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#1 省略と削除


今度の展覧会へ向けて、久しぶりに大作に取り組んでいます。

小下図を描き終えて水張りもし、大下図用のB紙を画面に貼り付け、当たりをとった。
小下図と本画の大きさに差があればあるほど、思っていたイメージと大下図に出てくるイメージが違う。
その落差は毎回どうしようもないので、結局大下図側でどうにか調整するしかないのだけれど。

ふと、今私が取り組んでいることは省略ではなく、削除だと思った。
つい先ほどまで、"現実に存在するあらゆる物質を省略し、画面を構成している"という認識だったが、
よくよく振り返ってみると、ほとんど"削除されている"。

省略しているか、削除しているかの違いはかなり大きい。
省略は、省略の程度によるが、少々の説明を残すことができる。
たとえば、大きな洋服箪笥を背景から省略するとして、洋服箪笥の存在感を弱めるだけ‥などと、「省略」には加減が可能だ。

それに比べて削除は、完全に消え去ってしまう。
洋服箪笥の存在を、うっすらも残さない描き方…私はある時から削除する方を選んできた。

絵にとって、なにかしらの物質を存在させるか・消滅させるかは極端だし
もしかしたら、完全消去ではなくほんの少しでも存在を残してあった方が、絵としてはよかったものもあるかもしれない。


ただ、じゃあ今すぐに"弱めの省略"に取り組んでいけるかというと難しい。

絹本でならもう少し柔軟に可能なのかもしれない。
でもそうすると、絵の具の物質感だったり、ある程度の抑揚、そして何より"ドライな様子"が弱まる気がしている‥。

そして私自身が求めている表現に、弱めの省略が必要かもわからない。

そもそも、削除することでさえ、無意識的に行っていた過去と、意識的に行っていける現在ではまた絵の様子が多少なりとも変化がある。

目標として、
⑴自覚を持って物体を削除し、画面を作っていく
⑵削除する物体の数を考慮
⑶ある物体を完全に削除するのではなく、少々弱める
⑷削除と省略のどちらも行う
などが挙げられる。

想像でしかないけど、削除した上で省略するかのような表現もできる気がするし
⑵に関しては、1点を残してその他を削除することはまだ取り組んでいないし、その場合は前述した「削除した上で省略するような」表現が必要になってくる気もする。

いずれ本画に入る今の絵も大下図を何度も描き直すくらいの気持ちで臨んで、何かしらの成果を得られることを祈りながら頑張りたいですね。。


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