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ランディさんと始めるリコーダー 第5回

0 今回の楽譜

第5回レッスンは、2020年9月9日にZoomで行いました。連載全体は、マガジンからご覧ください。→ランディさんと始めるリコーダー

前回は「3a. アルトハ長調1」というファイルの楽譜を使い、c'', d'', e'', f'', g''の5つの音のみでの音の動きや息遣いを練習し、「美しき町、リール」という曲の練習を開始したのですが、音の動きや息遣いについては順調に練習が進んだものの、楽譜から曲を読み取るというのが難航してしまいました。そこで「美しき町、リール」は後回しにすることにして、次の楽譜に進みました。「3b. アルトハ長調2」です。ダウンロードしてご利用ください。

楽譜の読み取りには前回苦労されていたのですが、今回はだいぶスムーズに進みました。一つの曲が上手くいかなくても他の曲に移るとスムーズに行くということはあるものですね!

1.0 「戦さの曲」

問題は楽譜の読み取りなので、このファイルの練習12は省いて、最初から「戦さの曲」をやっていただくことにしました。開始は、下のレッスン動画 (1/5) で 1'08"ぐらいからです。僕が吹いてみせるまでもなく、最初から的確に曲想を捉えて吹かれたこと驚きました。

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タイトルから察して、これは軍楽に由来する曲と考えられ、勇ましい感じが望まれます。なので機敏に吹きたいところですが、最初はゆっくり目のテンポで、威厳のあるイメージで練習しましょう。慌ててしまうのがよくないので、遅くも速くもありえるときには、遅めのテンポで練習するのが良いのです。余裕を持って吹けるようになってきたら、好みによって速いテンポでもやってみれば良いです。

落ち着いたテンポで1段目と2段目を分けてやっていただきたところ、1段目はとても良く吹かれていました。2段目の最後の終止手前の付点音符のリズムだけ違っていたので、レッスン動画 (1/5)の最初のあたりは、付点のリズムの取り方についてやっていますが、この記事では、2段目の話は後回しにして、まず、1段目のことから始めます。でも例によって話が長いので(笑)、先にご自分で少し練習してから読んでくださる方が考え過ぎにならずにすむかと思います。先に動画をご覧いただくのも良いかと思います。

1.1 「戦さの曲」1段目

ランディさんの1段目は言うことなしという様子でしたが、ポイントを確認しながら吹いていただきました。レッスン動画 (1/5)では、6'25"あたりからです。1段目のポイントは、まず下の楽譜2のように、第2小節4拍目から冒頭と全く同じフレーズが開始していることです。

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前半のフレーズはe''(ミ)を繰り返す4分音符3つで閉じるのに対して、後半のフレーズは付点2分音符で伸ばして閉じます。それ以外は全く同じです。このように、楽譜の中に同じところがあれば、それを把握しておくのは大事です。

それから、よく見ると、4分音符の拍に合わせてe''(ミ)を3つ繰り返すのは、第2小節だけでなく、第1小節も第3小節もそうなっています。

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そして、上の楽譜3Aで赤丸をつけたe''(ミ)の音は、Bのようなリズムを刻んで聴こえてきます。4分音符の上に付いている点はスタッカートstaccatoの記号で、後続の音と切り離して演奏することを示します(staccatoはイタリア語で分離しているという意味です)。つまり、音と音の間に無音の隙間が空くように短めに吹くということになります。テーテーテーではなく、テッテッテッと吹くわけですね。といっても短くなりすぎるのもよくありません。第2, 4小節の3拍目はAでは8分音符、Bでは4分音符のスタッカートで書いていますが、聴こえ方には差がないはずです。Bは応援団の三三七拍子のようですね。三三七拍子もヨーロッパの軍楽由来と思われます。こういうモチーフは、軍楽に限らずあらゆる音楽に隠れているので、平和主義の皆様も(笑)ここは威勢よく拍を刻んでBも練習してみましょう。強く吹く必要はないのですが、最後の付点2分音符も終端までしっかり息を流してきっぱりと止めるようにするのが良いでしょう。

ランディさんは上の2ポイントとも、ご自分で(無意識にせよ)読み取っていらした様子で、また、ちゃんと説明する前からリピートのときのタイミングも出来ていたのも素晴らしいことでした。

