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ランディさんと始めるリコーダー 第6回

0. ハッピーバースデー

先日は、ランディさんの誕生日だったそうで、そこでリコーダー演奏を披露されたとのこと。そして、湯河原でヨガを教えていらっしゃるダイスケ先生も、この連載とともにリコーダーを独習で始められているそうで、デュオのデビューでもあったそうです。着々と楽しみを広げていらして素晴らしいです。ランディさんには、この誕生日に向けて、ハッピーバースデーの歌をソプラノリコーダーとアルトリコーダーの2重奏にしたのをお渡ししていましたので、せっかくなので、ここにも載せておきます。

第6小節3拍目に出てくるソプラノの f''' の運指は、イギリス式(バロック式)では、φ12346です。アルトの方もソプラノと同様に平易な旋律にしていますので、リコーダーを始めて間もない方でも楽しんでいただけるのではないかと思います。ぜひどなたかの誕生会で披露してみてください。

1 4分の4拍子の基礎

1.1 楽譜と第2回での内容

さて、第6回のレッスンは、2020年9月22日に行いました。ランディさんもだいぶ楽譜の読み取りに慣れて来られて、第5回では一気に新しい曲3曲進みましたが、リズムの読み取りに確信が持てないところがあったので、リズムの基礎練習に戻ることにしました。使ったのは、第2回の「全音符を2分割していく」のところでダウンロードしていただいた「2. リズム1(アルト).pdf」の2ページ目です。念のためここにも改めて上げておきます。

第2回でこれの1ページ目をやったとき、C のような形の拍子記号は、本来、全音符を1拍として、それが次々に2分割されて細かい音符になっていくという意味だという話をしました。でも、これを実際に笛を吹いて音にするのは、かなり難しかったようです。全音符1拍というゆったりとした拍を感じ続けるのは、相当な慣れが必要なのでしょう。また、笛を吹いてリズムを取るというのも難しさの原因だったと思うので、今回は笛は持たずに手拍子を打ち、口でリズムを唱えることにします。リズムを唱えるのは、リコーダーでタンギングして息を流すのと同様、テーテーのように発音するのが良いと思います。

楽譜の読み方に慣れている方は、ここでの練習は易しすぎるとお思いでしょうし、以下の説明もまどろっこしく感じるかもしれませんが、このような基礎の基礎に戻って拍の感覚を安定させる練習は、どんな段階でも有効に働くと思います。

1.2 4分の4拍子とは

4分の4拍子というのは、全音符を4分割した4分音符を1拍として拍を取るということです。そうすると全音符は4拍になります。上のPDFファイル2ページ目に乗せた順番とは前後しますが、4分の4拍子のところ3段目左が、4分音符が4つ並んだリズムになっています。

下向きの矢印が拍を表します。拍は手を打って取れば良いのですが、机や膝を打って取ることもできます。机を打つときの手の動きは、下に降ろして打ちますから、下向きの矢印にします。このようにして、2小節目のように長い音符や休符が来ても、1小節に4拍を打ち続けます。リコーダーを吹いてるように、テーテーテーテー:||:テーー。。|| と唱えるといいです。楽譜ではg''(ソ)の音で書いていますが、今は音の高さはなんでもいいです。一定の拍に乗って発音するということだけが重要です。テンポもやりやすいテンポでいいです。

1.3 4分の4拍子の基礎的なリズム練習

それでは、PDFファイル2ページ目の最初に戻りましょう。4分の4拍子では、全音符は4拍ということになります。

全音符は4拍数えるのですから、1234と4拍目まで数えるまでは伸ばすのが原則です。4まで数えたら、適当なところで音を止めて構いません。リボンの図で示してみました。白いところが音が鳴ってるところ、黒いところが音が鳴ってないところです。楽譜での音符の位置は時間通りの等間隔ではないので、2小節目の拍の数字は楽譜の方とずれていますが、だいたいお分かりでしょうか。2小節目も2分音符は2数えるまで伸ばし、2数えたら適当なところで止めて良いということになります。結果的に、1小節目の全音符から次の音に入るまでに少し無音の状態があるわけです。このように、大抵の場合は、音符と音符の間には無音の隙間があります。どの程度に隙間を開けるかは、曲をやるときフレーズをどう表現したいかによって変わって来ます。隙間が開かないように吹くということももちろんあります。今はシンプルなリズム練習なので隙間は適当で構いません。このように、少し厳密に説明するとかえって訳がわからなくなったかもしれませんね。「4分の4拍子での全音符は4数えるまでは伸ばす。」ということだけ理解していただければ、それで十分です。

