木の家にすまう 13
今回の「木の家にすまう」は2年前に京都に建築の師匠のお墓参りに行かせて頂いた際に立ち寄った社寺などの写真を使用させて頂いています。
◆木は噛み合わせて粘りを発揮する
この時は折角、京都まで行ったのだから、色んな社寺を見学せずに帰るのは勿体ない、ということで清水寺は勿論のこと、三十三間堂など、建築的に魅力のある建物を見学して来ました。
当然ですが、海外からの観光客とは違って建物を見ることが目的ですので、見ている所は屋根組や柱の胴周り、木組みなどです。
社寺建築の特徴として大きく張り出した屋根やその反り具合ですが、1本の木であれだけ大きく張り出そうとすると、構造的には無理があり完成当初は形を成していますが、長い年月の間にやがて形は崩れます。
それを出来るだけ維持させるには木と木を噛み合わせると御互いの粘りを発揮し強度を増します。木造建築の基本はこれ、なんです。
単に木の上に木を置くだけでなく少し細工して木と木が噛み合うような加工を施すと丈夫になります。上写真のような社寺建築の屋根組の場合も単に載っているだけに見えるような個所にも見た目には分からないように噛み合う加工が施されています。
◆貫の役割
上写真のように柱と柱を人の腰の高さ辺りで水平に繋いでいる材料を「貫(ぬき)」と呼びます。
これは単に領域を示すために設けられているものではなく、構造的な意味があります。
1本の柱が倒れた場合、貫が無ければ1本の柱が倒れたことが原因となり、屋根組全体が倒壊します。
所が、この貫が存在することで、柱と貫が噛みあって、ある傾斜角以上に柱が傾くことはありません。同様に柱の上部を繋ぐ梁も貫と平行方向と直交方向の両方向について設けられています。
◆斗栱(ときょう)や桝(ます)
社寺建築において軒先に伸びている材料を受けるための「斗栱(ときょう)」「桝(ます)」と呼ばれるような材料もしかり、一つずつが噛みあう様に組み合わせられて始めて、木の特徴である粘りを発揮するのです。
恐らく、その装飾に魅せられることがあっても構造的意味合いに目を向ける方は、建築を専門的に学んでいない方には少ないことと思います。
◆木の弱点は接合部
しかし、そうは言っても木の弱点は接合部と呼ばれる部分です。
接合部とは、ずばり木と木が噛みあうような部分です。いくら丈夫な組み方を考えたとしても同じ長さの1本の材料と強度比較をすれば劣ることには違いありません。
そのような理屈を理解し木の家のことを考えていくと、大きな力が掛かる部分に華奢(きゃしゃ)で、か細い材料を使う訳にはいきませんね。
◆木の家が木の家たる所以
木の家と木の存在を全く感じない白を基調としたスタイリッシュな(シンプルモダンな)家と比べると木の家が、どうしてもボテッとした感じを受けるのは、そこに違いがあるように思います。
しかし、そう言った家とて骨組みをボードなどで隠しているだけで、1枚剥せば同じ木で構造を形成しています。そしてそのような家は出来る限り物が薄く見えることを意識するために本来必要である木の太さを有していないこともあります。
ですので、そのような建物で気を付けた方が良いのは構造が見えなくなる前の段階です。無理に細い材料が使われていないか?図面の段階でも確認することが出来ます。心配ならプレカット図面の提出を求め、確認されることをお勧めしますが図面の見方が分からない場合は第三者に確認して頂くと良いでしょう。(第三者が簡単に確認してくれるかどうかは分かりませんが・・・)
◆人の能力次第
プレカットって機械だから間違う事は無いんじゃない?と思われるかも知れないのですが機械に入力するのは人間なんです。ですのでその人間に正しい知識が無ければ、間違うことはあります。結局は人の能力次第なんですよね。
◆流行りで終わらせない
私が独立し、木の家のことを考え続け丸19年が経過しようとしています。私が事務所を開設する少し前くらいから徐々に自然素材が住まいづくりの現場にも採用されるようになり始めたと記憶しています。最近では極、当然のように無垢材が使われています。
以前は無垢材は、反るから、割れるから、直ぐに傷がつくからと造り手の立場で敬遠されていた材料です。
反るから、割れるから、直ぐに傷がつくからと言ったネガティブ要因が解消された訳でもありません。それでも住まい手の皆さんが、それらの要因を受け入れて望むようになると、造り手は変わらざるを得なくなるのです。
しかし折角、普及し始めた、この流れがここで止まってしまうと、単なる流行で終わりになります。山の木が使われなくなると又山が荒れ、毎年起こる大きな災害も場所を変えて皆様の近所でも起るともしれません。
今日紹介させて頂きました社寺建築と住宅を同じ土俵で比較することは出来ませんが、是非正しい知識を持って住まい手の皆様にも、こう言った素材にも向き合って頂きたいと思います。
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