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この曲は弱起で、4拍目から始まっていますが、そのため最後の小節は3拍分しかありません。そして、次の4拍目は最初に戻る(あるいは2段目の弱起に続く)ことになります。そうして、12341234という拍がずっと一貫して続くことになるのです。楽譜に慣れていない人は、一旦停止してしまって1234123451234みたいになったりすることもあるので要注意ですが、ランディさんは、拍はずっと続くということを自然と感じていらっしゃる様子でよかったです。

1.2 「戦さの曲」2段目

2段目については、レッスン動画 (1/5)の12'35"あたりからやっています。2段目についても、前半後半がどこで分かれるかということが楽譜読み取りのポイントになります。文章が単語や句から成り立っているのと同様、楽譜でも、長いフレーズは短いフレーズが繋がって成り立っています。楽譜を読むというのは、その成り立ちを把握することに他ならないわけです。長いフレーズを短いフレーズに分けて捉えることをフレージングphrasingと呼びます。

ただ、音楽の場合は、文法的にはっきり区分けできず、感じ方によって違ってくる場合もあります。レッスンでは、ランディさんに「どこで分かれるでしょう?」と質問することから始めていますが、僕の想定していた答とは違っていました。これは、どれが正しいか?という話ではなく、どっちがしっくりくるか?(吹く人にとって、聴く人にとって)という話ではあります。ただ、経験によって、どんな解釈がしっくりくるか分かってくるという面もあるのです。なので、質問しておきながら結局は教師の解釈を押し付けるみたいになるのですね(笑)。

下の楽譜5には、僕の考える前半をA、後半をBとして実線のカッコで示し、ランディさんがおっしゃった前半を破線のカッコでRとしています。

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まず、AとBをこのように分ける理由ですが、Aは弱起で4拍目から始まっているので、その終わりを2小節目3拍目と捉えれば、後続のBも4拍目始まりになるからです。そうすると、AとBは同じ長さで、同じく4拍目から始まる拍に乗って進むことになります。前半後半が必ず同じにならないといけないという訳ではないのですが、このように捉えるとシンプルです。また、理屈は今の段階では難しいのですが、Aが2小節目3拍目のレ(d'')で終わると捉えれば、Aは半終止と呼ばれる問いかけるような終わり方になって収まりがいいのです。ただ、Rは間違いかというとそういう話でもないのです。この曲の1段目の最後は付点2分音符でミ(e'')を伸ばして収まるので、2段目前半もRのようにミ(e'')で収まるように感じるのもありえます。このように、フレージングをどうするのが良いかを判断するのは、独習される方にとっては悩ましいことかと思います。いろいろな分け方で前半だけ吹いてみる、それから後半だけ吹いてみるというように切り分けて練習してみるうちに、自分にとってしっくりとくる分け方が見つかったり、あるいは、どれでも可能だと感じたりするでしょう。どれでも良いと感じるなら、吹くたびにいろいろな捉え方でやってみれば良いのです。

面倒なことを書いてしまいましたが、ここでは、ランディさんの感覚を尊重するより、AとBで分けるとシンプルになるという方向で進めていただきました。つまり、まずはAのみ、レ(d'')で終わるフレーズを吹いていただきました。終わりを収まった感じにするには、終わりの音をあまり短く吹き過ぎない方が良いのですが、長く吹いてリズムがおかしくなってしまうのも良くありません。そういうのも意外と難しいですが、リズムがおかしくなるよりは、短く吹いて拍に乗り続ける方が良いです。この場合、AからBへの繋がりには、2小節目2拍目のシ(b')からずっと音階を上っていく流れもあるので、はっきりと分かれるように吹く必要もありません。Aだけ吹く、Bだけ吹くという練習を何回かやっていれば、説明臭く吹かなくても、自然と良いフレージングの演奏になっていくはずです。