2分音符は4分の4拍子では2拍の長さになります。2拍数えるまでは伸ばして適当なところで止めます。さっきと同様、音と音の間の隙間は適当で構いません。

全音符や2分音符のような長めの音符が十分の伸ばしきれないという風に陥りがちなので、リボンを図示して説明しましたが、あまり厳密に考えすぎてもかえって拍に乗りにくくなるかもしれません。「4分の4拍子での全音符は4数えるまでは伸ばす。」というのと同様、「4分の4拍子での2分音符は2拍目を数えるまでは伸ばす。」という程度の認識で十分です。以下はリボンの図示は省きます。

4分音符単位の拍で、2分音符は2拍数えるまで伸ばすということがわかれば、次の楽譜4は難しくないとは思います。でも、長い音符の間の拍が急いでしまったり、手で打つ拍とリズムが一致してしまって2拍目が打てなかったりということも起こりがちです。手では、落ち着いて一定の拍を打ち続け、急いだり滞ったりしないようにします。また、リピートを何回も繰り返して、拍に乗ったリズムを楽しむ感覚になれるといいです。

さて、次は多くの方が苦手の付点音符です。そもそも付点って何?と思っている方もいらっしゃるでしょう。音符にくっついている点は、その前に書かれた音符の半分長さを意味して、その分だけ音価が長くなります。

つまり、付点2分音符は、4分の4拍子では3拍になります。

最初の付点2分音符は、3拍目を打つまでは伸ばします。それに続く、4拍目と次の1拍目のタイミングもよどみなく一定を保つようにします。このように4分音符単位の拍を手で打ちながらであれば、このリズムを取るのも難しくはないと思いますが、それでも、拍のタイミングが慌てたり滞ったりということも起こりがちなので、揺るぎなく一定の拍を打ち続けるということに注意を向けましょう。これも、何度もリピートして練習するのがいいでしょう。

次の楽譜6のリズムは、見た目は楽譜4のリズムと似ていますが、1, 2, 3と3拍続けて子音(t)を発音したあと4拍目で発音しないで伸ばすというのがちょっと肩透かしのような感覚になるかもしれませんね。そのため、4拍目の拍を手で打ちそこなったり、それに続く1拍目のタイミングが不安定になったりということが起こりやすいように思います。ここでももちろん、手で打つ拍は、揺るぎなく一定に打ち続けないといけません。

次の楽譜7A, Bのリズムは、初歩の段階の曲にはあまり出てこないのですが、ここまで練習を進めて来たら難しくはないのではないかと思います。もう少し進んだら、もちろん曲の中にも出てきます。

付点2分音符では3拍数える、2分音符では2拍数えるということではあるのですが、ちょっとややこしいリズムでは、何拍目に発音点が来るか?という見方をするとよいです。発音点というのは音符の開始のタイミングのことで、テーテーのように発音するなら、子音 t を発音する瞬間が発音点です。

楽譜7Aの第1小節では、1拍目と2拍目に発音点が来て、3拍目と4拍目では伸ばしっぱなしで、続く第2小節(あるいはリピートの第1小節)の1拍目で再び発音点が来ます。手で拍を打つうちに、いま何拍目だっけ?とならないように、1, 2, 3, 4, 1, ..と数えなければなりませんね。

楽譜7Bの第1小節では、1拍目と2拍目に発音点が来て、3拍目では伸ばしっぱなし、次の4拍目で再び発音点が来て、続く第2小節(あるいはリピートの第1小節)の1拍目でももちろん発音点が来ます。このように、それぞれの音符を何拍伸ばすかというより、発音点が何拍目に来るかと考えて、1, 2, 3, 4, 1..という数え方はずっと同じように繰り返すのがよいでしょう。

1.4 レッスン動画 (1/5)

ランディさんには上のような説明をしそびれたまま進んだところが多々ありますが、4分音符を1拍にすると、特に困難もなく進みました。お読みの皆様も「このぐらいは簡単!」とお思いならよいのですが、それでも、拍が急いだり滞ったりということがないように、しっかり練習しておく意義はあるかと思います。

