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『爽年』 石田衣良

結婚とか、仕事を決めるとか、家を買うといった、人生にとってほんとに重要なことは、あれこれ考えずに自分の感覚で決めようって。固くて不自由な頭なんかよりも、感覚のほうがずっと賢いとぼくは信じてるんだ。 (p.161)

「崖の上のポニョ」を初めて観たとき、序盤で泣いた。
ポニョは、「宗介のそばに行きたい」という気持ちだけで人間になる。
宗介に拒否されるかもしれない、嫌われるかもしれない。
そんな不安は一切感じない。
ポニョの一途な気持ちが、私の胸を打った。
この決断ができないと、結婚なんてできないんだろうな。
約10年前、テレビの前でそう思ったことを鮮明に覚えている。

結婚後どんな世界が待っているかなんて、誰にもわからない。
海から陸に上がるぐらい、実は覚悟がいるものなのではないか――。

なんて身構えている時点で、私は感覚よりも固くて不自由な頭が勝っているのであろう。

5年ほど前、同じく独身の友達と夜な夜な飲みながら語ったことがある。
どちらが先に結婚するか?
ふたりの意見が一致した。

「デキちゃった順」
もはや、デキ婚しかありえないらしい。

おとなしく、明日も仕事に励もうと思う。

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『爽年』 石田衣良 集英社 2018

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