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ランディさんと始めるリコーダー 第4回

0 今回のレッスンについて

第4回レッスンは、2020年8月26日に再びZoomで行いました。連載全体は、マガジンからご覧ください。→ランディさんと始めるリコーダー

前回の記事の終わりあたりにも貼ったのですが、今回使用した教材は下の「3a. アルトハ長調1」です。

このPDFをご覧いただければわかる通り、出てくる音はc'', d'', e'' ,f'', g''(ドレミファソ)のみなので、音の動きは前回までの課題より易しいはずです。でも、知らない曲を楽譜から読み取って吹くということになりますから、楽譜を参考にしながら知っている曲を吹くというのより、だいぶ高度な段階といえます。楽譜を読むには、拍に乗ったリズムを読み取って体得して行くのが第一に重要なのですが、前回までのレッスンで、ランディさんはリズムについては大丈夫そうだと判断して、まず、音符の位置とc'', d'', e'' ,f'', g''の対応を覚えていただくことから始めることにしました。

1 練習 1, 2, 3, 4, 5, 6

レッスン動画 (1/8)は、だいぶ下ですが 1.6 の最後にあります。僕がレッスンで言っていることは、一般論的なことだけではなく、そのときのランディさんの演奏のみに対してのこともたくさん含みますので、まずは一般論としてのポイントを書いていきます。他の人のレッスン内容は、ご自分にも当てはまることもあれば当てはまらないこともあるかと思いますので。

以下、一つづつ説明しますが、どの練習にも通じる内容も多いです。ただ、説明を読んでから練習するとかえって難しく考えてしまうかもしれないので、まずは楽譜のみを見て、自分で少し練習した後に説明を読む方が良いかもしれません。

1.1 練習 1

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アルト用ですので、指は、c''(ド)が 0123, d''(レ)は 012 で、薬指を開閉することになります。薬指は動きにくい指ですが、開けるときには孔から2cm以上ぐらい離しましょう。開けるている指が孔に近いと音程に影響が出るのでよくありません。閉じるときは軽く叩くように、開けるときには跳ね上げるように機敏に動かしますが、このとき、薬指の上下に伴って、他の指や掌が動いてしまわないようにするのが良いです。手の小さい方は中指と薬指の間を広げるようにするといいですが、薬指以外も動いてしまったり機敏に指を動かすのが難しいようだとしても、今の段階ではあまり気にせず、先の目標として構いません。今はむしろ、無理して手を傷めないように気をつけましょう。

テンポは速くても遅くても構いませんが、どちらかというと落ち着いたゆっくりのテンポの方が良いです。慌てるのが禁物です。でも、慎重過ぎてブレーキを踏んでいるようなのもよくありません。慌てず、止まらずが常にポイントとなります。

それから息についてですが、c''とd''を良い音程で演奏するには、c''のときの息の量とd''のときの息の量は少し異なってきます。これに限らず、リコーダーでは音によってちょうど良い息の流量が変わってきます。大まかには、低い音は流量が小さく、高い音は流量が大きくなります。下のレッスン動画 (1/8) でも、僕がいろいろ言ってますが、はたで見ているだけでは、差が微妙すぎて独習する方にはとてもわかりずらいのではないかと思います。他人のレッスンを聴講するときには、そういうものなので、わからない点は気にせず、自分なりにできていると思えばそれで良いことにしてください。息の量と音程の関係は、これからも常に出てきますので、わかる機会が来たらそのときにわかれば十分です。今の段階では「練習 1 は超簡単!!」と思って次に進んでくださっても大丈夫です。

[レッスン動画 (1/8) で、練習 1 の音出しは2'05"あたりからです。]

1.2 練習 2

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ドレミレドーではなく、ドレファレドーですね。レ(d'')とファ(f'')の行き来は、左手人差し指1本を動かすだけです。ここでも指については、人差し指につられて中指がグラグラと動かないようにしましょう。テンポは、速くても遅くても良いですが、落ち着いた一定のテンポで、4分音符を吹くときと8分音符を吹くときでテンポが変わらないように、慌てたり立ち止まったりしない淀みない拍に乗りましょう。