2 2分の2拍子の基礎

2.1 2分の2拍子とは

2分の2拍子は、全音符を2等分にした2分音符単位で拍を打ちます。すると、1小節が2拍ということになります。机や膝を打って拍を取るとすれば、そのとき手は下に動くことになりますから、下向きの矢印でこの拍を表すことにします。ダウンロードしていただいたPDFファイル2ページ目の真ん中あたり、2分の2拍子の初めの2つは次のようになります。

ただ、拍を打つ間隔がまばらだと、ちょっと安定感に欠けるような気分になるかもしれません。なので、手を下ろして机や膝を打つ拍だけでなく、その手を上に上げる拍も意識してみてください。手を叩くときには、手を叩く拍と手を離す拍を意識します。楽譜に書き入れると次の楽譜9のようになります。

日本語だと、手を下に下ろす拍は下拍(かはく)、手を上に上げる拍は上拍(じょうはく)と呼びますが、演奏のリハーサルなどではあまりそういう言い方はせず、下拍はdownbeat、上拍はupbeatと英語で呼ぶか、あるいはもっとカジュアルには、下拍の方を、上拍の方をと呼ぶことが多いように思います。表・裏については第2回でも書いたのですが、等音価の音符が並ぶときに拍の上の音を表として、交互に表と裏が来ると捉えるなど、いろいろな場面で出てきます。

楽譜9に赤い字で書きましたが、下拍の方は 1, 2 と数で数えて、上拍の方は「と」と数えるとよいです。ただ、日本語の語感で「いちと、にと、いちと、にと、」みたいに感じてしまうと、「と」のタイミングが早くなって、「と」から次の下拍に向かうタイミングがよどみがちです。特に初心者の方はよくそうなります。それぞれの拍の瞬間を意識して「いっ・とっ・にっ・とっ」のようにすべて等間隔になるように数えないといけません。

さて、楽譜9は(楽譜8も)、4分の4拍子のところの最初の2つと音符は全く同じです。また「いっ・にっ・さん・しっ」 と数えるのと「いっ・とっ・にっ・とっ」と数えるのは何が違うの?と疑問に思われるのは当然です。でも実際、下拍で机を打って上拍で手を上げる(あるいは、下拍で手を叩いて上拍で手を離す)という風に拍を取りながら、リズムを唱えてみれば、出てくる音が物理的に同じであるとしても、拍に乗る感覚が違うということは感じていただけると思います。このような拍に乗る感覚の違いは、曲を演奏するときの微妙な「ノリ」の違いとして現れてきたりします。最初は何のことだかとてもわかりにくいと思いますが、ひとまずは、このように手で拍を取りながら口でリズムを唱えるという風に練習してみてください。

2.2 2分の2拍子の基礎的なリズム練習

次の楽譜10も、4分の4拍子の楽譜1と音符は同じで、拍の打ち方が違うだけです。ダウンロードしていただいたPDFファイルと順番が前後してしまいますが、まずは、この拍の打ち方で4分音符だけのリズムを取ってみましょう。

繰り返しになりますが、机を叩く場合は1と2のところで叩き、「と」のところでは叩いた手を上に上げます。手を叩く場合は「と」のところでは両手を離すことになります。頭の中で「1と2と」と数えるとよいのですが、先程も書いたように、多くの人は「と」のタイミングがわずかに早くなりがちなので、1, 2(表)ではじっくり時間をかけて、「と」(裏)から次の表へは淀みなく向かって行くように感じるとよいです。「と」が拍の進行を促すような感覚です。このあたり、言葉で説明しても訳がわからないだろうとは思いますが、「いっ・とっ・にっ・とっ」がすべて等間隔で安定してキープできるような感覚が得られるといいです。そのような等間隔の拍に乗って、楽譜10のリズムを口で唱えてみてください。

それからもう一つ重要なことは、下拍か上拍かということと音の強弱は無関係ということです。下拍のことを強拍、上拍のことを弱拍と呼んだりすることもあって、誤解を招きやすいのですが、強拍弱拍という言葉遣いは便宜的なもので、実際の音の強弱は、曲の中での表現によって千差万別です。強拍弱拍という意識があると上拍(=弱拍=裏)の方が弱くなってしまう傾向は多くの方に見られるのですが、そのため、僕が生徒さんの前で歌ったりするときには上拍(=弱拍=裏)の方を強く強調してしまうこともしょっちゅうあります。でも、今のリズム練習としては、音の強弱が拍に影響されないように進めるのが良いです。

