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空き家の子供

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創作大賞・ホラー部門参加の長編ホラー小説です。空き家に潜む「子供」の恐怖を、現在(冬)と過去(夏)を交錯させながら描きます。
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#ホラー小説部門

空き家の子供 第21章(終章) 現在・春

終章 現在・春 そして十五年が過ぎ、私は今も聡子の体の中にいた。  新しい空き家になった…

海藤文字
2週間前
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空き家の子供 第20章 過去・夏(10)

第20章 過去・夏(10) いーれーて……  あーそーぼ……  くすくすくすくす。まるで楽しい…

海藤文字
2週間前
6

空き家の子供 第19章 現在・冬(10)

第19章 現在・冬(10) 私は夢を見た。空き家の夢だ。闇の中に取り残され、パニックになって…

海藤文字
2週間前
6

空き家の子供 第18章 過去・夏(8)

第18章 過去・夏(8) 雨を逃れて、洋館の一階の洋間へと聡子と慶太は入って行った。二人の…

海藤文字
2週間前
4

空き家の子供 第17章 現在・冬(9)

第17章 現在・冬(9) やがて二月になって、私は退院した。  大塚が車で迎えに来てくれた。み…

海藤文字
2週間前
8

空き家の子供 第16章 過去・夏(8)

第16章 過去・夏(8) 空き家に行けなくなって、数日が過ぎた。  お母さんの言う通りに、聡…

海藤文字
3週間前
6

空き家の子供 第15章 現在・冬(8)

第15章 現在・冬(8) トラックと正面衝突した車は大破し、運転席にいた父は即死、助手席にいた母も搬送された病院で死亡した。トラックのドライバーは軽いけがで済んだ。私は大けがを負ったが、命は取り留めた。  体中に包帯をまかれギブスをはめられて、病院のベッドで私は目覚めた。事故から二日が経っていた。自分が生きていることを確かめながら私は、あの子が父と母を取って行ったことを知った。祖母もだ。祖母の遺骨は事故現場に散乱して、とても回収は不可能だったと聞いた。  私だけは取り損ねたの

空き家の子供 第14章 過去・夏(7)

第14章 過去・夏(7) 八月の半ば。私は空き家に入れなくなった。  もうすぐお盆休みという…

海藤文字
3週間前
6

空き家の子供 第13章 現在・冬(7)

第13章 現在・冬(7) 通夜の夜。蒼太が帰っていった後、親戚たちも皆帰ってしまって、私た…

海藤文字
3週間前
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空き家の子供 第12章 過去・夏(6)

第12章 過去・夏(6) 少し迷いがあったけれど、聡子はやっぱり空き家へ向かった。描きたい…

海藤文字
3週間前
8

空き家の子供 第11章 現在・冬(6)

第11章 現在・冬(6) 祖母の遺体は通夜の会場である葬儀社の会館へ運ばれていった。母に続…

海藤文字
4週間前
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空き家の子供 第10章 過去・夏(5)

第10章 過去・夏(5) 聡子は夢を見た。今から二十年前、空き家がまだ空き家ではなかった頃…

海藤文字
1か月前
5

空き家の子供 第9章 現在・冬(5)

第9章 現在・冬(5) 祖母は真夜中過ぎに臨終を迎えた。両親と私が最期を看取った。既に意識…

海藤文字
1か月前
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空き家の子供 第8章 過去・夏(4)

第8章 過去・夏(4) 夕方、二階の自分の部屋で、聡子はスケッチブックを一枚一枚、丹念に見直してみた。最初の日に描いた絵と今日の絵だけでなく、他の絵にも影が隠れていることに聡子は気づいた。  よく目を凝らして見るといくつもの絵で、洋館の窓に、雨戸の隙間に、うっすらと人の形が潜んでいた。ただ黒く塗りつぶしただけであったつもりの場所に、他より僅かに黒の濃い輪郭が潜んでいる。自分でも気づかずに、そんなものを描いていた。いや、描かされていたのだろうか。聡子はぞっとした。  一人でいら