サッカーにおける「声を出す」とは
今も昔も変わることなく、指導者が選手に言う「声を出せ!」という言葉。
私が小さかった頃も、そして指導者になった今も、その言葉に対して未だに感じることが、「とても分かりづらい」ということ。
声を出すとはどういうことか、どういうときに何を発するのか、何を発したらどんな変化が起こるのか、ということがすごく曖昧で、選手にとっては理解するのに大変難しい言葉だと思います。
今回は、サッカーにおける「声を出す」ということの意味と、それに対するクラブの考えについてお話ししていきたいと思います。
クラブが考える「声を出す」とは、以下の3つの意味があるとしています。
①状況を把握できていない味方に正確な情報を伝える
②お互いの意思(気持ち)を伝える
③チームが苦しいときに、仲間の気持ちを奮い立たせる
見て分かる通り、声を出すとは「コーチング」「コミュニケーション」「鼓舞をする」ということになります。
クラブでは、選手に対して「声を出す」という言葉ではなく、「伝える」というワードを利用しながら、上記の3つにアプローチしています。
そして、この3つのポイントは、選手の「ある要素」がどの程度成長しているのか、を図る指標としても利用できます。
それは、「知性とメンタリティー」です。
これまでもたくさんお話しをしていることですが、クラブでは「プレーする」ということに重きを置いています。
当然サッカーをプレーするためには、知識の量や、周りの情報を取り入れる力、そして答えを出す能力などの知性の要素と、苦しいときでも決して逃げないアスリートとしての強いメンタリティーも必要になってきます。
もちろん、①コーチングと②コミュニケーションが取れるかどうかは性格的なものもあると思いますが、まずはサッカーを理解していないと味方に伝えることはできないと考えています。
そして、どのようなプレーの仕方であっても、「ゲームに勝つ」という目的は同じです。
選手は、勝ちたいから仲間に自分の意思を伝えたり鼓舞をします。
チーム内でのコーチングやコミュニケーション、鼓舞が出てくるまでの過程は、指導者から「声を出せ」と言い続けたから出てくるようになるわけではありません。
選手の頭が整理され、プレーできるようになってくれば、自信が芽生えサッカーが楽しくなり、次第に勝ちたいという気持ちが表現されるようになってきます。
その状態になった選手から、自然発生的に出てくるものだと強く感じます。
人の数だけ色々な考えがあると思いますが、根拠の無い根性論を振りかざして、「気持ちが弱いから声を出せないんだ!」「声を出せよ!出さないから負けるんだ!」というような発言は、指導者が日頃から選手の頭を整理させられていないことを露呈しているようなものです。
頭が整理されていない選手にとっては、大変理不尽な話ではないでしょうか。
現在、小学生から中学生まで幅広い年代の選手と一緒にトレーニングしていますが、「声を出す」ことに年齢は関係ないことが分かります。
7歳や8歳の選手でも、「ここにいてほしい」「もう少し近くに来て」といったことを伝えているシーンを目にします。
まだリフティングやドリブルをやらせてもうまくいかない選手たちです。
もちろん、強いキックも蹴ることはできません。
まだ具体的に説明することも難しい年代です。
しかし、高いレベルで整理できなくても、「こうやってプレーしたら上手くいく」という感覚を身に付けるだけでも、それが自信につながり、味方に波及していくのではないかと感じています。
どの年代においても同じことが言えますが、決して能力の高い選手ではなくても、判断の軸となる基準を与えながらプレーの仕方を理解してもらい、燻っている心に火をつけることで、選手は意思を表現できるようになっていく、ということを目の当たりにしながらアプローチしています。
自分が心で感じていることを表現することはとても大切なことです。
しかし、いきなり表現できるようにはなりません。
物事に対する意味を理解させず、ただ抽象的な言葉で強くアプローチしても選手は何も変わらないと思います。
プレーする楽しさを感じてもらい、自信を持たせ、表現する土台を築いてあげられるように、日々選手と向き合っていきたいと感じています。
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