他の練習も一つずつ見ていきましょう。リズムの練習では、発音点(音符の開始のタイミング)がどこにあるかが重要です。以下、音符の開始を「発音」と呼ぶことにします。

楽譜11のリズムでは、1拍目表で発音して、1拍目裏ではそのまま伸ばし、2拍目表、2拍目裏ではともに発音、そしてそれに続く1拍目でも発音ということになります。何度もリピートして練習するのをおすすめします。音としては4分の4表紙の場合(楽譜6)と同じはずですし、表と裏で音の強弱の差があるわけではないですが、拍の打ち方に下上の差があるだけで「ノリよく」なった気がしないでしょうか。こういうシンプルなリズムでも、リズムに乗るだけで楽しいと感じられるようになれば良いです。

楽譜12のリズムは、1拍目表で発音して、1拍目裏、2拍目表でそのまま伸ばし、2拍目裏で発音、それに続く1拍目でも発音ということになります。楽譜11との違いは、2拍目表で発音しないで伸ばすということのみです。表で発音しないで、その次の裏で発音するというのが掴みづらいためか、音楽経験の長い人でも2拍目裏のタイミングが不安定になってしまう場合は少なくありません。かと言って4分音符単位でメトロノームに合わせても2拍子の感じ方が損なわれるので、自分の感覚での「いっ・とっ・にっ・とっ」が等間隔になっていくように、長期的に折に触れて練習するといいです。もちろん、楽譜10や楽譜11のリズムとも密接に関連していますので、一定の拍を止めずに楽譜10, 11, 12 を任意の順番で続けるというような練習も効果的だと思います。

あと、これは笑い話で流していただいてもいいような、僕の思い込みなのですが、人間が拍に乗ってリズムを感じているときは、頭から理屈が抜けて動物的になり、1と2はわかっても3以上の数を認識しづらいような気がします。なので、1, 2, 3, 4と数えていると「いま何拍目だっけ??」とわからなくなったりします(僕だけ?笑)。だから、「いっ・にっ・さん・しっ」より、「いっ・とっ・にっ・とっ」の方が確信をもってリズムを取れて、ノリも良いように感じます。いかがでしょうか?

楽譜13では、1拍目表裏、2拍目表で連続して発音して、2拍目裏は伸ばし、次の1拍目表で発音ですね。初心者の方は、裏のタイミングが早くなって、2拍目の2分音符から次の1拍目表に急いでしまう傾向があるように思います。ここでもやはり、一定の拍に乗ることが大切です。

次の楽譜14はシンコペーションと呼ばれるリズムの例です。

楽譜14Aでは、1拍目表と裏で発音したあと、2拍目の表裏とも発音せず伸ばし、次の1拍目表で発音します。楽譜14Bでは、1拍目表と裏で発音したあと、2拍目の表は発音せず伸ばし、2拍目裏と次の1拍目表で発音します。どちらも1拍目裏で発音した次の2拍目表で発音せず伸ばすことになります。裏で発音したのに次の表で発音しないと、そこで宙に浮くような感覚になりませんか?このようなリズムをシンコペーションと呼んでいます。初歩の段階の曲にはあまり出てきませんが、リズムを取るとき、とりわけノリよくなるリズムだと思います。ちょっと進めばよく出てきますので、お楽しみに。

2.3 レッスン動画 (2/5)

それでは、ランディさんが2分の2拍子の練習をどのように進められたか、下の動画をご覧ください。僕が再三、拍に乗ってリズムを打つだけで楽しくなりませんか?と言っていて、10'30あたりでランディさんも笑って「ノリは良くなりましたね!」っておっしゃったのが印象的でした。リズムを打つだけで楽しいと感じ始めたら、普段道を歩いているときにも口でリズム打ちしてみてください。歩いているときには、その一歩一歩が自然と一定の拍を作ります。それに乗って口でタンギングするようにリズムを唱えればそれだけでウキウキしてくることうけあいです。声を出さないで舌だけでテーテテテーなどと言っている分には周りの人にもばれないと思いますし(笑)、ぜひやってみてください。