さて、Bだけ吹いてみるに当たって、ランディさんが苦手だとおっしゃる付点音符について書いておきましょう。レッスン動画 (1/5)の最初のあたり5分ほどは、Bの終止の前の付点リズムの練習をやっていますが、ランディさんに限らず、付点リズムが苦手な方はとても多いです。特に、後続の8分音符を吹くタイミングが速くなる傾向が多くの初心者の方に見られます。見た目は、付点4分音符は4分音符よりちょっと長いという風に見えるかもしれませんが、付点4分音符は2分音符に近いと思っているぐらいが良いです。Bの終わりあたりの付点4分音符であれば、ここで3拍目と4拍目の2拍を数えることになるので、音の伸びの感覚は2拍分です。下の楽譜6をご覧ください。

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2段目は1段目を単純化したものです。この2つを吹き比べてもフレーズの印象はほとんど変わりません。1段目はちょっと飾りが入っているという程度の差です。ここのタイミングに自信のない方は、まずは単純化した2段目を練習されると良いです。この場合、1段目の付点4分音符に続く8分音符は、その次のc''(ド)が先取りされて出てきた音と捉えられ、先取音(せんしゅおん)と呼ばれます。でも、付点4分音符を伸ばしすぎると、今度は8分音符のタイミングが遅れてしまうので、それも難しいところです。そういう風にタイミングを変更する表現法もあるのですが、くせにするとよくありません。まずは正確なタイミングを直感的に取れるようになることを目標にしましょう。

1.3 レッスン動画 (1/5)

では、だいぶ後回しになりましたが、レッスン動画 (1/5)をご覧ください。自分で振り返ってみても、僕が吹いてみせて真似していただくというようなことはほとんどやってませんね。早くもご自分で楽譜を読んで1曲できるようになったのは、とても素晴らしいことです。

それからどうでもいいことですが、8'20''あたりでようやく僕が自分の楽器を取り出して吹いたところ、あれ?ピッチが違う!と焦ってるところがあります。リコーダーは昔の楽器なので、現代のピッチと異なるものがいろいろあり、1700年前後の曲をやるときには現代ピッチより半音低いピッチを使うことが多いのですが(1音低いとか4分の3音低いとか半音高いとかいろいろです)、最近はプラスチックリコーダーでもこの半音低いピッチのが発売されていて、手元にあるプラスチックリコーダーを取ったらそういう楽器だったという訳です。ここはカットしても良かったのですが、いろいろなピッチの楽器があるという話を書く機会かもしれないと思って、そのままにしました(笑)。

2.0 「従軍商人の歌」1

曲を楽譜から読み取るということ、順調に進み始めたので、PDFファイルの練習13も省略して、次の曲「従軍商人の歌」に進みました。この従軍商人marketenterというのは日本語では酒保商人という、軍隊に同行して兵站を担う人たちのことのようですね。レッスン動画 (2/5)の最初あたりで僕が「今でいうと軍需産業のえらい人?」などと適当なことを口走ってるのが恥ずかしいところですが、自戒のためにそのままにしておきます(笑)。いずれにしても、これも軍楽の類で、威勢がよくて偉そうという印象の曲です。

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リピート前の前半は先ほどの「戦さの曲」と全く同じフレージングですね。冒頭は4拍目始まりの弱起で、前半は第2小節の3拍目まで、後半は前半と全く同じ旋律が4拍目から開始します。ランディさんも前半が3拍目までということは的確に捉えて吹いていらっしゃいました。ただ、後半も(終わり方を除けば)前半と全く同じということには気づいていらっしゃらない様子で、リズムの読み違えが起こっていました。それは後回しにして、まず、この前半を練習していただきました。しつこく書きますが、先にご自分で少し練習してから読んでくださる方が考え過ぎにならずにすむかと思います(笑)。

2.1 最初の部分

4拍目から開始して最初は4分音符のみが続くというのは、前回やった「美しき町、リール」と同様です。全部4分音符というように同じ音価(楽譜での音符の長さ)の音符が並ぶ場合でも、実際には音符と音符の間には無音の隙間があったりして、音が鳴っている時間は様々です。頭で考えてコントロールするのは大変難しいですが、拍や曲想によって、同じ音価の音符でも微妙に様々に違いが出てくるのです。機械的に同じにはなりません。考えるというより、拍を感じる、曲想を感じることによって自然な変化がつくようにしましょう。

