18~19歳が鬼門? 親権という「邪魔者」

こんにちは、ヨウです。

今回は、児童養護施設出身の子どもの苦悩について、書き記していきたいと思います。


親を頼れない現状

児童養護施設等から自立した子どもは、頼ることができる親がいない子がほとんどです。それによって、多くの施設出身者の子が、自立したのちに、困難を抱えます。

また、児童養護施設出身者のみならず、親に頼れない子どもは、世の中にたくさんいます。親に頼ることのできない環境で育った方、あるいは、毒親によって適切な養育を受けることができなかった方(虐待サバイバー)は、この世に溢れていることでしょう。そういった方々も、同様の悩みを抱えているのではないか、と推測します。

↓参考リンク



「親権者」という、子どもの監護責任者

親権は、上記リンクに、条文が載っています。

親権者には、子どもの「居所の指定」「職業の許可」「財産管理」などの責務があります。そのため、子どもが成人(20歳)するまでは、この責務を親が果たさないといけません。

例えば、引っ越しをしたい、連帯保証人が必要だ、パスポートを取得したい等の書類に、「親権者の同意」が必要になります。

この「親権」が、親を頼れない子どもにとって厄介なものになってしまうのです。


「親権停止」という最終手段

児童福祉法には、以下のような文言があります。

第二十八条  保護者が、その児童を虐待し、著しくその監護を怠り、その他保護者に監護させることが著しく当該児童の福祉を害する場合において、第二十七条第一項第三号の措置を採ることが児童の親権を行う者又は未成年後見人の意に反するときは、都道府県は、次の各号の措置を採ることができる。
一  保護者が親権を行う者又は未成年後見人であるときは、家庭裁判所の承認を得て、第二十七条第一項第三号の措置を採ること。
二  保護者が親権を行う者又は未成年後見人でないときは、その児童を親権を行う者又は未成年後見人に引き渡すこと。ただし、その児童を親権を行う者又は未成年後見人に引き渡すことが児童の福祉のため不適当であると認めるときは、家庭裁判所の承認を得て、第二十七条第一項第三号の措置を採ること。

そして、第二十七条は、以下の通り。

第二十七条 都道府県は、前条第一項第一号の規定による報告又は尐年法第十八条第二項の規定による送致のあつた児童につき、次の各号のいずれかの措置を採らなければならない。

一  児童又はその保護者に訓戒を加え、又は誓約書を提出させること。
二  児童又はその保護者を児童福祉司、知的障害者福祉司、社会福祉主事、児童委員若しくは当該都道府県の設置する児童家庭支援センター若しくは当該都道府県が行う相談支援事業に係る職員に指導させ、又は当該都道府県以外の者の設置する児童家庭支援センター、当該都道府県以外の相談支援事業を行う者若しくは前条第一項第二号に規定する厚生労働省令で定める者に指導を委託すること。
三  児童を小規模住居型児童養育事業を行う者若しくは里親に委託し、又は乳児院、児童養護施設、知的障害児施設、知的障害児通園施設、盲ろうあ児施設、肢体不自由児施設、重症心身障害児施設、情緒障害児短期治療施設若しくは児童自立支援施設に入所させること。
四  家庭裁判所の審判に付することが適当であると認める児童は、これを家庭裁判所に送致すること。

つまり、裁判をして、決定をもらえば、親権を停止して、児童養護施設や養育里親の下で育てさせることができるという事です。親権者から虐待を受けた場合、児童福祉法第二十八条を使って対応することが、たまにあります。


しかし、親権停止の裁判が実際にしてもらえるかどうかは、管轄の児童相談所(都道府県)の決定次第です。児相が「この親の下で養育させることは適切ではない」と判断したうえで、裁判を実施し、その判決を持って、やっと親権を停止することができるのです。

ただし、児相は裁判に負けてはいけない(というか、負ける可能性のある状態で裁判をしない)ため、年間でこの「児童福祉法二十八条」を使って施設等措置をするケースはかなり少ないとも言えます。

また、裁判というものは、時間がかかるものです。その間に、子どもや親の気持ちが変わり、親権停止目前で子どもが「家に帰る」と言い出して、結果的に家庭復帰をさせざるを得なくなったケースもあるとのことです。


親権停止をするのには、かなりの労力が必要なんです。



問題は、「18~19歳」

児童福祉法は、対象が18歳未満の児童です。

しかし、親権の効力は20歳までです。

つまり、その間の18~19歳の間は、「児童福祉法の対象にならないが、親権の効力がある」という事です。

昨年のコエールというイベントでスピーチをした方の中に、「パスポートを取るのに、親権者の同意が必要だったため、困難に直面した」当事者がいました。児童養護施設から大学に進学したのち、勉学のためにパスポートを取得する際に、「親権者」の同意が必要という問題が発生した、という内容です。

「親にサインしてもらうだけだろう?」と安直に考えることもできるかもしれません。しかし実際は、「ひどい虐待を受けているため、親子の接見は危険である」とされているケースも多いものです。自立後に親との関係が再開し、金銭搾取を受けた、DVを受けた、性被害に遭った、という話は、少なくありません。

親に頼れないどころか、会うことすらままならない子どもに、「親権者の同意をもらう」という行為は、かなり高い障壁なのです。



終わりに〜親権の必要性〜

ここからは、私の個人的な意見です。


親権というものは、本来「判断能力や社会性の乏しい子どもの代わりに、親が確実に諸々の手続きをきちんとさせるため」に作られたものだと、私は思っています。

しかし、親に責任能力や社会性が認められなかったとしたならば、親権を愚直に守るより、いろんな情報を与えて、最終的には子どもに判断させてもいいのでは?と感じています。

児相に保護されて、施設に措置された段階で、親権者は子どもを施設に入れることに同意している(ことになる)ので、その時点で、親権の効力を停止させた方が、子どものためになるのではないのでしょうか? 確かに、子どもは、判断能力や社会性が低く、的確な判断ができないことがあると思います。しかし、親がきちんと養育できなかったのなら、子どもの人生は子どもに決めさせた方が良いのではないでしょうか?


「子どもに任せるなんて、無責任だ!」と思われる方もいるかもしれません。しかし、親に人生狂わされるくらいなら、自分で滅茶苦茶にした方が、後悔のない人生を送れると思いませんか?



長ったらしくなってしまいました。では、また。


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