息については、低い音は流量が小さく、高い音は流量が大きくなるわけですから、ドからファに向かって息を増やします。でも、音の立ち上がりが強いと、息の流れはかえって落ちてしまいがちなので、立ち上がりは常に柔らかくと思うと良いです。それから、2小節目、3小節目の長い音符は、音を止める瞬間まで息の流れをしっかり保ち、音を止めるときには、息は弱めないで、舌先を閉じて音を止めます。テーーーッの「ッ」で舌先が閉じるということです。他の管楽器の場合、舌先を閉じないで音を止める場合もあるようなのですが、リコーダーでは少しでも息を弱めると音高が下がってしまうので、そうならないようにするには、舌先を閉じて止めるのが必須です。

[レッスン動画 (1/8) で、練習 2 は4'35"あたりからです。]

1.3 練習 3

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息づかいは練習2と同様で、上行で始まるので、ドを柔らかく開始したらミに向かって息を増やしいきます。指も難しくないとは思いますが、楽器の支え方の問題で、中指が動きにくく感じる場合もあるかもしれません。第2回で書いたように、楽器の重さは下唇と右手親指で支えられ、通常は左手中指を押さえることで3点で安定させています。ところが、練習3では、ミ(e'')で左手中指を上げるので、表側の支えは中指に代わって人差し指が担うことになります。多くの人は無意識のうちにやってると思いますが、もし中指が動きにくいと感じるようなら、左手人差し指をしっかり押さえると思うと改善するはずです。何も難しさを感じないようなら、無意識のままで問題ありません。

[レッスン動画 (1/8) で、練習 3 は7'20"あたりからです。]

1.4 練習 4

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この練習での楽器の支えが基本です。左手中指が表側の支えとなって、楽器を安定させて、左手親指が自由に動くようにします。ここでも親指の動かし方は、閉じるときは軽く叩くように、開けるときには跳ね上げるように機敏にということになります。息についても、g''とf''の音色の違い(g''の方はスッキリしていて、f''の方は少しシットリしている)を感じながらやるといいかもしれません。でもレッスン動画の方では、特に何も言わずに通過していますね(笑)。さっと通過しようとするとタイミングもやや急ぎ気味になってしまいがちなので、落ち着いたテンポをキープしましょう。

[レッスン動画 (1/8) で、練習 4 は8'40"あたりからです。]

1.5 練習 5

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この辺りから、指を動きもちょっと難しくなってきます。繰り返し書いてきたように、左手中指が表側の支えの役割を担うのですが、f''(ファ)からe''(ミ)に変わるとき、中指が離れ、同時に人差し指が閉じて、表側の支えが交代するのです。このとき一瞬楽器の支えが不安定になるように感じるかもしれません。右手小指で足部管上端の出っ張っているあたりを触っておくと、それが表側の支えとなって、左手の指を安定して動かせます(これについても第2回をご覧ください)。

いずれにしても、片方の指を離すと同時にもう片方の指を閉じないといけないので、指の動きは機敏でなければなりません。そのためには、これも繰り返し書いているように、閉じるときは軽く叩くように、開けるときには跳ね上げるように動かすのが良いです。音を出さずに中指と人差し指の交代だけ練習してみても良いかもしれません。機敏に動かせるようになれば、右手小指は楽器から離したままでも不安定にならずに吹けるようになるでしょう。

[レッスン動画 (1/8) で、練習 5 は9'20"あたりからです。]

1.6 練習 6

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指の動きはこれが一番難しいですね。難しさの原因の一つは、練習4と同じく、表側の支えが中指と人差し指で交代することなので、右手小指を足部間の上端あたりに置くとやりやすくなります。それと、もう一つの難しさは、人差し指と親指を同時に閉じる、同時に離すという点です。のんびりと動かすと時間差も大きくなってしまうので、できるだけ素早く機敏に動かせるように練習しましょう。そのためには、やはり繰り返して書いているように、閉じるときは叩くように、開けるときには跳ね上げるようにというのがコツになります。具体的には、レッスン動画で僕がやって見せている動きを参考にしてください。手首や掌はあまり動かさずに、指だけが速く動くようにしたいものです。