レッスンでやった順番とは前後するのですが、拍を感じることから始めます。話は「美しき町、リール」のときと同様です。

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流石にこれだけ見て曲想を感じるというのは無理なので(笑)、もちろんまずは楽譜7のフレーズを吹いて、勇ましいような威厳のあるような曲想だなと思いながら、では、どう開始すれば良いかな?と楽譜8を練習してみるわけです。指揮をするなら、4拍目アップビートで手を上に1拍目ダウンビートで手を下にということになります。具体的にどう吹くかは無限に可能性がありますが、ヒントとしては、upはアクティブな感じdownは安定感のある感じと思うと良いです。なので、1拍目は長めにしましょう。そしてここから上に行くので、最初から大きい音にはしない方が良いです。

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上の楽譜9Aがこの曲の最初のフレーズですが、c''(ド)から上行していって、第1小節3拍目のf''(ファ)が頂点です。そして、いろいろ動きはありつつも第2小節3拍目のe''(ミ)に収まっていきます。この旋律を単純化するとBのようになります。Aの方では8分音符がいろいろ動いていますが、枝葉を削ぎ落とせば、ファからミに落ち着いて行く流れを飾っているだけとみることができます。ちょっと高度ではあるかもしれませんが、このように、楽譜を読むときに、どれが幹で、それにどんな枝葉がついているかというように見ることができるとよいです。細かい音符に足を取られて幹を失ってしまわないようにしましょう。Aの方で頂点のファは頂点なので十分長く吹きましょう。テヌート記号をつけておきますが、ファを十分伸ばせば次のミとの間にはほとんど隙間が開かないことになります。ただ、注意としてこのように長く吹く音は強くなり過ぎないように、全体から突出しないようにするのが良いです。(ちなみに、e''の上にある + は装飾音の記号なのですが、今は無視してください)

2.2 レッスン動画 (2/5)

そういう拍感やフレーズ感がつかめて来たら、拍を止めずに同じものを何度も繰り返すと良いです。するとだんだん無心に吹けるようになって来ます。僕はループにして練習すると言っています。下のレッスン動画 (2/5) 4'30"あたりからやっていただいています。楽譜9Bのような幹を捉えていれば、楽譜7に示した前半と後半が「全く同じ」ということがお分かりと思いますが、ここまで来れば楽譜7の4小節を吹くのは簡単なはずと思います。というわけで、やっている途中で25分のタイマーがなってしまったのですが(5'34"のところ)、すぐ終わると思い続行しました。ところがここからが意外と難航してしまいました。でも、ランディさんが「休憩にしましょう!」とおっしゃてくださったおかげで、区切りができました(7'00"あたり)。そしてその後、休憩がてら、部分と全体という話などしています。そこもどうぞ。

2.3 Takadanobaba

ランディさんが「ゲシュタルト崩壊して来た」とおっしゃってるのは、漢字の部首などがバラバラに見えて来て何の漢字だか分からなくというような現象が楽譜を読むときに生じてしまうというというようなことでしょう。僕はその方面の知識には疎いのですが、楽譜も音符の集まりであるのは事実で、それをどう見て旋律という全体を把握するのか鍵になりますね。ゲシュタルトというのとはまた話が違うかもしれませんが、こういうことについての喩えで僕がよく思い浮かべるのは、Takadanobabaというような単語です。僕が東京でレッスンしている練習所は高田馬場(たかだのばば)というところにあり、駅のローマ字表記にはTakadanobabaと書いてあります。どうでもいいですが、写真も貼っておきますね(笑)。

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外国の方々もたくさん暮らしている地域なのですが、日本語ネイティブでなければ、何だこの地名は!!とびっくりするに違いないですね。すんなりと「たかだのばば」とわかってスラスラ言えるには何をわかっていれば良いでしょう。高田さんという人もいるとか、馬場ということは乗馬の場所だねとかはわかってる方がいいですね。そうすれば、takadaにnoがくっついて、それがbabaにかかって、takada-no babaだとわかります。ta-ka-da-no-ba-baをどんなに滑舌よく続けてもtakada-no babaにはなりませんし、頭でtakada-no babaだよねと考えながら発音しても「高田馬場」にはならないでしょう。構造がわかった上で何も考えず地名として一気にすらっと発音しないといけないということになります。

