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児童養護施設の恋愛事情

こんにちは、ヨウです。

今回は、児童養護施設の恋愛事情について、綴ります。

ただし、私がいた施設での話ですので、全ての施設出身者に当てはまる内容ではないかもしれないので、ご容赦ください。



施設の子も、普通に恋愛している

まず、大前提として、児童養護施設の子どもたちは、普通の子どもたちと大差ありません。心に傷を負っていること以外、性格、容姿、趣味嗜好など、基本的に普通です。発達障害や愛着障害といった問題を抱える子は割合多いかもしれませんが、「だから恋愛できない」ということはありません。

ですから、中高生で、「恋人がいる子」も普通にいます。その辺は、当事者として、自信を持って言えます。

児童養護施設にいるから、恋愛は禁止、というルールもありません。あくまで、1人の人間として、子どもたちは恋愛をしています。



施設”内”恋愛は禁止

私のいた施設では、施設内での恋愛(同じ施設の中で恋人になること)は禁止されていました。

私が施設職員から説明されていたのは

「施設は、男子と女子はいるけど、”生活の場”で、施設は一つの家族みたいなものだ。だから、家族と恋人になるのは、おかしいだろう?」

とのことでした。


まあ、分からないでもないけど、当時の私は「施設が生活の場って言うのは分かるけれど、家族ではないし、別に問題ないんじゃない?」と思っていました。

しかし、実際は、違いますよね。皆さんも想像がつくと思います。


職員の方が「施設内恋愛禁止」にしていた理由を明確に知ることができたのは、私が児相で働き始めてからのことでした。



職員が恐るのは、性の乱れ

施設内恋愛が禁止されているのは、安全面や、規則の乱れを防ぐこと等、様々な理由がありますが、一番大きなところは、「性行為」を施設内で起こさせないようにするためでしょう。


児童養護施設に入所している児童は、それぞれ措置理由が違います。身体的虐待を受けた子もいれば、身寄りのない子もいます。その中に、「性虐待」を受けた子どももいるのです。

性虐待とは

二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。(児童虐待の防止等に関する法律より抜粋)

と、定義されています。


施設の子どもたちの中には、大人から性加害を受けて、心に傷を負っている子どもも存在します。そういう子どもたちを「性加害」から守る必要があります。性加害から守るためには、外部の人間以外にも、施設内でのリスクも排除しなければなりません。


恋愛をして、恋人になると、多くの子どもは「性行為」に興味を持ちます。これは、人間として当然のことです。施設内で恋愛をすると、その施設内で性行為がある可能性が出てきます。「施設内恋愛禁止」は、施設内での性行為のリスクを排除するための決まりなのです。施設内で性行為によって、より深い傷を負う子もいます。また、そこで妊娠をしてしまうとなってしまうと…。言わずもがな大問題になり、子ども、施設、児相、保護者等、多大なダメージを与えることとなります。

未熟な子どもたちですから、本能的に体を求める子どももいます。全員がそうではありませんが、子どもがそういう「性逸脱行為」をしないと言い切れない現状があります。



規則が厄介

ただ、施設外であれば、普通に恋愛をしてもいいのです。ここで、厄介になってくるのは、施設の規則です。

私がいた施設で、恋愛の障壁になっていたルールは

・門限18時(部活動を除く)

・小遣い3500円(高校生)

・携帯電話所持禁止

この3つでした。門限が早いと、一緒にいることができる時間が短いですし、この小遣いでは、毎週デートに行く、みたいなことも出来ません。また、携帯電話(当時、私の同級生はほとんどガラケーを所持していた)が持てないとなると、その他の高校生と同等のコミュニケーションをとることができません。

ま、これでも彼氏彼女がいる子もいて、「どんだけコミュ力高いんだ!」と驚いていましたね。でも、「部活がある」と言ってデートしたり、隠れて携帯電話持ってたりした子もいたので、その辺はお察しください。

あまりにも規則が厳しいと、自由に恋愛することができません。それはそれで、問題だな、と思います。



規則は「子どもを守るためのもの」

難しいのは、子どもを守るために規則があるというところです。

虐待や親権者不在といった子どもたちは、それぞれに心に傷を負って生きています。そういう子どもたちが健全に成長することができる場を、児童養護施設は作ってくれています。近年では、措置児童の半数以上が、被虐待児ですので、施設の安全性については、必要性が高まっています。

規則が子どもの多様性を抑えつけてしまっている現状と、それ以上に子どもの安全確保が求められる実態がぶつかり合っているため、施設職員の方はアンビバレントな感情を持っていることでしょう。自由は与えたいけれど、与えすぎた結果のリスクを負えない…。この塩梅は、施設によって考え方も違うと思いますが、こういった現状に上手に線を引くことができればなあ、と思う今日この頃です。いや、本当に難しい。



恋愛の練習はしておいた方がいい

ただ、1つ言えることは、性行為は抜きにして、恋愛はした方がいいと思っています。人を好きになって、好かれるように努力して、付き合ったりフラれたりして、少しずつ人との距離感というものを学んでいってほしいな、と思います。

愛着障害を抱える子は、人との距離感がつかめずに、恋人に依存的になったり、嫌われないようになんでも要求を飲んでしまったりしてしまう傾向があるようです。思春期の時に、恋愛から遠ざかり、18歳で自由の身になった瞬間に恋愛解禁になると、悪い輩に騙される可能性が非常に高くなります。施設から出て孤独に苦しむ子にとっては、そういう存在でも、「認めてもらえる」と感じて間違った愛情を育んでしまい、結果的にまた児相や施設のお世話になってしまう可能性があります。

それから、初恋が終わる瞬間って、めちゃくちゃダメージが大きいです。そのダメージを、施設出て孤独に苦しんでいる時に受けると、精神的に死にます。いや、結構真面目な話で。


「風が吹けば桶屋が儲かる」みたいな感じではないですが、恋愛を思春期の頃から練習して、恋破れて傷付いた気持ちを、施設や里親さんで受け止めてもらえる…。そんな環境があればな、と思います。躓いても転んでも、立ち上がる時にそばにいてくれる人がいる…。そういう環境が、子どもを守って、強く育ててくれるんだと、私は思うのです。







あ、ちなみに、私は全くモテませんでした。単純に女子の気持ちが全然わからないタイプだったので。好きになった子に、すぐアタックしてフラれて、を繰り返していました。当たって砕けろで恋愛に関してはメンタル強靭になりました。おかげさまで、今の妻、最高です。

当時、自分に彼女ができなかったことを、施設のせいにして、終わりたいと思います。笑

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