それから、一見矛盾するようですが、指を速く動かす練習をするときにはテンポは遅い方が良いのです。「速く」とは、g'’の指とe''の指が瞬時に切り替わるということです。この切り替えの速さを練習するには、テンポは十分に落ち着いたテンポにして、切り替えの瞬間に集中するのが良いです。下のレッスン動画では、ランディさんはよく指が動いていたので、3、4小節目で練習しましょうということにしていますが、1、2小節目を丁寧にやっても良かったかもしれません。指を動かす速さは、ゆっくりのテンポでも速いテンポでも変わらないのです(テンポが速いときには指を動かす頻度が高いということになります)。このことは、今後、速く指を動かす練習をするときにわかっていると無駄な練習を避けられます。

[レッスン動画 (1/8) で、練習 6 は10'35"あたりからです。]

以上、各練習について、一般的なポイントになりうることを詳しすぎるぐらいに(?)書きましたが、ざっくり全体を吹いてみて「細かいところはともかく、だいたいできるよ」とお感じであれば、先に進んで大丈夫です。ただ、ささっと通るだけではなく、それぞれの練習を丁寧に何度か繰り返してみると良いと思います。こういうシンプルな練習でも、何回か繰り返すうちに、ご自分が出す音の色々な点に気づいてくるのではないかと思います。今はそれだけで十分です。さて、ランディさんはどんな様子で練習を進められたでしょうか。どうぞ、ご覧ください。

2 練習 7, 8

ここで段落を改めるほどのことではないのですが、練習 7, 8 になると、指よりも息づかいの方が重要になって来ます。これも、まずは一般的なポイントとなることを書いておきますが、考え過ぎにならないように、まず楽譜を見てご自分で吹いてみられてから解説を読む方がよいかもしれません。

2.1 練習 7

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指よりも息と書いたばかりですが、これは、指もなかなか大変ではあります。というのは、いっぺんにたくさんの指を動かさないといけないからです。何本もの指が時間差なく同時に閉じたり開いたりするには、叩いたり跳ねあげたり、機敏な動きが必要です。練習のコツは練習 6 と同様で、テンポはゆっくり目で良いので、運指の切り替わりの一瞬が速くなるようにします。キーの付いた管楽器と違って、リコーダーのように指で直接孔を塞ぐ楽器では、閉じる瞬間、開ける瞬間で指の動きができるだけ速くなるのが良いのです。そのためには、指の動きはある程度大きくするのが良いです。練習 1 の説明で、開けている指は孔から2cm以上ぐらい離すと書きましたが、そのように数cmの距離から叩く、数cmの距離まで離すという風にする方が、開閉の瞬間の速さは速くなります。ただ、手首や掌は動かないようにしましょう。具体的には、2.2の後ろの方にあるレッスン動画 (2/8) をご覧ください。

息については、これも練習 1 のところで書いたのと同様、ここでもc''とg''を良い音程で鳴らすためには、c''のときの息の量とg''は違ってくるのです。楽器にもよるのですが、高い音の方が息をたくさん流すのが良いです。c''は落ち着いた息、g''はしっかりとした息という感じではあるのですが、どの程度が良いのかは言葉ではわからないでしょう。ぜひ動画をご覧になって参考にしてください。ただ、僕が吹くのは説明を意識しすぎて、聴き返すとg''の方がところどころ強すぎたりしてしまっています(すみません)。息に差があるというのをわかっていただければ結構です。お仲間がいらっしゃるのであれば、一人はドの音をずっと同じ高さで伸ばして、もう一人がそれに合わせてソードーソードーと吹いて、ハモるようにするという練習もやってみられるといいです。とはいえ、最初は「良い音程といわれてもさっぱりわからない」と感じてしまうのも無理ありません。いずれアンサンブルがやれるようになってから分かっていけば良いと考えて、今はあまり気にせず進めて行くということでも構わないと思います。

