児童養護施設の子どもたちは外泊をする

こんにちは、ヨウです。

今日は、児童養護施設の子どもたちが「外泊をする」という点について書いていきたいと思います。施設の子どもは、施設でだけ縛り付けられて生活するわけではありません。自宅に一時的に外泊することができます。その仕組みについて説明します。

1.外泊の基本的な考え方

施設の子どもたちが外泊する理由は、大きく分けて二つあります。

①家庭復帰の準備として

②子どもと家庭の交流のため

児相は、子どもの家庭復帰を目指して、親に指導したり支援したりする仕事をしています。そのため、家族の交流を出来る限り実施していくことが大切になってきます。もちろん、ひどい虐待によって措置された子で、会うこと自体が危険だと判断されている子どもは外泊させることはありません。子どもが外泊を拒否している場合も同じです。その辺の判断は、児相に委ねられます。外泊には「自宅に一時的に帰宅しても問題ないと、児相が判断していること」が重要になってきます。

私自身も、施設の職員さんから、「○○さんの親から、外泊の希望が出ているんですけど、許可していいんですか?」と連絡をもらった経験があります。当然、子どもを施設に措置する決定をしたのは、児相。なので、児相の考え方に沿った形で外泊させないといけません。


2.外泊の時期や期間

外泊の時期は、目的によって違います。1で示した理由に重ねると以下のようになります。

①家庭復帰の準備→家庭復帰が決まっている時期の1か月くらい前から

②家庭との交流→学校の長期休業期間

①は期間がバラバラで長期だったり短期だったりします。家庭復帰する際に、親がきちんと子どもの面倒を見ることができるか、親子の人間関係は良好か、子どもが問題なく家庭に適応できるか等、児相が確認すべきことが沢山あるときは、細かく外泊させることもあります。毎週の土日に外泊したり、措置した状態で長期外泊に入ってそのまま施設に戻らず措置解除したりすることもあります。家庭復帰を前提とすると、各家庭の事情が異なるので、状況に応じて外泊を設定します。ただ、その辺のさじ加減は児相の担当者に委ねられるので、自由に外泊できるとは限りません。

②の場合は1週間以内に収めることがほとんどです。交流の目的であれば、施設での生活を前庭としています。長期間外泊させると、施設での生活リズムが乱れたり、精神的な揺れが起きる可能性があるので、施設の生活に支障が出ない範囲で外泊させます。こちらに関しては、施設側の裁量で期間を決めたりすることも多いようです。なんせ、措置解除が絡んでいないので、「いつからいつまで外泊」と簡単に対応することが出来るからです。

いずれにしても、外泊の可否については、児相の措置理由で変化します。地域によっては、その辺のやり取りがおざなりになってしまっているところもあるかもしれません。施設さんは、児相に外泊の許可を取っておかないと、外泊中に問題が起きた時に、施設が責任を取らされる羽目になります。もし、施設職員さんで、児相とのやり取りをせずに外泊許可をしている方がいらっしゃったら、面倒だと思いますが、外泊の許可を取っておいた方がいいと思います。(養育里親さんも同じです。)


3.外泊による子どもへの影響

子どもは、環境の影響を受けやすい生き物です。身体的暴力や性加害を受けた子は、特に心身に強い影響が残ります。そのため、外泊は慎重に実施しないといけません。ただ、外泊先にカメラを設置したり、監視したりすることはできないので、その辺が難しいところです。

親が外泊中に暴力をしてきた、性加害をしてきた、子どもに暴言を吐きまくった、外泊をしたもののご飯が準備されなかった、外泊中に昼夜逆転の生活をしていた、児相や施設の悪口を子どもに言った、子どもの前で親が酒を飲んで暴れた、親が子どもにタバコを勧めた、施設に隠れて子どもにお金を渡した、子どもの前で親が自傷行為をした…。影響があることは、あげればきりがありません。

外泊については、「親からの影響を排除すること」ではなく、「親からの影響について、子どもがどう思っているか」「外泊後のフォローをどのようにするか」ということが大切です。施設であろうが家庭であろうが、何処でどんな生活をしようが、何かしら影響は受けます。それは、いいことも悪いことも含めてです。


4.そもそも親がいない子どもの場合は?

そもそも、帰る家がない子どももいます。そういう子は、長期休業中、ただ施設で生活を過ごすことができますが、里親さんで生活することもできます。私がいた施設では、帰る家がない子どもたちが、家庭的な養育を体験する場として、施設と交流の深い里親さんのところに外泊していました。それから、職員さんが一日里親として、短期間自宅で養育する仕組みもあるようです。子どもの要望に合わせて、制度はまだまだたくさんあるようです。詳細は私もこれから調べていきたいと思います。

ちなみに、これに関しても、子どもが「施設で過ごしたい」と言えば、その通りになります。子どもの意向が最優先です。

ただ、この仕組みの是非については、コメントを差し控えさせていただきます。里親さん、施設、子ども、みんな人間同士の関わりの中で試験的にやっているところもあるので、上手くいかないことも多いので。

施設での生活が長い子どもは、施設自体が家庭のあり方であると認知していることも少なくありません。あくまで、子どもにとっていいものかどうか、子どもと相談しながら進めていくことが望まれます。


終わりに

私は、施設と自宅が徒歩15分くらいのところにあったことと、措置理由が(おそらく)養育困難だったこと、それに母が病気療養中でいつも自宅にいたので、外泊は夏休み、冬休み、春休みと毎回行っていました。外泊自体は別に楽しいものではなかったのですが、なんとなく行っていたことを覚えています。私としては、狭い木造ぼろアパートで母と話すより、施設の自分の部屋(といっても、3人部屋ですが)で勉強したりギター弾いたりしている方がよっぽど楽しかったのです。

冷静に今考えると、とても失礼ですよね。でも、それが私のその時の気持ちでしたし、それによって職員さんや親に迷惑をかけていなかったので、まあいっか、と思っています。

こういう記事を書くたびに、「やっぱり子どもの養育って、難しいんだな」と思わされます。こうやって、何か発信することで学ぶことが多いし、何かを学ぶきっかけになっていることを嬉しく思います。

今日はこの辺で。


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