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うめを砂糖漬けにする方法

梅の実を砂糖にうずめておくと、果肉から水分が出て、いつしか梅のシロップができるらしい。そのような知識をわたしは持ち合わせていなかったと思うのだけど、たぶんTweetなどを目にしてそのことを知った。見るからに簡単そうで、実際のところ、じつに簡単だった(少なくとも仕込みは)。

くだもの売り場で、ビニル袋に詰められた薄みどりの梅が売られている。たぶん1kgほど詰め込まれて1,000円ほどだった。見切り品のコーナーではもう少し安く売られており、そちらを選んだ。おなじく1kgの砂糖と、梅や容器の殺菌にもちいるというミニ焼酎を買った。ずっしりとしたガラス製の梅酒瓶も売られていたが、重々しさがどう見てもわたしの軽薄さになじまないので、ジップロックの深めのタッパーウェアを買った。値引き品だったせいか果肉がすでに柔らいでおり、スーパーの帰り道でもうバッグのなかからいい匂いがしていた。

説明するほどのことは特にないけれど、梅を水洗いし、ペーパータオルで拭き、へたをとり、焼酎で消毒し、ぞっとするほど大量の砂糖といっしょに容器に詰め込み、常温のまま放っておく。作業工程は、料理というよりもお花を生けるのと似ている。ふかふかの砂糖のなかで一晩ねむらせると、もう砂糖が梅の水分で湿り始めた。果たして飲めるようになるのかどうかはまだわからない。

最近読んだなにかの本で、だれかがなにかを愛したと書かれていた。(記憶の空虚さに愕然としながら——)なにを愛していたか思い出せば、たとえばスノー・ドームのように、ひとつのなにかが周囲と独立しそれだけで完結しているもの。なぜ愛しているのかも、わすれた。梅はそのひとつひとつが丸く、つややかで、傲慢で、瓶詰めにすると瓶もまた周囲と独立して完結する(ジップロックのタッパーウェアだったとしても、一応)。

糠漬けにも興味があるけれど、調べてみたところ、糠にたべものをうずめるまえにしばらく野菜屑をつけて発酵を促さなくてはならないらしく、それはつまりきちんと野菜をつかってコンスタントに料理をして野菜の切れ端を何日かにわたって冷蔵保存して溜めておいて糠床をつくって混ぜ込んだうえでさらにしばらく待たないといけないということであり、そんなことはわたしには現実的だとは思えない。

2年くらい前にYくんが来る日も来る日もパンを焼いているのを見て以来、わたしも焼いてみたいと常々思っていたけれどなんとなく実現しないままで、このあいだYくんに聞いてみたらもう焼き方は忘れたと言っていた。パン生地を捏ねるのは身体知に依存しているから(たぶん楽器の演奏なんかと同じで)さぼっていると忘れてしまうらしい。

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