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前例踏襲という怠慢

「うちの会社は何で給料あがらないんですか?」

これは僕が去年の4月に親の会社に帰ってきた際に、社員の1人から言われた言葉です。詳しく話を聞いてみると、勤続してかなり長いのに、給料は上がるどころか下がっていて不満がある、とのことでした。

というわけで、ややプリミティブな話ではありますが、今回はなぜいつも通りの仕事をしているのに給料が上がらないのか、ということについて整理してみたいと思います。

現状維持は衰退

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まず大前提として、今の時代はモノを作るという”作業”自体には大きな価値がない時代です。

昭和の時代には需給バランスが今と逆で、時間をかけてでもとにかくモノをたくさん作れば儲かりましたし、それに貢献した人が順次昇進昇級していくというシステムで会社組織は成立していました。

しかし、残念ながら平成以降は、モノは充足して差別化や独自性という付加価値がないと儲からない時代になっています。更に、昭和のモーレツ社員的な働き方は淘汰され、ワークライフバランス(この言葉は好きではありませんが)が重視されるようになり、勤務時間自体も短くなった現代では、いかに”作業”的なルーティンワークを省力化し、生産性・付加価値の高い稼働時間をどれだけ増やせるかがカギとなっています。

極端な例を言えば、1000件の計算をする際に

A.  すべて電卓で計算→1000分
B.  エクセル手入力で自動計算→100分
C.api連携で全て自動化→0分

どの方法が生産性が高いの方は明白ですが、冒頭の給料が上がらない話の大きな理由の一つがまさにこれです。Aを一生懸命やっている人からすると「なんでこんなに毎日汗水たらして働いているのに…」と思うわけなのですが、マクロに世の中を見ているとBCの手法が主流になっている中でAの方法でいくら頑張っても永遠に給料は上がらないですし、何なら生産性が相対的に下がるのでそれに伴い給料も下がる方が自然なわけです。自分は今まで通りの仕事をしているつもりでも、同業他社等周りの水準が上がれば自分の仕事の価値は下がる、つまりこの章のタイトルの通り”現状維持は衰退”ということになります。

与えられた仕事をこなすのはただの”作業”

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少し過激な事を言いますが、誰かから言われたとおりに仕事をするのは”ただの作業”であり”プロの仕事”ではありません。ここを勘違いしている人が多いのですが、”仕事”というものは前例踏襲したり指示されたことを指示された通り実行することではありません。前述した通り会社は常に改善を重ねて成長を続けなければいつか潰れてしまうものであり、それを実現するのは経営者も含めたその組織で働く人たちです。

もっと厳しい言い方をすると、提供価値の向上を怠るような人たちの作業に対していつまでも同じお金を払ってくれるほど社会は甘くはありません。価値は時代によって変遷しますし、利益がビジネスの結果である以上そのプロセスを改善改良しない企業にもそこで働く人にも未来はありません。

”仕事”は知識からはじまる

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人が得られる情報には大きく2つあります。”原体験””追体験”です。前者はその通り自分が実際に経験した事、後者は他社のストーリーを見聞きして二次的に自分の経験にすることです。

冒頭から言っている「前例踏襲しかしない人」というのは、この”原体験”からしか情報をとれない人です。当たり前のことですが、自分も含めた一般人が実際に見聞きできる領域には限界があり、自分から追体験の情報を取りに行かない限りは前例踏襲以上のことはできません。自分は会社で本を読んだりどこか出かけたりということを推奨しまくっていますが、それはこの追体験による知識の蓄積を増やし、仕事の可能性を広げるためです。それが最終的には、仕事の楽しみや自身の人生の豊かさ、そして社会に対する価値創造の質の向上に繋がると強く信じています。

ちなみに、日本を代表するクリエイティブの水野学さんの本の一説に、

センスを磨くうえで大事なのは勉強と研鑽を続けていくことであり、わからないのは「センスがないせい」ではなく「センスを磨く努力をしてないせい」である。

という旨のことが書かれています。

この”センス”というのは”仕事のセンス”とも読み替えられるモノであると考えていて、新しい発想を持って日々新たな発見をしながら仕事をしている人は、必ず何らか追体験を取りに行く努力をしています。

人の生き方は十人十色で良いと思っています。仕事に生きる必要もありません。ただ、「毎日同じことをしているのに自分の待遇が良くならない」と嘆くのであれば、自分にはそれを主張するに値する努力をしているのか、ということを一度立ち止まって見直してみるのが良いと思います。受動的な仕事をしている人の待遇は今後さらに悪化するのは間違いないです。


なお、今回のこの記事は冒頭の社員のことを責めるものでは全くありません。むしろ、これは会社の責任だと思っています。

本来会社は、社員に対してこうした事実を丁寧に説明し、当事者意識を植え付けて自己研鑽を促すのがその務めであり、弊社の場合はそれを怠ってきた歴史があり、社員にこうした当事者意識のないお客様気分の発言をさせてしまうこと自体、管理能力不足の極みと言えると思っていますので、念のため最後に申し添えておきます。

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