどのようなものだったのでしょうか?

じつは多くの男性は髪型に無頓着で、あまり髪型を気にしていなかったと言われています。ボサボサだったりしたようです。なぜなら男性は帽子を被って外出しますし、外出先で帽子を脱いだとしても、脱いだら脱いだままの状態だったようです。


【おわりに 〜時代の一側面〜】
これはモボ・モガたちが銀座や心斎橋などを闊歩していた、モダンでおしゃれなイメージがある大正時代から昭和のはじめの頃のあまり知られていない時代の一側面なのかも知れませんね。

※見出し画像はカンカン帽(画像:フリー素材 photo AC さんの写真に文字を追加)。


【附録 〜珍しく宣伝〜】
もしよろしければ、以下の私の過去記事もご覧になってくださると嬉しく思います。私の実話シリーズのひとつです。尊敬し大好きであった祖母への短いレクイエムです(無料です)。^_^


©2023 九條正博(Masahiro Kujoh)
剽窃・無断引用・無断転載等を禁じます。

この記事が参加している募集

日本史がすき