レッスンでやっていただいていることは、Takadanobabaは、takada-no babaですよという話から、takada, takada, takada, takadaとスラスラ言えるように練習し、次はtakada-no, takada-no, takada-no, takada-noと練習し、また、baba, baba, baba, babaと練習して、はいじゃあ次はTakadanobabaと言ってくださいというようなものですね。いまローマ字でこうやって書いて見たら、確かにこれはゲシュタルト崩壊するなあとわかって来ました(笑)。こうやってレッスンすることによって僕が学ぶことも多々あります。わかりやすい練習方法を見出していきたいところですが、やはり、分解して統合するということ以外にはなさそうに思います。その辺は、他の音楽教師の方々のご意見もいただきたいところです。

2.4 「従軍商人の歌」2(リピートまでをもう一度)

休憩もとってリセットして、再び、リピート前の前半に取り組んでいただきました。まず最初は、冒頭の部分を確実に吹けるようにすることです。レッスン動画 (2/5)でも冒頭の部分を繰り返して練習するというのはすでにやったわけですが、改めて、落ち着いてやるために、1小節分の休符を挟んでループにするという練習をやっていただきました。楽譜にすると下のようになります。

楽譜10

フレーズをある程度迷いなく吹けるようになっていたら、拍を止めないで、このように何回もやり続けることで安定して吹けるようになって来ます。下のレッスン動画 (3/5)の1'20"あたりからは、かなり安定して吹けるようになっています。

そして次のステップでは、第2小節の最初の8分音符で一旦停止して、そこを引き伸ばすということにします。下の楽譜11Aです。

楽譜11

楽譜11Aの最後の8分音符の上についている記号はフェルマータfermataといって、英語で言えばstopという意味です。ここでフレーズが一旦停止します。今は一旦停止して長さを引き伸ばしてみましょう。そうすると楽譜11Bの後半のフレーズと全く同じだということがわかります。(念のために用語の解説をしておくと、フェルマータには引き伸ばすという意味はありません。そこで一旦収まる感じにするだけですぐに次に進む場合も少なくありません。一方、任意の長さに引き伸ばすという意味で使われることもあります。フェルマータはいろんな風に解釈されうる記号なのです)

2.5 リピート後の部分

楽譜10が安定してできていても楽譜11Aになると難航するという面もありましたが、4'35"あたりからは楽譜11Bの後半もできるようになって来たので、5'15"あたりからは、リピート記号の次に移りました。

楽譜12

4拍目から始まって、4123123という長さのフレーズがずっと続くという単純明快さです。それがず2フレーズずつ連なって、前半4小節、後半4小節という構成になり、前半後半とも最初のフレーズは同じです。まずは、それを把握して、まずaを練習する、次にbを練習する、それができたらabを続けて練習するという風に進めましょう。

このあたり、ランディさんは大変順調に進みましたが、意外と難しいのが、続けて吹くときにaの最後の付点2分音符の長さが十分に伸びなかったり、逆に急いだりとなりがちなところですね。フレーズが一旦少し収まって、次のフレーズの前に息継ぎする場合であっても、拍はずっと進み続けるということです。でも、これも数回やるうちにできるようになりました。

後半は、aの部分は前半と同じなので、後はcが吹けるようになればよいのです。そこでちょっと難航してしまいましたが、難航した状態から抜け出すことにも段々慣れてこられたのか11'10"あたりからはもうcが吹けるようになりました。でも、その直後「いきなり急に終わりたくなっちゃう曲だな」という違和感をおっしゃっていたので、難航の原因はそこにあったようです。このように、〈ここは次に進みたい〉〈ここから更に展開しそう〉〈段々収まっていきそう〉というように曲の流れを感じながら吹くのはとても大事です。この「従軍商人の歌」は、41234123という拍に収まる単純で決まった形の繰り返しで、意外な進行は全くないのですが、最後の4小節フレーズは、確かにaで始まって、次はどんなふうに展開するかなと思ったら何も展開しないでcで終わるというのが唐突に感じるのかもしれませんね。リピート後のabacという構成が〈始まる→続く→始まる→終わる〉というような至って単純な流れだけだということが捕まえられれば違和感は消えるのではないかと思います。いずれにしても、曲の流れを感じながら吹くというのはとても大事なので、そのせいでcでひっかかったとしても、構成が把握できれば筋道のはっきりした演奏になるはずです。(そういうことをレッスン中にしっかりお話できればよかったのですが、ちょっとしどろもどろだったので、改めて書きました。)

