見出し画像

自分を変える魔法

そんなもの、あるわけない。
自分を変えてくれるのは、きっかけと気の持ちよう。それだけだろう。

ぼくはちょうど2年前、自分の生き方を変えるために勇気を振り絞り、現状を抜け出すための小さくて大きな一歩を踏み出した。

その時、頭の中や胸の内で何が起こったのかを綴る。それは決して魔法なんかではないけれど、臆病であればあるほど、ドラマティックな戦況のどんでん返しが現実になるんだ。まあ、ちょっと大袈裟に言っている。

弱虫な同志たちよ、まずは豊かな想像力だけを持って読んでみてくれ。
「逆転の発想」がカギになる。

会社員を辞めて、フリーランスのライターへ。

「独立?いつかはね」と、自分にも周りにも言い聞かせていた。

長崎の出版社に勤め、広告営業マンとして日々を送っていた。
学生時代から始めた市民活動・まちづくり活動は相変わらず続けていたが、社会人になって参画の度合いがガクッと下がった。まあ、当たり前だ。

社会人になって2年目の途中から、コロナ禍になった。

観光業界や飲食業界が大打撃を受けて、それを顧客とする広告業界も大打撃だった。うちの会社も御多分に洩れず、大きな影響を受ける。ずっと連載していた月刊誌を、1ヶ月間だけであるが休刊せざるをえない状況に。

不安が膨らむ社会情勢と相まって、漠然とした「この会社、このまま居ても大丈夫か…?」という疑心暗鬼が、社内にも募っていたように思える。

「独立?いつかはね」
そのいつかは果たしていつやってくるのか、本当にやってくるのか、分からなかった。

環境を変える・自分を変えるための一歩は、怖くて簡単には踏み出せない。

今の自分の苦しい現状から脱するためには、「辞めます」と言わなければ。その道を避けては通れない。進みたくても、まだそんな心の準備ができていない。

2年前のぼくはそんな状況だった。

もし、これを読んでいる貴方が、同じような壁にぶち当たっているのなら、エールを送る意味でも記しておきたい。

ターニングポイントは、向こうからやってくるだけとは限らない。
自分から捏造したって構わないのだ。

いつの日か、そんな発想に至った。すると、勇気のゲージが、躊躇いや恐怖をほんの少しだけ上回った。天秤が、ほんの少しだけ勇気のほうに傾いた。

「今だ。今しかない。今、行動するんだ」と、居ても立ってもいられなくなる感覚を覚えた。そのまま震える手で上司に連絡し、「相談したいことがあります」と伝えた。

そこからは、トントン拍子でことが進み、話し合いの上で数ヶ月後に退職が決まる。羽が生えたように心が軽くなった。

ターニングポイントを乗り越えた自分がそこ(未来)にいた。

会社を辞めるかどうか、大きく言えば、これから人生をどうしようかと悩むに至った過程には、「未来の自分がどうなりたいか」をよく考えていた。

ここからは妄想の世界だ。

頭の中には、ライターとして実力をつけており、大勢の人前に立って話す自分の姿が浮かび上がった。大学の講義室のような場所で、学びを提供している様子だ。

ぼくの中にある「成功」のイメージはこれだった。

また、職業柄なのか、もう一つの成功イメージがあった。それは、何かのメディアでインタビューを受けている自分。リラックスして座り、自分の人生について落ち着いて語っている。インタビュアーとの対話を楽しんでいるような光景。

ー「森さんが今の生き方・働き方を選んだのは、どんなきっかけがあったのでしょうか?」

インタビュアーがぼくに問いかける。

これはぼくが他人に聴きたいことであると同時に、他人からぼくに聴いてほしい質問なんだなと、ここで気付いた。

「実は、壁にぶつかってどうしようもない時期がありました。臆病なぼくは、それを乗り越えられるだけの勇気がなかったんです」

インタビュアーは意外そうな顔をする。いいリアクションをしてくれて気持ちが良い。

「だけどね、そこでぼくは勇敢にも行動を起こしたのです。会社員も刺激的でとても学びがあったけど、一歩外に出て、ライターへの道を歩み始めました。怖かったけど、あの時の自分のおかげで、今があります」

ぼくの人生における、歴史的で偉大な一歩。その思い出を悠然と語る、文筆家・森氏。ビッグになって、ちょっとかっこいいおじさんみたいな余裕のある男の口から出てきた話は、まさに現在・現実のぼくが対峙する局面を乗り越えたエピソードであった。

ー「今では有名な森さんも、そんな時期があったのですか。誰しも、そうやって人生の転機を経験されているんでしょうね」

そうなのだ。そうなのだよ。

今のぼくの環境は、未来の自分が乗り越えていく踏み台なんだ。

逆境であればあるほどいいじゃないか。平凡であればあるほどいいじゃないか。それが未来の花道を演出するスパイスになる。サクセスストーリーに苦労話は付きものだ。

ターニングポイントは、つくれる。

もちろんサラリーマンを辞めることが成功ではないし、個人事業主になることがすごいことじゃない。むしろ、仕事や生活のやりくりは今のほうが大変だ。

だけど、やりたいことがあるのなら、飛び込んで行ったっていい。環境を変えるために、自分を変えるために、自分が主人公だと勘違いしたっていいのだ。

ちなみに、古巣の会社はちゃんと回り続けているので、ぼくの不安は杞憂だった。

現実には、いまだにどのメディアからも取材のオファーは来ていない。まあ、当たり前か。でも、いつでも受ける準備はできている。だってシミュレーションは完璧だから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?