2.2 練習 8

そういうわけで、c''とg''の息の流量にどのぐらいの差があれば良いのかわからなくても今は気にしなくても良いですが、低い音よりも高い音の方が息の量は増えるということはわかっていただけるでしょうか。練習 8 の楽譜にクレッシェンドの記号を書き込みました。

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右が広がるヘアピンのような記号がクレッシェンドで、音量が大きくなることを表します。良い音程で吹くためには高い方に向かって息を増やして行くので、音量も増えることになります。音が高くなることを上行(じょうこう)といいますが、リコーダーでは基本的に上行はクレッシェンドです。楽器の特性上そうなるので、まずは素直にそれに従った息づかいを身につけて行くことを目指しましょう。

肺はゴム風船のような性質があって、自然に呼吸しているときは、息を吐くごとに圧力が弱まって行きます。なので、息を増やすには、弱まらないように、しっかり増やすと意識することが必要です。始まりのc''は、これから息を増やして行くわけなので、弱く開始します。クレッシェンドの開始は弱くです。そして、2分音符のg''に向かってというより、2小節目の最初のg''に向かってじわじわと息を増やして行くのが良いでしょう。それから、各音の開始でテと発音するのが鋭くならないようにというのも注意するといいでしょう。立ち上がりの強さでクレッシェンドするのではなく、息の流れを太くして行きます。そろそろ、説明を読むだけでは訳がわからないという感じになって来たかもしれませんね。下にあるレッスン動画 (2/8)をぜひご覧ください。練習 8 は、4'10"あたりからです。

動画の前に2小節目以降の説明も書いておきます。第2小節は、下行(かこう)なので息の量は減らして行くことになるのですが、先ほど自然な呼吸では息を吐くごとに圧力が弱まって行くと書いた通り、息の量はあまり減らすことに意識を向けなくて大丈夫です。むしろ、減りすぎないように、下行もしっかり息の流れを保つという風に意識する方がうまく行きます。特に裏の音符で息が落ちないようにします。また、終わりのc''をの持続でも息が落ちていかないようにしましょう。第3, 4小節は第1, 2小節を短縮した形ですが、最高音のg''が伸びのある音になるように、その次のf''に向かって息を増やして行くぐらいのつもりが良いです。この辺りは、動画ではジェスチャーも交えて説明しています。

これに続く練習 9, 10, 11 は、c'', d'', e'', f'', g'' の音のつながりのいろいろを並べたものですが、音のつながりの練習は実際の曲の中でやって行けば良さそうなので、今回は省略して、最初に載せたPDFファイルの最後の曲に進むことにしました。

3 「美しき町、リール」最初の4小節

この曲は、18世紀初頭にアムステルダムで出版された「古今オランダ農民の歌と踊り Oude en Nieuwe Hollantse Borenlieties en Contredansen」という996曲もの旋律を集めた曲集から取っています。18世紀初頭の時点で、当時知られていた過去150年間ぐらいのいろいろな旋律を集めたもので、オランダ農民となってはいますが、イタリア、フランス、イギリスなど各地のいろいろな旋律が集められ、宮廷音楽の旋律もたくさん入っています。リコーダーが活躍していた時代の様々なスタイルの旋律を楽しむのに最適な曲集なので、僕は愛用しています。HBCはこの曲集の略称で、その336番目の曲です。元の楽譜はこんなのです。

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ランディさんは初めのときに、バロック音楽が演奏できるようになりたいとおっしゃっていたのですが、これももちろん立派なバロック音楽です。僕のCD〈オランダバロックの愉悦〉にもHBCからの曲をいくつか収録していますよ。