2.6 レッスン動画 (3/5)

では、レッスン動画 (3/5)をどうぞご覧ください。

3.0 「美しいイザベラ」

楽譜から曲を読み取るという練習、2曲進んだので、より譜読みが確実にできるように、そろそろリズムの基本練習に移ろうと思っていたところ、ランディさんが次の「美しいイザベラ」は簡単だとおっしゃるので、ちょっと吹いていただくことにしました。実は、これは次々に付点音形が出てくるので、難しいだろうと思っていたのです。そして、確かに付点4分音符が出てくるとリズムが取れなくなる面は多々あったものの、それでも全体の曲の表情をよく捉えた演奏になっていました。なので、そのまま細かいところを確認していけば大丈夫じゃないかと思い、この曲の練習をさらに続けていただきました。

3.1 部分に分けて練習

この曲は、下の楽譜13のように、前半は a1, a2の2つのフレーズから成り、後半は b1, b2の2つのフレーズから成ると見るのが良いでしょう。

楽譜13

そして、まず前半から練習していただきました。a1とa2のつなぎ目の付点音符のところでリズムが違っていたのですが、その前の第1小節3, 4拍目の付点はとても的確に取れていました。そこで、下の楽譜14のように付点音形のところだけ取り出して練習していただきました。

楽譜14

上のアとイは、リズムは同じなのですが、アはフレーズの途中なのに対して、イは、青いコンマで示したところに楽譜13のa1とa2のつなぎ目が来るので、フレーズの進行感はちょっと異なります。もちろん拍の進行は一定のままなのですが、青いコンマのところで息継ぎするとだいぶ感覚が異なってくるので、まずはアもイも息継ぎなしでやっていただきました。すると1段目通してすぐにスムーズに吹けるようになりました。付点音形にもだいぶ慣れてこられたようです。そこで、今度は、イの青いコンマのところで息継ぎしてやっていただいたところ、これもスムーズにできて、むしろ息を取ったほうがやりやすいとのことでした。下のレッスン動画 (4/5)で4'10"あたりからのところです。もちろんフレーズの分かれ目で息を取るとフレーズ感がはっきりして吹きやすくなりますが、タイミングが狂いやすいところでもあります。説明しそびれたのですが、息継ぎのところは、下の楽譜15のように8分休符が入っていると考えて吹けばよいです。休符前の音は十分テヌート(音価いっぱいに伸ばす)にする必要はあります。ここでは、ミーファーソーと上っていく感じも失わないようにするといいです。

楽譜15

つづいて、後半です。後半は楽譜13のb1とb2を吹いていただきました。b2だけ吹くというのは意外と難しいかもしれません。下の楽譜16は、b2だけ取り出したものですが、b2は4拍目裏から入るので、3拍目4拍目をしっかり数えて入ると良いでしょう。

楽譜16

3.2 レッスン動画 (4/5)

それではどうぞ、下のレッスン動画 (4/5)をご覧ください。ランディさんはb1, b2とも大きな困難なくできて、b1, b2の間で息継ぎしてリズムを崩さず続けて吹くというのもとてもスムーズにできるようになりました。7'20"あたりからです。(その後は、リズムの読み違えがあるとリカバーするのが大変なので、今の段階ではあまり予習しないでレッスン受ける方がいいですよなどと話をしています。)

3.3 骨組みを取り出す

さて、今回1曲目の「戦さの曲」のところで、旋律の核になる音に注目して、旋律を「幹」に「枝葉」がついているという風に見るということを少し書きました。時間の都合もあって、この「美しいイザベラ」については上のレッスン動画 (4/5)のみでレッスン終了としましたが、補足として、何が「幹」か、つまり骨組みとなるのはどんな旋律なのかを見ておきましょう。