3 4分の2拍子の基礎

3.1 4分の2拍子とは

次はPDFファイル2ページ目の下の部分、4分の2拍子です。音符も細かくなって難しそうに見えるかもしれません。でも、音符の書き方が違うだけで、4分の2拍子も2分の2拍子も全く同じです。このページの4分の4拍子の部分と2分の2拍子では、音符は全く同じだけれど拍のとり方が違ったわけですが、今度は、音符の長さ(音価)が全部半分になっただけで、拍のとり方も、出てくる音も、リズムに乗るフィーリングも、全て全く同じです。なので、2分の2拍子のところでやったのと全く同じ練習を、音価を半分にした楽譜を見ながらやるだけのことです。

それから、音価が半分になっているからといって、テンポが倍になるということでもありません。音価とテンポは無関係です。短い音価の音符も、テンポが遅ければゆっくりですし、長い音価の音符もテンポが速ければ速く進みます。

3.2 4分の2拍子の基礎的なリズム練習

4分の2拍子も2分の2拍子と全く同じなので、改めて詳しい解説はしません。対応する楽譜の番号だけ書きますから、リズムのとり方は前の解説をご参照ください。下の楽譜15は、楽譜9でやったことと同じです。

下の楽譜16は、楽譜10と同じです。

下の楽譜17は、楽譜11と同じ。

下の楽譜18は、楽譜12と同じ。

念のため、図1を半分の音価にしたものも書いておきます。付点は前の音符の半分の音価を足すという意味で、付点4分音符は4分音符と8分音符をつなげた音価になります。付点4分音符では4分音符の単位の拍を2拍数えることになります。

下の楽譜19は、楽譜13と同じです。

そして、下の楽譜20は、楽譜14と同じです。(ただ、このリズムはもうしばらくは出てこないので、練習を省略しても構いません。)

3.3 歩きながら練習しよう!

ここまで練習を進めてきたら、シンプルなリズムでも拍に乗ってリズムを打つこと自体が楽しいという風に感じられるとよいのですが、いかがでしょう。2.3 レッスン動画 (2/5) のところでも書きましたが、歩きながら、歩く拍に乗ってリズム練習するのはお勧めです。

歩きながらの練習は、4分の4拍子の練習も4分の2拍子の練習も合わせてやると良いです。4分音符単位で1拍になるという点はどちらにも共通です。音符の音価とテンポは無関係と書きましたが、ここの練習で、最初の4分の4拍子と最後の4分の2拍子を同じテンポでやるなら、4分の2拍子で書いたリズムはもちろん2倍の速さになります。このようにして、4分の4拍子で書いたリズムと4分の2拍子で書いたリズムを、どちらも同じ歩く拍に乗せて、口で打ってみてください。散歩も買い物や通勤通学も、歩くのが楽しくなるはずです。

3.4 レッスン動画 (3/5)

これは、すでに2分の2拍子のところで練習済みということもあって、大変スムーズに進みました。また、右手左手を使って、歩いているイメージで拍を打ちながら練習していたら、どんどん楽しくなってくる様子でした。拍に乗ってリズムを取ること自体が楽しいというのを味わっていただけたら、それが一番です。

4 「美しき町、リール」再挑戦

4.1 「美しき町、リール」全体の構成

第4回で練習開始された「美しき町、リール」、最初は難航してしまいましたが、第5回の最後にやっていただいたときにはだいぶ上達されていて、あとは細部のリズムに確信が持てれば上手くいくはずというところまで来ました。今回、基本のリズムをしっかり練習した成果はあらわれるでしょうか?

リズム練習の後、少し休憩を入れたのですが、ランディさんはその間も手拍子を取りながら歌っていらっしゃいました。そういう事ができるようになっていれば、リコーダーで吹くのもすぐにできそうですね。下のレッスン動画 (4/5) にはその様子から載せています。

さて、まずは全体の楽譜を見てみましょう。楽譜を読むときには、どんな部分からなっているか、構成を見ることが大事です。

この曲は、4分の4拍子で数えて4拍目から始まる4小節フレーズが4つ(A, A', B, C)と最後に3拍目から始まる2小節フレーズから成っています。最初のAは、ざっくり骨組みを見ると、ド(c'')から始まってソ(g'')まで上行し、そこから最後のミ(e'')に向かって収まっていきます。次のA'も骨組みはド→ソ→ミと進むので、Aと同様です。同じ骨組みで枝葉が違うだけというのを変奏といいます。A'はAの変奏なので同じ文字を使いました。次のBはだいぶ異なった印象の旋律です。次のCはAと同様にド→ソ→ミと進むので、A''としてもよいのですが、最初にドを繰り返すところがAと異なる印象を与えるのでCとしました(何を同様と見るかは、意見の相違が出てくるかもしれません)。最後の短いフレーズはCの最後の部分だけの繰り返しなので、小文字のcとしておきました。C-cを合わせて6小節フレーズと見ることもできます。

