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世界が終わったその後に② ~ショートショート~

 ①はこちら。


 ――もう終わった世界で、僕たちは夕陽を見ている。


「できた」
 ロイがそう言ったのは、太陽がちょっと赤くなったくらいで、ネイラはロイの足にもたれて眠ってしまっていた。
「本当だ。すごい」
 僕が拾った壊れたロープは、そりゃあ完璧じゃないだろうけど、ちゃんとロープに戻っていた。
 ロイは、ちょっと疲れた様子で、でもとても満足そうに笑っていた。そのままロープを持って立ち上がるから、ネイラが起きてしまった。
「おにーちゃ?」
 寝ぼけながら手を伸ばすネイラの頭を撫でて、ロイは僕にロープのきれいな方の端っこを持たせた。
「これ、向こうまで持っていけるか?」
 僕は頷いた。濡れた全部を干すには、ロープをぴんっと張らなくちゃだめだからね。
 ネイラは寝ぼけまなこで、指をくわえながらこっちを見ている。ごめんね、ぬいぐるみはまた今度、ね。
 ロイみたいに頭を撫でてみようか、と思ったけれど、やっぱりやめた。泣かれたら悲しい。
 僕はあちこちから出ている瓦を使って、さっきよりも慎重にネイラたちから離れていった。僕の後ろにはロープで道ができる。ネイラがときどきそのロープを棒でつつくから、手元が揺れてバランスを崩しそうになる。
 綱渡りをしてるみたいな僕を見て、ネイラはきゃっきゃと笑う。嬉しそうな笑い声が僕のところまで聞こえてくるから、僕もちょっと笑った。
 ロープはどんどん伸びていく。ちょうど3人の背を合わせたくらいで、僕はやっと向こうに着いた。
 さて、ここからだよ。
 ロイの方を振り返ると、ネイラとふたり、揃って手を振っていた。僕も、ロープを持っていない方の手を振る。ロイが、なにかをなにかに巻き付けるような仕草をしてきた。
 あ、そうだ。ロープを結ばなくちゃいけないんだ。
 ごわごわしたロープを、水の下から出ている木のてっぺんにくくり付ける。蝶々結びじゃすぐほどけちゃうから、固結び。
 簡単にできると思ってたけど、難しい。木って、思ったよりも細いしすぐ揺れるんだね。ロープのあちこちから飛び出ているちくちくした何かのせいで、僕の指からはちょっと血が出ちゃった。痛いけど、やらなきゃいけないことがあるから我慢。ロイは大丈夫かな。
 やっとできた。
 ロイもできたみたいだ。向こうで、ネイラを抱っこして何か喋ってる。僕は大きく手を振って、丸印を作って見せた。
 結んだロープは、ロイが向こうで反対側を引っ張るとちょっと揺れる。でも、これくらいいいよね。

 いつの間にか、お日さまは真っ赤になっていた。
 ロープはぴんっとは張れなかったけど、大丈夫だよね。
 ネイラとロイは向こうから。僕はこっちから。
 濡れちゃった全部をこのロープに干して、乾かさなくちゃ。


「ノア!」
 僕を呼ぶ声が聞こえた、気がした。



――僕たちが夕陽を見ている世界は、もう終わっちゃったけれど。
――全部干したら、きっと会えるよね。


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私が見た夢をもとにしたショートショートです。
ちょっと不思議なお話を書きたかったんだけど、どうでしょうか。


読んでいただきありがとうございます❁¨̮ 若輩者ですが、精一杯書いてます。 サポートいただけたら、より良いものを発信出来るよう活用させていただく所存です。