楽譜17

1段目、第1小節の1,2,3拍目表はすべてド(c")です。第2小節の1,2,3拍目表はすべてレ(d")、第3小節の1,2,3拍目表はすべてミ(e")です。この曲はタイトルから察して恋の歌でしょうが、これらの音によって「戦さの曲」と同様、三三七拍子のような単純明快な流れを感じさせ、ドドドーミミミーソソソーと上って、第4小節1拍目のラ(a'')まで至ります。そして1段目最後の音レ(d'')に下ります。ラソファミレの隔たりは両端も数えて「5度」と呼びますが、5度の下行は最も安定感を感じさせる進行です。そして1段目は、最もざっくりと見れば、ドから始まってレに至る旋律です。

2段目は、1段目の終わりと同じレ(d'')で開始して、やはり1,2,3拍がすべてレです。そして2小節目以降、2分音符単位で見るとミーファーソーラーと上っていきます。そして最後の小節ではレからドに戻って終わります。2段目を最もざっくりと見るなら、レから始まってドで終わる旋律です。

楽譜17で赤丸を付けた旋律だけを取り出して、音符の長さを適宜引き伸ばして書くと、下の楽譜18のようになります。

楽譜18

骨組みの音を取り出すのは、簡単に判断できない場合もあり、そういうときには、何を骨組みとみなすかは演奏者の解釈によるということになるのですが、たくさんの音符からなる旋律は、より単純な旋律に音を加えたものだという見方は音楽史を通して一貫しているので、そういう見方に少しずつ慣れていってください。今は話半分で流していただく程度で構わないのですが、騙されたと思って、楽譜18の旋律を吹いてみてから最初の旋律を吹いてみてください。全体の大きな流れがしっかりしてくるように思いませんか?ただ、この核となる音を特に強調する必要はありませんし、むしろ強調して説明臭くいびつな演奏になるのは避けましょう。背後にそういう骨組みがあるということを無意識的にでも感じながら吹くと、迷いなく曲想を表現できるでしょうということです。

4 レッスン動画 (5/5) リズムの基本+次回に向けて

レッスン動画 (5/5) は、次回に向けてリズムの基本の話をしてから、第4回で苦労なさっていた「美しき町、リール」を少し吹いていただいています。早速ご覧ください。

最初にやっているリズムの基本練習は、第2回の「4 全音符を2分割していく」にアップしたPDFファイル「2. リズム1(アルト).pdf」の2ページ目最後のあたりです。これについては、第6回でしっかり練習していただきます。

また「美しき町、リール」は、格段に進歩されていましたね。特に第4回でやった最初の4小節は問題なくできるようになっていました。続く部分も、4小節ずつのフレーズ単位ではよく曲想を捉えている様子でした。あとは、フレーズとフレーズのつながりのあたりや細部のリズムのミスが解消すれば仕上がるだろう様子でした。そのあたりは、第6回で丁寧にやっていきます。

ランディさんが「なんか説教臭い曲!」とおっしゃっているのも面白いところで、確かに学校の校歌とかに類するような説教臭さを感じさせるところはあり、そう感じるのは曲想をしっかり捉えていらっしゃるということに他ならないと思います。

楽譜19

2番目のフレーズで、1番目のフレーズが変奏されてg''(ソ)が何回も繰り返されて高揚感がさらに高まります。それに続く3番目のフレーズは一転して静かになりますが、高揚した後に少し静かになると、厳かで襟を正す雰囲気になります。その辺も「説教臭い」といえばそうなのかもしれないですね。僕が「ありがち」と言ってしまっていますが、現代でもこういう曲想はあるよね!と思わせるようなものの原点はこういう曲にあると思っても良さそうです。ドレミファソしか出てきてないのに、そういうストーリーを感じさせる凄い曲だなあと僕は感じます。次回以降をどうぞお楽しみに。

それと、最後のあたりで「2重奏に編曲した楽譜をお渡ししますので」と僕が言っているのはこれです。お読みの皆様も2重奏のお仲間をお誘いなされば一層楽しんでいただけるはずです。下のパートも上のパートとそれほど難易度は変わらないかと思います。

それでは、次回をどうぞお楽しみに。



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