4.2 「美しき町、リール」最初の4小節

レッスン動画 (4/5) 3'00"あたりからAの部分の練習を開始しています。まずは、4分音符単位で手を叩きながら声で歌っていただきました。

リズムはもう大丈夫になっているのですが、2小節目の2分音符の後(カッコを付けたコンマのところ)で息を吸おうとすると2分音符がだいぶ短くなってしまい、ソ(g'')が2つ連続する高揚感を失ってしまいます。ここで息を吸うことは構わないのですが、できるだけ2分音符のソ(g'')を長く保ちたいところです。そのためには、息を吸わないで済むならその方がやりやすいです。結果、その後のどこかで息を吸うことになったとしても、その方がフレーズがつながって聴こえるという場面もあります。フレーズの途中で息を吸わざるを得ないときは、そこで分断して休憩する感じにならないようにしないといけません。笛を持たずに声で歌うときには、すぐに上手く行くようになったのですが、笛を吹いてとなるとやはり2小節目の2分音符が短くなりすぎるという傾向が見られました。そこがさらに練習していただきたいところでした。

さて、息が足りなくなるのはあまり心配せず、足りなくなったときに適当に吸うと考えるぐらいでよいのですが、最初にたっぷりの息を吸っておくに越したことはありません。そのためにお勧めするのは、あくびするときみたいに息を吸うということです。この曲は4拍目で始まるので、その前の3拍目に合わせて、あくびするように息を吸います。そのうち別記事としても書こうかと思うのですが、呼吸に関する身体の使い方は極めて複雑で、意識するとかえって上手くいかなくなることが多いです。特にランディさんは幸いなことに最初から素直な真っ直ぐな音が出せていますから、そのままご自分の音のみに意識を向けるのがよいと僕は思います。息について意識するとしたら、あくびをするときみたいな深呼吸をしょっちゅうやるようにするとよいということぐらいです。そうすれば笛を吹くときの呼吸も知らず知らずのうちに深くなっていきますし、深呼吸を繰り返すと心身の健康にもよく、一石二鳥です。

4.3 「美しき町、リール」2番目の4小節

ちょっと話がそれましたが、次はA’の部分です。レッスン動画 (4/5) では、7'50"あたりからになります。

A'もAと同様、ド(c'')から開始してソ(g'')まで上行してソ(g'')を繰り返します。ソ(g'')に達するのがAよりも2拍早い分、4分音符2つだけソ(g'')を繰り返す回数が多くなっています。ランディさんはその高揚感はよく感じていらっしゃる様子ですが、そのためかソ(g'')を繰り返しで楽譜から離れてしまって、楽譜23のアのリズムがなかなか取れない状態でした。4分音符2つ分早く始まるだけで、イの部分はAのときと同じという風に把握できればよかったのですが。やや難航しましたが、14'10"ぐらいから吹かれたときにはだいぶ上手く行っていました。意外と長い音符でリズムがわからなくなるものですね。

4.4 「美しき町、リール」3番目の4小節

A'とBの間のリズムが、この曲の中でわかりにくいところなのですが、A'の最後の音を3拍数えて、次の4拍目の最初が休符、その裏がBの開始になります。

なので、Bのフレーズだけを取り出して練習するとき、A'の最後の付点2分音符は吹かなくても、4拍目の裏から開始するという意識は持っていないといけません。

このように、Bの開始の拍には注意が必要ですが、17'55"あたりではBも的確に吹いてしらっしゃいました。一息でやるのはなかなか難しいですが、B全体がひとつながりという感覚を持てるなら、いまのところはどこで息継ぎでも構いません。

4.5 「美しき町、リール」最後の6小節

次のCの開始は、4拍目表からなので、Bほどは難しくありませんが、やはり、4拍目からという意識を持って吹き始めるのが良いでしょう。

それから、最後のcの部分は、青いカッコで示したCの終りの部分と同じだといこともおわかりでしょうか。Cの最後の2分音符ド(c'')で落ち着いて終わり、余韻のようにcの部分を吹くと良いでしょう。20'50"あたりから、Cとcを続けて吹いていただきましたが、大変うまく吹いていらっしゃいました。

