今度の展覧会へ向けて、久しぶりに大作に取り組んでいます。 小下図を描き終えて水張りもし、大下図用のB紙を画面に貼り付け、当たりをとった。 小下図と本画の大きさに差があればあるほど、思っていたイメージと大下図に出てくるイメージが違う。 その落差は毎回どうしようもないので、結局大下図側でどうにか調整するしかないのだけれど。 ふと、今私が取り組んでいることは省略ではなく、削除だと思った。 つい先ほどまで、"現実に存在するあらゆる物質を省略し、画面を構成している"という認識だった
自分がなぜ絵を描くのか、なぜ平面絵画なのか、 よく考えることがあります。 そして明確に言語化せずとも頭の中で勝手に納得して、また次の絵に取り掛かる…それを繰り返しています。 "自分だけが理解していればいい" そう思う部分もかなりあるのですが、最近はある程度言語化して表面化させることが必要な気もしてきています。 しかし、とっておきのプリンのレシピを他人に明かしてしまうようなーーーそういう、変に勿体ぶっている部分があることも事実です。 この絵は、自分自身がなぜ、絵を描くのか
私は祖父母の家も好きです。 モチーフは、両親が住む実家と祖父母の家、このふたつを主に描いています。 祖父母の家に住んでいたというわけではありませんが、 この家には様々な記憶があります。 そして、柔らかい 優しい穏やかな光も存在しています。 実家で見る光とはまた違う光が、空間があり その空間もまた、私を必ず受け入れ続けてくれる心地良さがあります。 🐈 画面中央にいる猫は、龍之介という保護猫です。 祖父母は猫を他に2匹飼っています。 全部で3匹の猫がいるのですが、1匹はほ
とある午前中、母と会話をしている途中に台所の前を通りがかった。 ふと、窓辺に置かれているパキラと目が合った。 冬の日の、雪の積もっている外の世界から光を受けて、白い光を背に いつもより青々しく見えた。 少しだけ背筋がピンと張った。 ❄️ 室内に置かれている植物は、窓が空いていない限り 自然に揺れることはない。 風にそよぐ姿、葉の擦れる音、木漏れ日の揺れ動く地面―― そういう、動的な様子はない。 目に見える動きがないからこそ、訴えかけられる感覚がある。 私は毎日
私は1日の中で、最も朝の時間が好きです。 普段仕事をしている間は朝はバタバタしていて、朝の時間をゆっくり楽しむことはできませんが、 休みの日や帰省した日の朝はとても心地よいです。 澄んだ光の色、透明度の高い光の色が美しく室内を照らします。 混じり気のない新鮮な朝の光が、私の心を軽くしてくれます。 🌞 実家で暮らしていた頃は、ただひたすらに毎日学校へ行かなければならないことが酷くしんどく、(面倒くさいだけ) 硬い椅子に座って授業を聞くことを想像して自分の赤い椅子へ着席
実家に帰省する時期は、春、夏、冬――とある程度決まっています。 この絵は春に咲く蘭の花と、窓辺の明るい光の関係を考えながら描きました。 🌸 実家で過ごしている時、私はよく台所に立ちます。 料理をしたり、掃除をしたり、犬のごはんを作ったり、もらった花を切ったり、色々します。 台所のシンクの向かいに、横長の窓があります。 その窓にはカフェ・カーテンかかかっており、時間帯によっては庭の草木の影をこちらに落とします。 東向きなので、朝が最も光が差し込み、影が長く伸びます。 こ
私は絵の中に人が描いてあると、それが誰なのか、どういう人なのか、その「人」中心に絵を見てしまいます。 だから私は人を絵に入れないことが多いです。 自分が表現したいことのなかに、「人の存在」「人の空気感」はあるけれど、 人間そのものを描いてしまうと、その人が絵を勝手に説明的にしてしまう気がします。 人間が、人間を一旦置いて物事を考えることは難しい。 なにせ、自分が人間だから。 人間である以上、切って離すことは難しい――仕方ないことと思う一方。 👩⚖️ 人を除く生き物は
「何が描きたいの?」と、ある先生に真っ直ぐ目を見て問われました。 私は一言、「光」と言い、その少しあとに「影もです。」と言いました。 ☁️ 実家のダイニングを初めて描いたのは、大学四年生の時でした。 東京へ出て、3度目の春休み。 なんの変哲もない、実家での朝。 私は画面左奥の、赤い椅子に座ります。 誰もいない空間で、 ただ静かに部屋は照らされています。 私はそっと立ち、部屋の真ん中でただじっと、その光景を見つめました。 ⏳ 「実家」というのは、様々な記憶が交錯す
「何を描くか」「何を描きたいか」は自分の中で明白なつもりです。 ですがこの絵は、自分の中では外伝です。 本筋を辿る最中の、たまの休息…そういう絵を描こうと思う時もあります。 🍂 私の両親が住む家では、12月から2月にかけて雪がとてもよく降ります。 年によって降る雪の量は違いますが、多いときだと私の膝くらいまでは積もります。 今年の1月、例年よりは積もらないねと話している頃、気温は氷点下まで下がり、断水するまで雪の被害がありました。 気温が下がれば雪も多く降るのか、という