【歌詞は洗脳!?】JPOPの歌詞は思想を反映している説
前回からずいぶんとあいてしまいましたが、生存しております。作詞家soranoです。あまり普段はこういうこと書かないんですが、今回は自分が携わった仕事について少し書きます。というのも、結構この曲が私の中では衝撃だったんですよね。
2020年11月25日デジタルリリースしたyukaDDの「Superhero」Japanese ver.の歌詞制作に参加しております。オリジナルは英語歌詞で、それの日本語版です。最初に英語版の曲を聴いたときに、正直「え？本気でこれを日本語にするの？」と戸惑いました。私は日本で生まれ育ったので、日本の文化は十分理解していると思います。同時に、人生の半分くらいをアメリカで生活していますので、アメリカの文化も肌で感じています。英歌詞は、もちろん素敵な歌詞ですが、アメリカに住んでいる私にとって何の違和感もないのです。Wonder WomanとかSuper Girl とか。映画にもなりましたしね。でもその英語を、日本語に直訳すると「強すぎる女の子」になってしまわないかな？という危惧があったのです。
考えてみてください。今まで＜ヒーロー＞という曲で、女性が男性に対して「あなたは私のヒーローよ」って歌は山ほどありますが、立場逆転したものって日本語であります？「私はあなたのヒーローになるよ」って、かなり少ないと思うんですよね。女性が歌う歌詞は「振り向いて、好きになって、早く来て」の方が多くて、「振り向かせる、好きにさせる、すぐ行くよ」って圧倒的に少ないんですよね。
この傾向は今に始まったことではなく、昔からの流れだと思います。演歌や歌謡曲をきいてもそうです。先に言っておきますが、個々の作詞家を攻めたりけなしているわけではないので、しっかりとその点をご理解ください。これは世相です。昔からある日本人の思想です。「男は男らしく、女は女らしく」男性は逞しくあるべきで、女性は半歩後ろを歩いて行けばいいという考え方。「女々しい」など、漢字にも表れています。（あ、金爆の女々しくては大好きですよ！）
少し本筋から離れた話題になりますが、世界の男女平等ランキングってご存知ですか？私はこれで日本のランキングを知った時、ショックだったのと同時に、それでもなんとなく納得しました。日本は2020年、149か国中で121位です。
この数字は、雇用機会や賃金など様々なデータから導かれた指数なので、これについて論じるつもりもありませんが、やはり家を守る良妻賢母という考え方から、完全に脱却できない日本…という気はします。もっとも、アメリカも53位なので、たいしたことはないのです。ただアメリカにいて「女は女らしく」という考え方を押し付けられたことは、個人的にはありません。もっと言うと「年相応」という言葉にもめったに遭遇しません。そういうところは、日本よりはのびのびしているなあと感じています。
ところで、日本だってすべての歌が「女らしく」という型にはまっているわけではありません。かっこいい女の歌はたくさんあります。（アーティストではなく、作詞家で語ってしまう作詞家あるあるですが）個人的に阿木燿子さんが描く女性ってかっこいいと思います。すがるのではなく、勝手に自分から離れて、だけどやっぱり好きだから、勝手に戻ってくる感じで。それから、尊敬してやまない阿久悠さんは、女性を女性としてではなく「人間」として描いていると感じています。人間誰にでも、悲しいことは起こる。主人公がたまたま女だった。まあ、勝手な自己解釈です。
いずれにせよ、今までは、歌詞というよりは、アーティスト性が「強い女」を成立させていた気がします。でもそれでいいんです。強い女の歌を聴いた女の子が、憧れたり、自分もそうなりたいと思ってくれれば、それで人は変わるかもしれない。歌詞は無意識への刷り込みです。好きな歌、好きなアーティストの歌、歌詞で音楽を楽しむ人、歌詞を作る人…この人たちは歌詞を一生懸命聞きます。でもそれ以外の多くの人は、そこまで歌詞を意識せずに曲を聴くんです。でも聞いている以上は、その人は無意識になんとなくメッセージを受け取るんです。あえていうなら、洗脳です（笑）そうやってだんだん「男らしく」でも「女らしく」でもない、「自分らしく」いればいいんだ。それがあたりまえなんだって、みんなが思えるようになったら…それは作詞家としての願いです。そう願うから、何度だって作詞家は同じメッセージを書けるんです。
冒頭の話に戻ります。Superheroって曲を、本当に日本語にするの？本当に「私はあなたのスーパーヒーローだ」って歌うの？と一瞬戸惑った作詞家sorano
まあ、KPOPだってBlack Pinkみたいにカッコいい女の子が人気なわけだし、そもそも安室奈美恵さんが4年前に「I'll be your hero～」って歌ってたじゃないか。（NHKのオリンピックテーマ曲）余裕っしょ！
と思い直し、ガシガシ書きました。本当に、びっくりするほどすらすら書いてた。採用して頂いて有難いデス。
私が一瞬抱いた違和感。この曲を聴いた人がもしかしたら抱くかもしれない違和感。そんな違和感がゼロになる日を目指して。歌詞書くぞー
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