4.6 レッスン動画 (4/5)

ここまでの段階で、A, A', B, C-cを別々に吹くというのはできるようになったので、後は、曲全体を続けて吹ければよいということになります。そのためには、Aの終止を3拍伸ばして次の4拍目からA'に入る、A'の終止を3拍伸ばして次の4拍目裏からBに入る、Bの終止を3拍伸ばして次の4拍目からCに入るというのが的確にできるようにならないといけません。23'00"あたりからは全体を通してやるというのに何回か挑戦していただきましたが、各フレーズの最後を3拍伸ばして4拍目から次のフレーズに入るというところで慌てがちだったり、そうしているうちにA'の途中のリズムがわからなくなったり、いろいろなことが起こってしまいました。全体を一定の拍に乗って吹けるようになるには、もうしばらく練習が必要な様子ですが、だいぶ曲想は掴んでこられたようです。ヨガのダイスケ先生とのデュオも開始されたとのことなので、2重奏で練習していただければ、程なくできるようになるに違いないと思いました。それでは、27分ほどで長いですが、レッスン動画をどうぞご覧ください。

5 次回に向けて、少し予習

5.1 楽譜を読む難しさ

次のレッスン動画 (5/5) では、次回レッスンに向けてのお話をして、その後、少し次回やる曲の予習的なこともやっています。

「美しき町、リール」は、後半はだいぶ上手に吹けていらっしゃるのですが、前半がなかなか難しかったようです。リズムの基本練習をようやく今回開始したため、その前にご自分で練習されていた部分で、リズムの思い違いなど生じてしまい、そこからなかなか抜けられないというのが原因かもしれません。予習しておいていただくというのは、そこが難しいところですね。どう吹けばよいのか確信持てないところは、あまり練習せずに放っておいて、わかるところだけ少し吹いて、こういう曲かなあという予想だけしておいてもらうなどがよいのかもしれません。楽譜が読めない初心者の方には、僕が吹いて真似していただくという要素も少しはあってもいいのかもしれません。そのあたりは、今後、僕も探っていきたいところです。

そういう話をしているうちに、ランディさんの方から、楽譜が読めない人も普通にできるようになるものですか?という質問をいただきました。それは、確かに手間がかかって大変だと思います。こんなに難しいことできるようにならないといけないの!とか、こんなめんどくさい練習なんかやってられない!とか、めげそうになることもたくさんあると思います。楽譜読むのが簡単だということは決してありません。プロの演奏家が、シンプルな曲ほど難しいと話す場面もしばしばあります。パラドックスのようですが、簡単な曲ほど難しいとしたら、まずは簡単な曲から始めるほかない初心者の方は、最も難しいことから始めるということになります。それがとても難しいことだというのは確かだと思います。あとは、僕の方がその難しさを感じさせないようにレッスンを進められれば良いという問題かと思います。ランディさんは、聴いたことがある曲であれば、すでに「モンセラートの朱い本」の中の曲も吹けるようになってきているということもあり、基本のリズム練習を後回しにしてしまったのも難しさの原因だったかもしれません。今回、ようやくリズムの基本ができたので、これを気にスムーズに進むようになれば良いと思います。

それから、人には得手不得手があります。ランディさんはこれまで楽譜を読むという経験をほとんどされてこなかったそうなので、その点は確かに大変に感じてらっしゃることとは思いますが、音の出し方はとてもスムーズにできています。最初の段階では、どうやったら真っ直ぐな音が出せるかとか、タンギングというのは一体どうやるのか?とか、息の流れを増やしたり減らしたりするのはどうすればよいのか?とか、そういう息づかいの悩みが生じてしまう人はとても多いです。ランディさんのレッスンを公開することで、多くの独習する初心者の方々の参考にしていただけると良いのですが、息づかいについての大きな問題がないので、それについては別立てでいつか記事にしないといけないと思っています。ランディさんご自身については、そのまま、息づかいについては特に意識することなく、ご自分の音だけを聴きながら進めていくのが一番良いと思います。考え始めるとできなくなるということはありがちですし、息づかいについては「燃えよドラゴン」(ブルース・リー)の名セリフ Don't think! Feel!という指針が最もよく当てはまることのひとつなんじゃないかと僕は思っています。あと、ランディさんは照れくさがることなく、どんどん声に出して歌えるというのも、とてもすばらしいところです。