さて、この曲、ドからソに上っていく始まりなので、練習 8 の直後にやるのに最適なのですが、意外と難航して、最初の4小節だけで1時間かかってしまいました。理由の一つは、今回タイマーを忘れてしまって(笑)、気づいたらすでにだいぶ時間が経ってしまっていたというのもあります。(コロナ禍以来、僕のレッスンはタイマーを使って25分おきに換気するようにしていて、それが集中力を保つためにもちょうど良く、オンラインレッスンでもそうしているのです。)初心者のうちに合計90分のレッスンというのは、集中力を保ちにくかったかもしれませんね。あとやはり、曲を自分で読み取っていただく前に、リズムの基本練習はやっておくのが良かったようです。そういう僕の反省点もありますが、そこも含めてレッスンのリアルを公開しようという意図で始めた連載なので、お時間ある方はどうぞご覧ください。ご自分で吹いてみられて、最初の4小節は問題なく吹けるとお思いの方は、以下の解説だけざっと斜め読みで、第5回の記事をお待ちいただくということでも良いかと思います。

3.1 前半と後半

この曲、「美しき町、リール」という日本語タイトルをつけてみましたが、フランスとベルギーの国境に近いリールの町を讃える歌なのではないかと想像できます。ドドレミファソーと上って、2小節目でソを繰り返すのが高らかな感じがしますね。

楽譜1

この4小節を前半後半に分けるとすると、第2小節の付点4分音符のg''までを前半と見て、その付点4分音符g''から最後のe''までを後半と見れば、g''が繰り返す高らかな感じを活かすことができるでしょう。このように、フレーズを分け難いときには、前のフレーズの最後の音と次のフレーズの最初の音が重なるという見方をすると良いのです。とはいえ、もちろん、2分音符のg''までを前半と見る解釈もありえますし、とりあえず、ランディさんには、点線のカッコで示した2分音符までのフレーズを吹いていただきました。

4分音符は1小節に4個あるはずですが、最初のドは1個だけです。これは、その前の4分休符3個が省かれていると見ることができます。このような始まりを弱起(じゃっき)というのですが、日本では、ドイツ語のアウフタクト Auftakt と呼ぶことが多いので、そっちで覚えておくて良いかと思います。英語ではupbeatに当たる言葉です。アウフタクトのところは小節番号には数えず、その次のドが1小節目の1拍目でdownbeatになります。このようなupからdownに向かう拍の感じかたは大事なので、まずそこだけの練習をやっていただきました。指揮するなら、upで手を上げてdownで手を下げます。

楽譜2

1小節目のドの上にある短い横線はテヌートの記号です。テヌートは音価(楽譜上の音符の長さ)いっぱいに音を保つという意味で、この場合は4分音符ですから、1小節の長さの4分の1いっぱいに伸ばすということになります。楽譜2の練習では、4分の1以上に伸ばすぐらいでも良いです。

この拍の感じ方を踏まえて、2小節目の最初の2分音符まで進んでみましょう。リズムは違いますが、息の使い方は練習 8 の始まりと同様です。

楽譜3

柔らかく開始して、長いソの終端まで少しずつ息の量を太くして行く感じです。クレッシェンドと思っていても、最後のソのみが強くて途中はあまりクレッシェンドになっていないという風にもなりがちなのですが、ド<レ<ミ<ファ<ソのように息の量を増やして行きます。特に最後の2分音符に対するupに当たるファのあたりで、十分に息の量が増えているようにしましょう。そうすると最後のソのみが強いのではなく、だんだんと広がってスムーズに頂点に達する感じになります。各音の立ち上がりが鋭くならないようにするというのも練習 8 と同様です。

楽譜4

続いて、後半を練習しましょう。後半最初の付点4分音符g''は、4小節全体のフレーズの中でもっとも高揚する音ですから、十分に伸びのある音が良いです。楽譜4ではこの音にテヌート記号をつけました。その下にある数字で、4分の4拍子で数えたときの拍を示しました。この付点4分音符は、3拍目で開始して4拍目を過ぎるまでの伸ばします。つまり、この音符で3拍目、4拍目の2拍を数えることになります。多くの人は付点4音符から次の8分音符に進むとき急ぎがちなので、落ち着いて2拍数えるまでのばしましょう。付点4分音符はおよそ2分音符というぐらいに感じて吹くと良いです。最後レーミミーと終わるときの付点4分音符d''でも拍の感じ方は同様です。

