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だいじだいじを聴く

子どもたちが小さいころ、お気に入りのものを「だいじだいじ」と呼んでいた。ギュッと抱っこしたぬいぐるみや、握りしめた何かのフタ。「だいじだいじなんだね」と声をかける。
また、こちらの持っているペンなどを手にとって走り出しそうなときに「あ~、これはママのだいじだいじだからね」とか「これは先生のだいじだからね」などと言って返してもらう、などした。
いや、実際にはそんな悠長な気分になれず、「ダメ!」って言って取り上げたことのほうが多かったけど。

いま、話を聴くということを提供していて、「何を聴いているのか」というと、その人の「だいじだいじ」を聴いている。
ギュッと抱っこしているもの、握りしめているものは何か。
あまりに長いこと握りしめていて、握っている本人もそれが何だったか忘れていることもある。
手をひらいてみると、「あれっ、これだったのか」「これは、今は、いらないかも」などと検証したのちに手放すことになったりもする。
それでも、「くだらないものを握っていたなあ」ではなく、「これを握ったときにはだいじだいじだったんだね」と、自分でも思ってあげられるといいなと思いながら。

話し手さんがそう思えていなくても、私は、当時のその人に「だいじだいじだったんだよね」という気持ちでいる。当時のその人から、いまのその人へ、伝わるエネルギーがある。そして、そう思う私自身の、過去にも現在にも未来にも、そのエネルギーは伝わっている。

だいじだいじを聴かせていただくと、必ず自分自身のこともだいじに思えるのだ。聴く人が増えたら、そんな人が増えるのだ。

(イラスト・ナカオクミさん)


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