5.2 「町人のブランル」予習

そういう話をするうちに、「3b. アルトハ長調2.pdf」というファイルにある「町人のブランル」という曲を少しやってみるということになりました。3'10"ぐらいからです。このファイルは、第5回で使いましたが、改めてここにもアップしておきます。

「町人のブランル」は下の楽譜27ですね。ブランルというのは当時のフォークダンスです。

詳しくはまた改めて次回のレッスン記事で書くとことにしますが、最初少しリズムの読み違いがあったものの、リピートより前の部分はとてもスムーズにできていました。

3'50"あたりからは、早速リピートの後に移りましたが、楽譜の読み取りが上手く行かなかったのは、リピート後の2小節目でした。付点2分音符で3拍伸ばすというような、長めの音符で拍を失ってしまうというようなことは起こりがちなのだと思います。

結論から言うと、後半は2小節の短いフレーズが楽譜28のように連なっていて、特にa1と記号を付けた最初のフレーズは2小節目3拍目で閉じて、4拍目は次のa2のアウフタクト(弱起)になっています。a2も3拍目で閉じて、4拍目はa1'のアウフタクトになります。a1'はa1と同じフレーズにアウフタクトがついたものです。こういうフレージングが見えると、曲想をつかみやすいのですが、フレーズが青のカッコで示したようになっていると思ってしまうと、なんだか訳がわからないということになります。初心者の方は、小節線が何かの区切りになっているように錯覚しがちなのですが、小節線は、上拍から下拍に向かう所を明示して楽譜を読みやすくするだけの記号で、区切りというよりむしろ、拍が進行するところだというイメージを持つ方が良いです。ちなみに、16世紀までは小節線が書かれることはまれでした。小節線が必ず書かれるようになったのは17世紀末ぐらいからです。ただ、もちろん、小節線とフレーズの区切りが一致することもあり、この曲が軽快なフォークダンスじゃなくて例えば重々しい歌だったとしたら、青のカッコのようにフレーズを取る可能性もなくはありません。どうフレーズを取るかは、演奏してしっくり来るかどうかという感覚で判断する面があります。ランディさんも、青いカッコのようにフレーズを取ろうとして「なんか変、わからない」とおっしゃっていたのが、赤いカッコのようなフレージングをお伝えしたら段々と「あ!そうか!」となってこられたわけなので、しっくり来るかどうかの感覚は十分に備わっているということだと思います。初心者の方もご自分の感覚で、いろいろやってみてください。(その結果、そうじゃない方がいいですねえ、と言われたりすることもあるかもしれませんが、、)

とはいえ、青いカッコのフレーズだと思って練習して来られた場合、赤いカッコのフレーズに捉え直すのは簡単に行かないかもしれません。その場合は、a1とa2の間でしっかり息をするとよいです。しっかり息を吸うには、息を吸うところが休符になると考えて構いません。つまり、下の楽譜29のようにして、4分休符のところで息を吸います。

2つのフレーズが完全にバラバラな印象になるのもよくないので、2小節目の2分音符はしっかりテヌートにして、3拍目が来た瞬間まで伸ばします。そうすると、ちゃんとしっかり3拍伸ばしているように感じられます。そして息を吸って、4拍目が上拍、次の1拍目が下拍という風に感じて拍に乗ると良いです。下拍の4分音符もテヌートにして、次の音との間に隙間が開かないようにするとよいです。今は4分の4拍子で数えていますが、2分の2拍子のように、1と3が表(down)、2と4が裏(up)と感じる方が拍に乗りやすいはずです。そういう話は、次回のレッスン記事で更に詳細に書くつもりでいます。

5.3 レッスン動画 (5/5)

このように、僕があまり吹いてみせることをしないで初心者の生徒さんに楽譜を読み取っていただくというレッスンは、かなり厳しいのかもしれないですね。そこを乗り越えればということでしょうが、最初は真似していただく要素もあるとよいのかもしれませんね。動画の最後あたりは、そういう話をしています。とはいえ、この「町人のブランル」については良い予習ができた感触でした。続きは第7回をどうぞお楽しみに。

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