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『ベッドサイド』 林あまり

ほんのすこしマッサージしてもらったらそこに涙が溜まっていたので (p.89)

ベッドにうつ伏せになると、マッサージをしてくれた彼を思いだす。
右を向くと私の前髪に触れる彼を思いだし、左を向くと後ろから腕をさすってくれた彼を思いだす。
仰向けになると、彼の香りがする気がする。

こんなつもりじゃなかったんだけどな…。

これまで生きてきて、そう思うことが多かった。
恋も、仕事も、人間関係も、全部、ぜんぶ。

そのひとと眠ったベッドに横たわりむすんでひらいてしてみる手のひら (p.67)

おかしいなぁ…。
くやしいから、眠ることにする。

彼がいたこのベッドで、ひとり。

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『ベッドサイド』 林あまり 新潮社 1998

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