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イタリアの仏教徒

友達の友達とか、新しく出会う人たちのなかに
「え、日本人なの?」と目を輝かせて、
「僕/私 たち、仲間だね♫」とでも言いた気に、
自分は仏教徒なのだと嬉しそうに告げてくるイタリア人たちが、時々いた。

彼らは、仏教の教えの奥深さに感銘を受けたという話と共に、ほぼ例外なく、センセイ・イケダを褒め称える。

毎日熱心に、真面目に、彼らがオダイモクと呼ぶ「ナンミョーホーレンゲキョー」を唱えているという。

彼らの話によると、イタリアで一般人に仏教という宗教が紹介されたのは、1980年代くらいから。

1990年代あたりから少しずつ広まるようになり、2000年代に入った今では、一定数の仏教徒が、イタリア全土にいるのだそうだ。

最初にそれを聞いたときは、
ちょっと待ってよ、日本にキリスト教が紹介されたのは16世紀なのに、こちらへは20世紀も終わりになってから、やっと伝わったの? 
と、そのことに驚いた。

『茶の本』の中で、岡倉覚三かくぞう天心てんしん)がいみじくも書いている通りだと思った。

〈キリスト教の宣教師は与えようとはするが、受けようとはしない〉
The Cristian missionary goes to impart, but not to receive.  (Ch.1)

彼らが謙虚だという意味ではない。 
逆。  
傲慢ごうまんってこと。

しかり。しんなり だわ…
西洋の傲慢さは、東洋から学ぶ姿勢になるのに、4世紀もの時間を費やしたってわけだ?

もっとも、仏教は、僧侶たちが布教のために外国に行くことなどしない性格の宗教だとは思うけど…
(自らが学ぶためにおもむくことはあっても)

私は彼らが熱を込めて話そうとする内容のことはよく知らなかったし、シニョーレ ダイサク・イケダについても
「私はよく知らないんだ」と答えて
「日本じゃ、彼は有名じゃないの?」
とがっかりさせてしまっていた。
「ううん、とても有名だよ。私も名前くらいは知ってる」というと、少しホッとしているようだった。

その後数年経つと、私もある程度イタリア語が話せるようになっていたので、そういう仏教徒の人たちの方から質問されるようになった。

「イタリアで会う日本人たちに、僕は仏教徒なんだよって話しても、センセイ・イケダのことを話しても、みんな良い反応をしてくれないのはなぜ?
やっぱり日本でも若い人たちは、宗教に関心がないのかな。イタリアでも、そこは全く同じなんだけどね」

私なりに考えて、その人に答えた。

「日本人が初めてキリスト教を知ったのは、
1549年、ジェズイーティ(Gesuiti イエズス会士)を通してだよ。(*)

イタリアのカトリックだけでも、他にも、
アゴスティーニ(アゴスティーノ修道会)、
フランチェスカーニ(フランチェスコ修道会)、
ドメニカーニ(ドメニコ修道会)、
ほかにもいろんな宗派があるし、キリスト教には、プロテスタントの考えだってある。

『イエズス会の教えを通したキリスト教』
をどう思う?

その教えだけ聞いて、信じていれば、その日本人はもう「普通のイタリア人と同じキリスト教徒だ」って、イタリア人の貴方は思う?

仏教だって同じで、
日本にもたくさんの仏教の宗派がある。

日本には他にも、神道っていう、
アニミズムに近い、
仏教よりも古くから日本に根付いている伝統的な宗教もあって、
私たち日本人は、両方を同じくらいうやまってる。

たくさんある中の、たった一つの教えを聞いただけで「私はあなたと同じ仏教徒です」
って言われても、日本人は、
わぁほんとだ、自分と同じだね、なんて思わないし、ふーん、そうなの、しか言えないよ。

それに日本では、仏教のことは、お坊さんから話を聞いて学ぶんだよ。
シニョーレ・イケダはお坊さんなの?

たしか日本では彼はお坊さんとは思われてなくて、ビジネスマンのような、政治家みたいな人だ、ってみなされてる。
だからみんな、反応がにぶくなるんだと思う」

その人は「今の説明は非常に分かり易かった。クリアになった。どうもありがとう」
と言ってくれた。

他の日本人の留学生仲間たちも時々、
「反応に困るんだよねー」
と話題に挙げることがあって、みんなそれぞれ受け答えに悩んでいたので、

これから留学に行く人、イタリアの仏教徒との会話で似たようなことを聞かれたら、自分で考えて答えを用意する際のひとつの例として、良かったら参考にしてください。

逆に、本当に「同じ仲間だね♪」の人は、イタリアの仏教徒の人たちと盛り上がれると思います。
あと、質問攻めを受けるかもしれない(?)