楽譜4の部分、ランディさんの練習開始は下の動画の4'30''ぐらいからで、最初はリズムが取れなくて苦労されていましたが、9'40''からの演奏では上手く吹けるようになりました。

3.2 前半と後半をつなげる

楽譜1の前半(破線カッコの方)と後半を分けた練習が完了したところで、前半後半を続けた4小節全体を吹いていただくことにしたのですが、これが意外と難しかったようです。通して吹こうとするとリズムがわからなくなるという様子が伺えたのは、楽譜からリズムを読み取る練習をやる前に曲の読み取りを始めてしまったからなのでしょう。特に前半後半がつながる第2小節で拍を失って、3拍目の付点4分音符に入るのが大幅に遅れるという様子でした。そこで、楽譜1の前半を実線カッコのように、付点4分音符までと捉えてやっていただくことにしました。つまり、下の楽譜5の部分です。

楽譜5

意外と2小節目の拍がわかりにくいようだったので、2小節目だけを練習していただくなどして、下のレッスン動画 (4/8)の6'35"あたりからの演奏では、問題なくできるようになっています。ただ、それを再びやろうとしても上手くいかないという状態が続いてしまいました。実は、タイマーを入れ忘れたため、この時点でレッスン開始から50分ぐらい経過していて、集中力が続かなくなっていたのかもしれませんね。

3.3 メトロノームを使ってやってみる

リズムがなかなか取れないとき、直接の対面レッスンであれば、僕が横で拍を打ったり、歌ったりすることで解決することは多いのですが、Zoomを使った遠隔レッスンだと通信のタイムラグがあるため、それができません。そこで、メトロノームを使っていただくことにしました。初心者の方の場合、メトロノームに縛られながら演奏する感覚に陥ってしまうとかえってタイミングがおかしくなったりもするのですが、1小節か2小節のみというように範囲を絞ると上手く使えるかと思います。

下の動画 (5/8)で、0'30"あたりで僕が「25分のタイマーを入れるのを忘れて」などといっています(笑)。にも関わらず、改めて休憩を入れることなく進めてしまいました。この辺りも僕の反省点ですが、そのあたりもリアルなレッスンの1場面としてノーカットで公開します。ランディさんのメトロノームの設定が4分の3拍子になっていたことに僕が気づかないままというような失敗もありましたが、6'45''あたりから始まる演奏では、楽譜5のフレーズをメトロノームの拍に合わせて吹けるようになって来ました。

3.4 分割して統合する

楽譜5の部分が拍通りにできるようになって来たので、もう一度4小節続けて吹いてみていただきました。すると、前半(楽譜5)のみ後半(楽譜4)だけをやると上手くできるようになっていても、それを続けてやると、前半も後半も練習したのと違うリズムで吹いてしまうとう状態になってしまいました。「分割して練習してしまうと、頭の中で統合できません」とのことでした。確かに、分割してできていれば、続けてもできるはずだということにはならない場面はあります。なので、別々に練習するだけでなく、前半後半をつなぐ第2小節の練習をやるというようなことも必要になるわけですが、おそらくランディさんがおっしゃるのはまた別の話なのだと思います。そこが僕の方で把握できず、逆に、もっと細かく分割するという方向にレッスンを進めました。統合すると崩れるのは、部分がまだしっかり把握できていないからだろうから、部分練習をさらに徹底させれば続けても崩れにくくなるだろうという考えです。

ランディさんは、特に後半になるとリズムがわからなくなる様子だったので、後半を次のように3つに分けました。

楽譜6

ここまで分解してあとで統合できるかどうかはわからないにせよ、まずは部分が確実にできるようになっていただきたいというところです。そして、AとCは、ミに向かって進リズムが同じなので、その「同じ」をわかっていただくことにしました。全体の中で位置が異なって、音の高さも異なっていても、リズムは「同じ」です。楽譜が読めるようになるためには、楽譜上ではどんなものが「同じ」になるか把握するのは不可欠に思えます。AとCでリズムが同じ、ミに向かって進むのが同じ次のようにBの途中を省いて練習すると良いのではないかと思いました。

