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木の家に住まう 12(表と裏)

◆木表(きおもて)と木裏(きうら)
物事には全て表と裏があると言われますが、同様に木にも表と裏があります。厳密には板には表と裏があるなんですが・・・
丸太の状態から板材に製材する場合、木の芯に近い面と樹皮に近い面が出来る製材方法を採用されることが多いのですが
この場合、樹皮に近い面を木表と呼び、芯に近い面を木裏と呼びます。

鴨居や床材などとして木を用いる場合、一般的には目に触れたり、肌に触れる面に木表を向けることが多くなります。
因みに「鴨居(かもい)」とは引き戸等の枠の上の部材とお考え下さい。

理由は、木表の方が木目が綺麗であったり鉋掛けなどをしても素直で滑らかに仕上がると言うことが主になります。逆に杉材などの場合、木裏は樹皮が剥離するなどの理由があるため、靴下などに剥離した樹皮が引っ掛かると困るので一般的には木表面を肌に触れるように使います。

◆木裏に凸に反る
又、木表木裏のある材料では木裏に凸に反り易くなります。
これは木表の収縮率が木裏に比べて大きいために起こる現象です。
今日の写真は、その現象を説明するために、反った板材の両端に差し矩を宛がったものです。写真では板の下側が木裏ということになります。

元々は真っ直ぐで隙間もありませんでしたが、板材の中央あたりが窪んで、隙間が空き光が漏れているのがお分かり頂けることと思います。全ての材料がこのようになるか、と言うと、そうでもない所が木の個性なんですよね。
真っすぐなまま反らない木もあるんです。

この板は70㎝程度の長さがありますが現場では1.0mに満たない材料は使い道がない事も多く、結局は燃やされる運命にあります。

◆鴨居の場合
さて、ここで皆さんに質問です。
この木裏に凸に反る性質を利用して、建具の枠である鴨居の材料として木を使う場合
溝が加工された面は、木表でしょうか?それとも木裏になるでしょうか?
その理由もお考えください。
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如何でしょうか、お分かりになったでしょうか?

◆答えは
鴨居の溝が加工された面は木表になります。
木裏に凸に反る性質があると書きましたが、仮に逆の加工をした場合、鴨居の下にある建具との余裕が無くなり、建具の開け閉めがし難くなります。
そのために木表面に溝加工を施しておけば、建具との余裕がなくなることが無いために、建具の開閉に支障を来すことはありません。

◆目が肥えると
板材の木表、木裏は木口側から木目を見ると、どちらが表でどちらが裏かは一発で判断がつきます。
しかしベテランの大工さんになると、そんなことをしなくても板を上からみただけで、どちらが表か裏かの判断が出来るそうです。

かく言う私も、それくらい出来ます、と言いたい所ですが先日、職人さんのトラックの荷台に積んであった桧の板材を見た時に、これは木裏だと思ったのですが、そうではありませんでした。見分けが付き難い木目でしたが、まだまだ修行が足りなかったようです。

◆木は動く
このように木は動くのが普通と考えておくべきです。
動きが大きいと「暴れる」と表現することもありますが、工業製品との大きな違いは、ここにあります。

これを良いと取るか悪いと取るかは、個人の判断ですが、少なくとも木の家をお考えの方は少しの木の動きは、許容して頂かないと、木の家には住めないと思います。

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