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[前半] 「コロナ後の社会と教育の可能性 苫野一徳 (教育哲学者)X 尾原 和啓(フューチャリスト)」 イベントレポート

4月29日のオンライン対談(「混沌とした時代をたくましく生きる子を社会で育てる」)に引き続き、5月5日に開催された、Learn X Creation(ラーン・バイ・クリエーション)の第二回オンライン対談では「コロナ後の社会と教育の可能性」をテーマに、哲学者・教育学者/熊本大学教育学部 准教授の苫野一徳先生、フューチャリスト 尾原和啓氏をゲストにお招きし、合計で1,000名を超える沢山の方に日本中、そして世界各地からご参加いただきました。

コロナ後、そしてwithコロナという時代を見据えて、これから社会や教育はどう変わっていき、どのような可能性があるのでしょうか。ゲストスピーカーのお二人にLearn X Creation の竹村詠美事務局長をモデレーターにじっくり対談いただきました。

※主催いたしました、Learn by Creation (竹村詠美事務局)に関しましては、こちらのラーン・バイ・クリエイションの生い立ちといまをご覧ください。

オンライン対談では、「自由の相互承認」「学びの個別化・協同化・プロジェクト化の融合」「子どもたちと共に学びを作る」「信頼して任せて待って支える」「子ども達が今までは大人の時間を生きてきた、今は子ども達の時間で生きられるチャンス」「自立から自律へ」「テクノロジーとの付き合い方」など、現在の混沌とした時期に、学校や家庭ではどのように子ども達と向き合っていけば良いかについて沢山のヒントが詰まった対談内容となりました。

本イベントレポートでは、オンライン対談の概要と参加された方々からのお声、イベントレポート担当者の感想などをお伝えさせていただきます。ご興味をお持ちいただけましたら、レポート最後にご紹介しております、Youtube動画を是非ご覧ください。

印象に残ったキーワードや感想をお伺いしてみました

“尾原先生、苫野先生の書籍を読ませていただいて、いつかお二人のお話を聞いてみたいと思っておりました。非常に好奇心をくすぐられる内容でした。哲学・テクノロジーを用いた学校教育の個別化・協同化・民主化を現場でできるところから実装していきたいと思います。” (教育関係者)
”学び手自身が問いを立てられるようになることは大切。だけど、学び手が問いを立てられるように導けるような問いを、教師が立てられるようになることが大事。私が今、考えているのは、どうすれば教師が学び手を刺激する問いを立てられるようになるのか、そこを支援することはできるのか”(教育関係者)
“苫野先生のお話を聞きたくて参加したのですが、尾原さんとの異色の対談、とても興味深くお話を聞くことができました。コロナ休校の間、親として子どもにどう寄り添えば良いか考えているのですが「信頼して、まかせて、待って、支える」というポイント、とても参考になりました。”(保護者)

今回のオンライン対談では半数以上の方が教育関係者の方となり、withコロナ、after コロナと言われる中で、教育や学びを止めずどう対応を考えたら良いかなど様々な直面する課題について、真摯に考えられている教育関係の方々からの関心の高さを感じました。

さらに、参加された皆さんから、印象に残ったキーワードをアンケートでお伺いしたところ、

「自由になるための教育」「教育の個別化・協同化」「投げ網から一本釣り漁法へ」「子どもの喉を乾かしてあげる」

などがあがっており、本当の意味での子ども達の個別の学びや好奇心を持つ原動力になるもの、そして教師や大人はどのように必要な時にサポートができるのかと言った点が皆さんの印象に残ったようです。是非このようなキーワードにも注目されて動画をご覧いただけましたら幸いです。

苫野先生と尾原氏の対談

苫野先生と尾原氏のそれぞれのプレゼンテーションを受けて、

・社会課題への関心の低さ
・教育にかかる費用
・学校が閉鎖的であること

この3つの課題に対して、何がどのように変わっていけばいいのかという問いかけからお二人の対談はスタートしました。

苫野先生からは、個別化と協同化の融合を目指して公教育のシステムをどのように整備していくのかという視点で、また、尾原氏からはその実現にITをいかに活用していくのかという視点で示唆に富んだ提案が展開されました。

「信頼して、任せて、待って、支える」

社会課題への関心の低さや夢中になるものが見つけられないと言った、現代の子どもたちが抱える問題に対して、苫野先生は、教師や大人のマインドセットをどう耕すかが重要であると力説されました。現在の with コロナの状況では、先生が学びのコントローラーをずっと握っていることはできません。子どもにコントローラーを委ね、教師は、「信頼して、任せて、待って、支える」という教育の基本に立ち返る必要があります。教師には、子どもの学びの頼れるサポーター、協同探究者としての役割が求められています。大人がコントロールする中で、他人の時間を生きている子どもたちは、自分の好奇心を見つけることもままなりません。このような状況だからこそ、自分の時間をたっぷりと楽しむことが必要だとおっしゃっていました。

尾原氏も、信じて待つことの重要性について、「好奇心に喉を渇かす」という表現を使ってお話しされました。そもそも、子どもとは好奇心に溢れた存在であり、何か奇妙なものを見つけたら自然と追いかけていくものです。その過程で、コンフォートゾーンを出ることこそが探究への第一歩なのではないでしょうか。「大人が夢中になるものを押し付けることはできない。子どもが探究したいものに出会う偶発性を待つことしかできない。」とおっしゃっています。そして、大事なものや好きなものができれば、それを守りたい!という社会課題への関心の高まりへとつながっていくことを、インドネシアの自然を例にお話しされました。好きなものができれば、それについて必要なことを学ぶためのリソースはインターネット上に豊富にあります。それを活用することで、子どもの学びは一気に加速していきます。

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 「協同化としての学校現場」
 
 子どもに自立的・自律的に学ぶことを望む一方で、学校は物事を効率よく進めるために非常に他律的な場になってしまっています。そこは、「子どもたちと一緒にルールをつくったり、子どもたち自身で決めていったりすることで、自分の自由を行使することができる」と苫野先生はおっしゃいます。

また、尾原氏は、数字やデータをオープンにすることで自ら振り返ることができれば、「自分を叱るのは自分でできるが、パフォーマンスを向上させるためのルールをつくることには他者のサポートが欠かせない」とお話しされました。また、学校での学習においては、学びのペースや教材・時間割は個別化し、そのような中で必要に応じて人に力を貸せる、貸してもらえる関係性の構築が重要となります。困った時に、誰かが助けてくれるという安心感が、個別化による孤立化を防ぎます。個別化+支援でゴールの到達を目指していくには、「支えられているという実感」を子どもたちがもてるかどうかが鍵となっていきます。

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※苫野先生プレゼン資料より

 「インターネットの本質はリンクの貼り合い」だとする尾原氏は、インターネット上では、pay forwardがしやすいとおっしゃいます。「自分にできることをgiveしあうことで、他者から『ありがとう』と言ってもらえる。自分にとっては当たり前のことが、他者を助けているという経験を繰り返す中で、自分らしさを見つけていくのではないか」というお話がとても印象的でした。

さらには、物理的には距離のある人たちと、インターネット上で助け合う(自分にできることをgiveし合う)と、自分にできることの付加価値が高まり「ありがとう」と言ってもらえる機会が増えるということも話されていました。学校現場でも異年齢で学び合えば同じようなことが起こると苫野先生もおっしゃっていました。

※ 後半に続きます
※ より詳しい内容につきましては、本対談の動画をこちらからご覧いただけます。





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