楽譜7

下の動画 (6/8) 4'15あたりから、何度か楽譜7のような抜粋を何度か吹いていただいて、この「始まり」と「終わり」はだいぶ確実になってきた様子でした。これができて、つなぎになる楽譜6のBもできていれば、続けてやってももう大丈夫そうではあるのですが、かえって混乱する可能性も感じつつ、楽譜6の A, B, Cを休符を隔てて繋げる練習(楽譜8)をやっていただきました。

楽譜8

楽譜8もできるようになったので、続けて楽譜6の1段目のフレーズをやっていただくことにしました。その結果、やはり、楽譜6のA, Cのような付点のついたリズムと、Bのように同じ音価で進むリズムを吹き分けるのが難しいのだということがわかりました。それでも、11:40あたり以降は続けて楽譜通りに吹けるようになってきました。休憩も入れないまま長時間になってしまっていて、だいぶお疲れだったとは思いますが、それでもなんとかできるところまで到達されました。

3.5 4小節続けて吹く

いよいよ、再び4小節続けて吹く練習に戻ります。ここまでくると、細かいリズムの間違いがあったとしても、大事なことは、穏かに始めながら、2小節目でふたつのソが鳴ってところまで高揚させて、そこから最後に向かって落ち着いていくという全体の流れです。ふたつソの間で息を取るのは問題ないですが、休憩する感じにしないで、高揚感が連続するように吹きたいところです。1つ目のソを頂点と思うより、2つ目の付点4分音符のソから次の8分音符のファに移るあたりに頂点を持ってくるぐらいのつもりが良いです。

楽譜9

下のレッスン動画 (7/8)の2'30"あたりからの演奏では、息が足りずに急ぐ様子も伺えたにせよ、続けてもだいぶ吹けるようになってきました。その調子であと数回練習すればできるようになると思ったのですが、そこから、再びリズムを失ってしまい、前半も後半も吹けなくなってしまいました。でも、その後もしばらく練習を続けて、少しフレーズ感が戻って来た様子にはなって来たのですが、だいぶ集中力も落ちて来たと思われ、結局4小節続けて福というのは先の課題として、今回はここまでとしました。やはり、知らない曲を楽譜から読み取って演奏するというのは、それだけ難しいことなのだと思います。

でも、ご安心ください!!第5回目のレッスンも9月9日に実施済みなのですが、ランディさんの楽譜の読み取りが断然向上していました。皆さんも、全然うまくできないときがあっても、時間をおいて、再挑戦してみてください。下のレッスン動画は、上手くいかなくてつらいところが多く含まれてはいるのですが、たまにはそういうレッスンになってしまうこともあるということを含めてカットせずに公開することにします。

3.6 ランディさんの感想

このレッスンを終えて、ランディさんの方も記事として感想を書いてくださっています。こちらもぜひお読みください。
「恋するリコーダー」本村睦幸さんからリコーダーを教えてもらう (10)
ゲシュタルト崩壊

4 最後にSTELLA SPLENDENS

そして最後に、第3回でやったStella splendensを吹いてくださいました。

途中、少しつっかえるところはまだあるものの、全体としては大変よく曲想を捉えた演奏になっていて、前回のレッスン後の練習ぶりが伺えました。こんな風に、お気に入りの曲が出てくると、それを折に触れて吹いて楽しんでいるうちに、どんどん上達して行くことと思います。

(予告)第5回の楽譜

Stella splendensの後のお話で、ランディさんがおっしゃっていたのは、あるとハ長調の2ページ目にある曲の方が「美しき町、リール」よりも簡単だったとのことでした。この2ページ目のファイルは、次の「3b. アルト ハ長調2.pdf」になります。

先ほども書いたように、第5回レッスンはすでに完了しているのですが、確かにおっしゃる通り、この2ページ目の方がずっと順調に進み、楽譜から曲を自分で読み取って吹くということに次々と成功されることとなりました!第5回をどうぞお楽しみに。


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