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書籍『アンマーとぼくら』

有川 浩 2016 講談社
有川ひろ 2020 講談社文庫

以下は2016年に自分のブログに書いた感想です。
文庫化されて、平積みになっているのを見つけました。
沖縄の写真が美しい表紙の本。その写真を眺めるだけで、こころがかの地に連れていかれるような、美しい本です。
今、この時期、沖縄に旅行に行く代わりに、この本で心だけ沖縄を楽しむのはいかがでしょうか。
読んだらきっと行きたくなると思いますが、それはもっと状況が落ち着いてからのお楽しみということで。

*****

2016年頃、新刊が出ることもチェックしていなかった。
一時期に比べると有川作品への興味が下がっていた時に、本屋さんで出会った。
出会ってから振り返ると、そういえば、Twitterにあがっていたことを思い出した。

これはいい本。
評判通り、綺麗な表紙なのもいい。
表紙の意味がわかるのは、読んでからのことだけど。
タイトルの意味がわかるのも、読んでからのことだけど。

号泣すること、2回。
これはね、泣くよね。
泣けない人とか、泣かない人とかもいるけど、私は泣くなぁ。
最後はどうなるか途中で予想がついたけれども、これは泣くよ。

主人公のリョウが、沖縄に到着したところから始まる奇跡の3日間。
沖縄でガイドをしてきた継母の3日間の休暇につきあう旅だ。
王道の観光名所を回りながら、過去と現在が交錯する。

過去は変えられない。本当ならば。
これを主人公のための、3日間と受け取る人もいるだろう。
過去の記憶の書き換えはできる。感じ方を変えることもできる。
主人公が自分の子ども時代の記憶を救済するための過程と読むことはできる。
でも、これは、晴子さんの魂が慰撫されるたのめの3日間だったと思うのだ。

だって、この後、主人公はやっぱり後悔せずにはいられないと思うのだ。
もっとそばにいればよかった。もっと一緒にいればよかった、と。
いくら、この後、沖縄に転居してきたといっても、事あるごとに思い出す。
そして、自分ができたかもしれないのにしなかったことを考えるのではないか。
後から、後から、気づくことは出てくる。後になってからしか、気づけないことがある。
そんな含みを、勝手に付け加えておこうと思う。

複雑な家族関係のあたりは『明日の子供たち』の取材の成果かな。
北海道の描写は、『旅猫レポート』とか。
植物の種類と写真は『植物図鑑』ね。
観光地を回る感じは『県庁おもてなし課』だろうか。
これまでの作品が透けて見えるような、薄様が幾重にも重なり合っているような。
これまでの作品ごとの取材が程よくブレンドされて、熟成されたような印象があった。
感情表現はこれまでになくとてもストレートで、押し付けがましいほど、文字が浮いて感じることもあったが、感情の強さを表すには他になかったような気がする。
強い強い感情をまっすぐに投げつけるような小説だった。

あー。沖縄、行きたいなぁ。
飛行機、乗りたいや。

そして、4年経っても忘れられない本になった。
まだ、沖縄には行けてはいないけれど。

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