神道のことについても、彼らは質問したがるから、少し自分で勉強しておくのも良いかもね。

私もその頃は、ふんわりとした知識しか持っていなかった。 
日本の神様たちのことにしても、
物語としての古事記を読んでいた程度だったし。
(『因幡いなば白兎しろうさぎ』とか、『あま岩戸いわと』とか)

私が悔やんでいるのは、
神道を、天皇陛下のお務め下さっている役割とからめて、上手に説明できていなかったこと。

よく考えたら、キリスト教におけるローマ法王みたいなお立場(選挙で選ばれず世襲ではあるけど)だと説明していたら、
イタリア人たちにももっとよく理解してもらえたんじゃないかと、今頃になって気づいたの。

わたしの認識不足&準備不足。

イタリアにいた間、天皇陛下については、あまり質問されたことはなかったけど
(当時は今の上皇陛下の時だったので
「日本国民みんなにとって、とても大切なかたで、でも可愛がってくれる大好きなおじいちゃんみたいな、大事な家族のような親しい気持ちも持ってるんだよ」って説明してた)
神道については、けっこう何度も説明を求められる機会があった。

イタリア語で神道は『Sintoismoシントイズモ』というのだけど
(ちなみに仏教は『Buddismoブッディズモ』)

「古代からある日本のオリジナルの宗教で、
アニミズムの一種で、
すべてのものには霊が宿ると考えてて、
それを神格化してるからたくさんの神様がいる」といった程度の説明で満足してくれてた。

私がイタリアに居た頃は、まだ日本と中国の区別もついてないような、日本にももちろん行ったことのない人ばかりだったけど、
今は旅行で実際に訪れた上で、日本に興味を持って質問する人が多くなってるだろうな。

これから行く人たち、
ちゃんと自分の国のことを、自分の言葉で説明できるように準備して行ってね。

外国人に日本のことを質問された時、
「すみません、私はわからないので、ご自分でネットで調べて下さい」
と答えるのって、どう思う?

きっとその人は、私たちの国や、あなた自身にも興味を持って、もっと知りたいという思いをもって、聞いているのに。

わざわざこんなことを書くのは、イタリア留学時、私の周りでも本当に「えー、わからない」「知らない」と言うばかりで、自分の国の歴史も文化も説明出来ない日本人留学生が多かったからなんです。(当時ね)

もちろん知らないことも中にはあるものだし、私自身もいつもきちんと説明出来たわけじゃなく、上手く話せないこともよくあったけど、

説明はべつに〈完璧〉じゃなくてもいいんだよね。
「正確なところはわからないけど、私は、こうじゃないのかなと思う」で。

上手く言えないからとか、面倒くさいからとか、毎回「知らない」で逃げてばかりいたらコミュニケーションにならない。

語学力も、自分自身も成長出来ない。

何より、日本人なのに日本のことを説明出来ないのは恥ずかしいことでもあるから、

そこは自分を甘やかさずに、ちゃんと勉強したりして、真摯しんし対峙たいじするべきだと思う。

西洋人とは真逆であっても、
受け取るばかりで与えようとはしないことも、
横柄というか図々しいというか、
やっぱりちょっと違うんじゃない? 
と思うから。


…と、留学生の先輩としてはアドバイスいたします。


あとは君たちに任せた。
頼んだよ!😉



(*) ここでは信者が現れるほど一般に知れ渡る、という意味で、おそらく空海の頃かそれ以前から、ごく少数の人びとが知っていたであろうネストリウス派キリスト教(景教)はカウントしていません。


🌟こちらは、学生時代のクラブ活動で歌った思い出の曲です。
やわらかな雰囲気の、とても可愛らしい歌なので、好きでした。

キリスト教の学校だったけど、そこは普通に日本の学校でもあったので、
お釈迦様のお誕生日の歌だから避けましょうとか、そんなことは全くなかった。

クリスマスはイエスさまに
花まつりは仏さまに
それぞれ

お誕生日おめでとうー❣️🎊 

でいいし、むしろ世界じゅうの皆がそんな風に、どの宗教のお祭も一緒に祝ってあげたら、
お互い楽しいし、幸せな時間も、単純に増える。

こういう、良いとこ取りの😅日本の感覚が、
もっと世界的にも普通になればいいのにね。



『花まつり』

春の口紅つけたのだぁれ?
いけないよ いけないよ…

四月八日は花まつり
象にちょこなん お釈迦さま
街じゅう お練り歩きをなさいます

天上天下唯我独尊

小さな御手を空と地に
いつでも向けておいでです
街じゅう お練り歩きをなさいます

象を引くのは
お稚児さん 女の子 ばかりです

金の冠 赤いきぬ 
白い打掛うちかけ おちょぼ口に口紅を

ひたいに二つのしるしをつけて
いつもやんちゃなあの子まで
ちょこんと綱を引いてます

ほろほろ 花は散りかかる
お寺の境内けいだい 甘茶の祭り
空はほんのり 花曇り

うらら うらうら
花まつり



書いたものに対するみなさまからの評価として、謹んで拝受致します。 わりと真面目に日々の食事とワイン代・・・ 美味しいワイン、どうもありがとうございます♡