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からっぽな君へ

「あなたを色に例えると、何色ですか?」

就職活動の面接でこう訊かれた時、あなたは何色だと答えるだろうか。
最近の若者は、「無色透明です」と答える人が多いのだとか。

奇をてらう切り返しのように聞こえるが、仮に5人中3人が「無色透明」だと答えると、かえってありふれた没個性を主張してしまっていることになる。

なんとも小っ恥ずかしい。
これなら、他の有色で答えて被ったとしても、個性がぶつかり合ったように思えて、まだ気持ちがいい。

ただの世間話程度に聞いていたこの話。
ぼくは、なんとも小っ恥ずかしい気持ちで小さくなっていた。

なぜなら、ぼくこそが「無色透明です」だなんて答えてしまう輩だからだ。
4人目がここにいる。

しかし、聞いてほしい。
これには、多少なりとも経験に基づいた理由がある。

ライターは「無色透明」でいいと思っているからだ。
だからこそ、いいのだ。

このお仕事は、いろんな場所へ行ける。
いろんな世界を覗くことができる。
洞窟の中に入ることもあるし、目の前で人が泣いてしまうことだってある。

その空気や文脈を全身で受け止めて、自分の心が動くままに言葉でその一部始終を描くのだ。染まりまくって、影響されまくる。

無色透明だからこそ、いろんな世界に好奇心を抱き、感動し、「もっと知りたい」という欲求が湧き上がる。

何色にでも染まる覚悟があり、何色にも染まりきらない冷たさがある。ぼくはそう自覚しているつもりだ。

そして何より、世の中にあるいろんなお仕事、いろんな生き方、いろんな世界に、強い憧れがある。唯一無二の「色」をもち、我が道を行く生き方が、なんと羨ましいことだろう。

そんな能動的なからっぽの君は、伝えるお仕事に向いているのではないだろうか。
こんな言葉を、真に受けてみるのも、ひとつの素質なのだ。

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