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たかが父と娘。されど父と娘。

母が亡くなってから父とのコミュニケーションがよくわからなくなりました。

地元から出て人生の半分をこっちで過ごしてるのに、実家に帰ると父はいまだに私に地元の有名なお店や観光地を聞いてきます。

「あそこの店の評判はどうなんだ?」
「あのあたりでこういう場所知らないか?」


父のなんてことない質問が、いつしか私を苛立たせるようになりました。
私が知るわけないでしょうが。
もう何年こっちにいないと思ってるの。

反論をすると、父はいつも
「お前はいつまで経ってもなんでそう気が強いんだ」
と不満を言う。
父はそんなつもりないかも知れませんが、
私も時代も変わっているのに、昔と何も変わらないかのような父に苛立っているんだと思います。

子供の頃から父とは喧嘩が絶えませんでした。
家族旅行に行っても必ず私と父が口論になってしまう。
父の中でも私は面倒な娘だったかもしれません。
そんな私と父を母が間に入って緩和してくれていたのだと思います。


でもその母も数年前に亡くなり、私と父の緩衝材になる人はいません。
お互い自分なりに我慢するしかなくなりました。


母が亡くなった直後は、洗濯も台所事情もなにもわからない父と祖父母を心配して毎週実家に帰っていましたが、七回忌も終わる頃には父の家事レベルも上がったので、実家に帰る頻度も減っていきました。
しかし、たまに帰る度に口論になり、ストレスでせっかくの土日が嫌な気持ちに。
そんなことばかりで、いつしか実家に帰るのが億劫になってしまいました。


前回帰省した際に、父が夫に言いました。

カヨコは気が強くて、
話してると「この野郎!」って思うんだけど
俺を一番気にかけてるのもカヨコなんだ。


私はなんとも言えない気持ちになりました。泣きたくなったというのが正しいかも?

人の気も知らないで…!

何故かそう思いました。

私が父に会うのをちょっとネガティブに感じているように、父も私に対して同じように感じているのかもしれません。

私は妹と弟がいますが、2人とも家族があり子どももいます。
それもあって、なかなか実家に帰ることができません。
妹と弟が帰省できないのに、子どもがいない私が帰らないわけにはいかない、と思ってしまう長女気質。
実家には、今は父と90歳を超えた祖母だけ。
実家に帰るのは、義務やタスクのようなもの。
義務感と逃げたい気持ちがゴチャゴチャになっているんだと思います。

妹や弟は私の不満を聞いてくれますが、二人は私が父に対して感じているような苛立ちを、そこまで感じていないようなので、やっぱり私だけが気にしすぎなんです。
先入観で父を見てしまい、心が狭くなっているのです。

夫からは「そんなに帰りたくないなら帰らなくても良いんじゃない?」と言われますが、
私からすると「帰らないという選択肢はない」のです。
自分で自分の首を絞めている感じですかね。


私が父の言動にイラつくのは、父に自分を重ねて見ているからだ、と言われたことがあります。
お父さんを認めてあげてください。と、その方は言いました。そうすることで、私の人生も、父の人生も良い方向に向かうと。
私の心配が、父を動けなくしていると。

確かに、母が亡くなってから数年、私は父をコントロールしようとしていました。


いま父をちゃんと認められているとは言いませんが、前よりはできていると思います。
意識はしているので、父と話す前はシミュレーションをして、イライラしないように心がけてます。

ここ最近は父からも、私との向き合い方を意識しているのを感じます。
いい傾向かもしれません。


都会にいると、良くも悪くも人の事に興味がなくなります。
誰も気にしてないからという理由で人からどう見られるか、体裁も気にしなくなりました。

そう言うとネガティブに聞こえるかもしれませんが、必ずしもそうではなくて、周りを気にして謙遜する必要もないから、褒め言葉には素直に「ありがとう」と言えるようになりました。
それに対して『やだ。お世辞なのに、ありがとうですって』という人もいません(いるとは思いますが、そういう人と関わる、関わらないも都会だと自由だと感じます)。


そういう都会的な部分に慣れた私は、父の言動に保守的な地元の部分を感じて戸惑う。あー、こういうところが嫌で実家を出たんだった、と思い出します。

そして、地元から出てよかった。と思うのです。


都会に出てきたおかげで手に入れた幸せはいくつもありますが、大きかったのは、新しい価値観と、自己肯定感。

実家で暮らしているときは謙遜が美徳でしたので、客人の前であえて咎められることもしばしばありました。
本心では誇らしいし、頑張ったと思ってるのに、人前ではそれを出さない。

「たまたまですよ」
「挨拶のひとつにまともにできないんだから」
「行儀が悪い孫で」

私はそれが苦痛でした。なにをやっても素直に褒められることがないのですから。
なので、褒められても「いえいえ、そんな、私なんか全然…」と思う人間に育っていました。
自分の価値観とは、親、祖父母の価値観から形成されるそうです。本当にそうですね!

褒められたら素直に「ありがとう」と受け取って良いのだと、実家を出てから学びました。

…これって都会がどうとかじゃなく、うちの問題?笑。

今思うと、母も田舎の価値観で育った人です。それが悪いわけではありません。きっと母には合っていたと思います。
でも、もっと違う世界も見せてあげたかったな。

今のところは、地元に戻りたいとは思いませんが、やはり実家のことは気になります。
毎日一緒にいると息が詰まる父ですが、もう高齢なので健康が心配です。ずっと元気でいて欲しいと思っています。

なかなか戻ることができない時期ですが、きっとまた帰るでしょう。億劫だな、と感じながら。
距離感を把握しないと、自ら大怪我しに行くことになるので、そこは気をつけます。笑。

・家族と言えどコントロールしようとしない。
・父は父として認める。
・いちいち反論しない。
・自分の新しい価値観を押し付けない。

この先どれだけ一緒にいられるかわかりませんので、後悔だけはしないように接していきたいと思います。

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