夏がくれば思い出す
夏がくれば思い出す。夏休みの宿題の読書感想文
何を書けば善いのか未だに理解できない。
文芸評論ともまったく違い、後年、高校生読書感想文最優秀作品なんかを新聞で読んでも、『それでどうなの? その読み方、理解しかないの?』としか思わなかった。
小学生高学年では課題図書の指定がなかったので、海外SF小説を題材にした。感想は『それなりに面白かった』程度の感想しかなくて、指定原稿枚数を充たすため、やたら粗筋だけを書いた記憶がある。
最悪だったのは、中学三年生かに図書指定があり、志賀直哉の「暗夜行路」だった。
当時、志賀の短編は教科書か副読本かで二、三は読んでいたと思うが、とりたてた印象がなかった。そこへあの長編で、複雑な家庭環境、高等遊民みたいな主人公の生活環境、大正の時代背景などを踏まえてこの長編を理解する脳みそなど皆無な、普通の莫迦ガキだったわたしにこの小説の機微が理解できる筈がない! そもそもこの特殊な長編小説を、同級生の何人が理解できたのだろうか。
この小説の確か三分の一あたりで嫌になり、飛ばし読みをしたことを憶えているが、その”感想”は、まったく憶えていない。必殺、あらすじ原稿埋めをしたことは間違いない。
夏休みの宿題「読書感想文」については、このように最悪の記憶しかない。トラウマ状態である。当然、採点結果も最悪だったのだろう。それと、志賀直哉が一番嫌いな小説家になり、彼の文体は五字以上目にしたくない状態が長く続いている(後年、「城の崎にて」と「小僧の神様」を読んで印象はずいぶん変わったが)。「暗夜行路」があれほど高評価なのも、未だに解せない。
お盆前後の今頃になれば必ず思い出す読書感想文。課題図書をまだ買っていないこと、指定原稿枚数の多いこと、夏休みの宿題提出期限にすでに間に合いそうにないこと、等々。
夏なれば思い出す。