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進学する?就職する? 選択の難しさ



こんにちは、ヨウです。


先日、オンラインイベントで、「児童養護施設の進路選択」という内容でトークセッションさせていただきました。

進路選択は、その後の人生を大きく左右する、日本の子どものほとんどが経験するイベントです。

今回は、施設出身者の進路について、トークセッションを踏まえて感じたことを書いていきたいと思います。



低い進学率

私が以前書いた記事ですが、児童養護施設の子どもは、未だに一般全体と比較すると、大学進学率はかなり低い状況にあります。施設の子は、それぞれ家庭の事情が違うため「これが原因だ!」と一概に言えないのですが、ここでは、

・金銭面の心配

・低学力の子が多い

の二つを理由として挙げています。多くの子どもは、自立した後に親元を頼れません。頼ったところで、自分の足を引っ張ってしまう存在である可能性も大いにあります。そういう状況の中では、奨学金を借りて進学、という決断は並大抵のことではないでしょう。



職員は、「手に職」を勧める

私たちは、施設を出た後、自分の力で生きていかなければなりません。もちろん、アフターケアをしてくれる職員や支援団体も多くありますが、基本的に自分で生活していかないといけません。当然のことながら、施設で担当していた職員も、在籍している児童のケアを優先的にしなければなりません。だから、退所児童は、ある意味「放り出される」ことになるのです。

そういう事情を考えると、多くの職員は「最低限の生活はできるようにしてあげたい。」と考えます。そこで、本人によっぽど強い意思がない限り「手に職をつけて、退所後の生活を安定させてあげたい。」と考えるのです。

そのため、職員さんは、「就職」もしくは「資格の取れる専門学校」などを勧めます。

この事情が進学率を下げているとは言えない(関係が深いとは考えにくい)のですが、そういう事情が施設の中には存在しています。


これは、施設職員さんが「自立後に、アフターケアが十分にできない」という事情を把握しているからであり、子どものことを想っての行為だと、私は考えています。



中学生で迫られる自立

しかし、そういう進路選択を考えると、すでに中学生の段階である程度決まった方向に進むことを決めないといけません。当然、親を頼らないのだから、わがままは言えません。しょうがないから、やるしかないのです。


ただ、実際問題、中学生で人生なんて決められません。


あなたは、中学生の時に「こんな高校に行って、こんな大学に行って、こんな仕事をするんだ」と決意したことがあるかもしれません。

しかし、それを貫き通した人はどれほどいるのでしょう? そして、中学の時の決意を叶えた人はどれほどいるのでしょう?


ぶっちゃけ、中学生の進路選択なんて、普通「学力に見合った学校に行く」程度です。教師や親の前では「◯◯になる」とは言うものの、それは建前。中学校なんて、遊んでつるんで青春するだけです。施設にいようがいまいが、そんなことを考える時期ではないのです。

その中で、施設の子たちばかり「将来のことを考えろ」なんて横暴なのです。それを、殆どの当事者は理解しています。



親から奪われた時間

そして、忘れてはいけないのは、私たちは施設にいたということです。虐待等の理由で親元を離れて施設で生活することを余儀なくされた子どもだったのです。

本来の子どもであれば、親元で育ち、その中で自由に学び、遊び、考え、そして人生を歩んでいきます。しかし、施設の子は、そういう「自由な時間」を奪われた上に、かなり早い段階で「人生を左右する選択」を迫られるのです。


自発的に「将来、これになるために進路はこうだ!」と決めるのなら、問題ないでしょう。しかし、私たちが生き急ぐ理由は、残念な親たちが原因です。親の勝手が子どもの時間を奪い、さらに決断まで急がされるのです。

私たちが、早くに人生の決断をしなければならないことは、しょうがないことかもしれません。しかし、その「しょうがない事情」は、私たち自身が作ったものではありません。

自分のせいではないのに、「しっかりしなさい」と言われる現状は辛いのです。



しかし、児童福祉を取り巻く環境は、良くなってきている

変えようがない過去と、抗えない運命に悲しみを深めている施設の子どもたち。しかし、そこに手を差し伸べてくれる人は、増えています。

スポーツ観戦やレストランへの招待、ボランティアによる学習支援、洋服や食料品の寄贈、給付型の奨学金等々。施設出身者の推薦枠を作った大学も出てきました。

社会が、児童養護施設や児童虐待に関心を持った結果だと思います。私が高校生だった約10年前には、そういう制度は少なかったのです。あっても人数が限定的で、かなり少数の募集でした。しかし、今は殆どの施設出身者が、なにかしらのサポートを受けて進学することができるのです。


虐待被害で悲しいニュースが増えています。しかし、増えているのは悲しいニュースだけではありません。報道されないだけで、良いニュースも増えているのです。



終わりに ~案外、何とかなることを伝えたい~

私とまさやに共通していることは、「大人になってから、自分のしたいことを始めた」ということでした。

私たちは、将来のことについて考え、職員とも話し合い、自分が踏み外さないように、失敗しないようにと人生を歩んできました。それ自体は、とても良いことで、立派なことかもしれません。しかし、私たちは「自分で道を選んできた感覚」というものを得ることができませんでした。だからこそ、ある程度生活ができることを見越したうえで、こうして自分のしたいことを続けているのです。


ただ、私たちは「案外、人生は何とかなる」ということを経験しています。目の前のことに一生懸命になり、それで得た経験や知識は、自分を支えてくれます。自分の境遇に悲観してばかりでしていては、「案外何とかなる」ということすら気づくことができません。

親との関係が悪くなっても、仕事をしていれば生活できます。親がいなくても、友達はできるし、理解者も現れます。仕事を失っても、話を聞いてくれる友人や、支援してくれる団体があります。ハローワークに行けば、手当てをもらいながら資格を得ることもできます。それでも、にっちもさっちもいかなくなったら、生活保護もあります。


昨今、不幸な事件や、不安を煽るニュースがたくさん出回っていて、暗い未来しか見えない時もあるかもしれません。しかし、それは世界の全てではありません。

親から切り離され、自分の力で何とか生き残った私は、大した能力もスキルも身につけないまま大人になりました。しかし、そこに至るまでの困難まみれのプロセスが、今の私を作り上げています。そして、それを認めてくれる人と沢山出会いました。


だから、あまり悲観的にならなくてもいいと思います。

世の中、家族と施設だけではありません。


もっと広い世界に目を向けて、何となく頑張ってみませんか?



ちょこっと宣伝

上記のサイトでは、子どもの取り巻く環境を改善すべく活動されている方々について宣伝しています。内容は以下の通りです。

1.体罰によらない子育ての促進
2.いじめ報告サイトの普及
3.親権者以外での保護者同意サインの普及

Twitter
https://twitter.com/kinopykids
YouTube
https://youtu.be/E2n6t2-ye04

↑キノピーのフォーロー&拡散


↑いじめ報告サイト



是非、「コエールのソーシャルアクション」を覗いてみてください。できれば、拡散してください。

※ソーシャルアクションは、2020年9月26日まで実施。



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