見出し画像

'持ち家'か? '賃貸'か? 豊かな「暮らし」のために

 いきなり自分自身の話で恐縮ですが、私は幼少の頃に父を亡くしました。当時住んでいた家は、父がローンで買った小さな建売住宅でした。
 その後、団体信用生命保険なるもののおかげで、私共一家は「家」を失う事はありませんでした。

 持ち家か賃貸住宅、「どちらが得か?」という議論は多々されてますが、「住まい」というモノが持つ意味合いも含めて、私なりの見解をお伝えしたいと思います。

・住まいは家族にとって「帰るおウチ」

「おウチに帰りたい」と子供が口にするように、家は「帰る場所」であり「安心できる場所」です。
 それが「無い」というのは、非常に寂しく、悲しいものです。誰しも、いつでも「帰る場所」は欲しいものです。
 ですので、単なる損得だけではなく「心の安堵」も含めて判断して頂きたい問題です。

(一生あちこちに飛び回って暮らしたい方には、どうでも良い話です。ご容赦下さい。)

・「損得」比較

その上で、敢えて「損得」だけで比較する場合、計算方法や考え方もいくつか考えられます。

年間の生活費、必要経費として考える。
賃貸住宅:家賃、共益費、更新料など合計。
持ち家:住宅ローン、固定資産税、修繕の為の積立費、マンションの場合は管理費等の
合計。
また、お勤め先によって、賃貸や持ち家に対する補助がある場合は、それぞれを引いた額を比較する必要があります。

退職後の費用負担を考える
賃貸住宅:退職後も払い続ける。生涯家賃の支払いが必要。
持ち家:ローンの支払いが終われば、固定資産税、修繕積立や管理費等の維持費のみ必要。
 当然ながら、何歳で持ち家を取得するか、で大きくこの結果は変わってきます。ローンが終わってしまう事を考えれば「持ち家」が断然有利な気がしますが、それまでの家賃支払いなどが低く、十分な貯蓄などの準備ができている場合は、一概にそうとは言えません。

生涯にかかる「総額」で考える
 上記①②を合わせて総額で比較するのが、損得を考える上では当然の手法と言えます。もちろん、持ち家の場合は「修繕」のみならず、建て替えが必要になる事もありますので、その場合の計算は大きく変わってきます。
 つまり、年齢(あと何年生きるか)、場所、選ばれる住居の種類、その他様々な状況により、答えは全く異なるものになり、(金額比較をしている資料を読んでも)ほんの少しの条件を変えるだけで答えは逆転してしまいます。

 よって、自分が住みたいなと思う住宅の形で、「持ち家」「賃貸」の①を比較して頂き、自身の年齢から②を加えて考える、という事が必要です。
 つまりは、それぞれの場合で違うので、一概に答えを出すこと事体がナンセンス、ということになってしまいます。

・自分の「死」を検討に加える

 重たい話題になりますが、家を考える時、避けては通れない問題です。
 冒頭に、私自身の話をしましたが、もう少し詳しくお話しします。
 当時私は小学二年生、家は買って2年程度でした。それまで元気だった父親は、体調を崩し入院、一度は退院して自宅療養してましたが、再検査の後、再入院、手術はしましたが帰らぬ人となりました。
 家は東京23区内ではありますが小さな建売で、当時の価格でおそらく3500万円程度だったと思います。買ったばかりだったので、ローンは殆ど残っていたと思いますが、先に申し上げたよう「団体信用生命保険」により、返済は必要なくなりました。
 そのままそこに居住する事も可能でしたが、母親と我々子供3人は、関西の母親の実家に引っ越す事になりました。
 その際、その家を手放す事も出来たのですが、親しい知人より「人に貸す」事を提案され、賃貸住宅として活用する事になりました。
 実家に戻り、母親は仕事に就いたのですが、その「家賃」収入も、大きな家計の助けになった事は間違いありません。

 この「父が残してくれた家」を,金銭的価値に置き換えるのは不謹慎かも知れませんが、我が家が受けた「恩恵」を計算してみます。
 この貸し出した家の家賃を、14万と想定しますと、
家賃14万円×12ヶ月=168万円/一年間
168万円×今までの年数40年=6720万円
固定資産税や、修繕などの経費も必要ですから、2割ほどを差し引いて考えても5000万円以上の恩恵を受けた事になります。
この家賃収入は今後も続きますし、売却すれば「売却益」が出ます。(建物は古いので殆ど価格はつかないでしょうけど)

 父親が、「持ち家」を残してくれたおかげで、それだけの「恩恵」を残された家族は得ることが出来たのです。

・生涯の家族の'安堵'の為に

 このようなお話に対して、「それと同等の生命保険をかけていれば大丈夫」との意見もあります。
 もちろん、仰る通りです。
 その保険料も、先の計算の「経費」に加えて計算すれば問題はありません。
 つまり、この「団体信用生命保険」によるメリットも、必ずしもこれを持って「持ち家」の優位性を示すものでは無く、一つの'考え方'と捉えて頂ければと思います。
「帰る場所」や「生涯の財産」を、安心と捉えるならば、住まいを所有する事は重要な意味を持ちます。

・それぞれの'判断'

 結局は、それぞれの置かれた状況により、「持ち家」が良いか「賃貸」が良いかは変わります。
 その上で、私なりの意見は、
以下の条件をクリアする「持ち家」がお勧めです。
①定年退職後にローンが残らない。もしくは退職金などで繰り上げて、ローン返済を低く抑えられる。
②将来にかけての維持管理費、及び建替の必要性を考え、経費として問題がない事。
建物寿命やメンテナンスコストをしっかりご確認下さい。
③団体信用生命保険及び、病気などによる返済不能にも対処出来るよう、ガンや疾病などの特約も検討する。(既に成人病などで団信に加入できない方は、他の方法での対応策のご検討をおすすめします。)

 その他、検討すべき点はたくさんありますが、代表的なものを紹介しました。 
 先にも述べました、「損得比較」は、長生きするほど、'退職後の家賃'が大きくなり、「賃貸住宅」が不利となります。人生100年時代と言われる現代、「長生きすればする程、家賃が心配」というのは悲しいですよね。 

 結局のところ、現在の「比較」は、平均寿命まで生きたものとしての比較でしか無く、
その答えは甲乙つけがたく、
「想定外に早く亡くなるケース」
「想定以上に長生きするケース」
どちらも'持ち家'の方が安全と考えられます。

 ぜひ、皆様がしっかりとご検討の上で、「安心できる住処(すみか)」を取得される事を願います。いつの時代も「住んでいた家」は思い出の場所であり、「大切な場所」ですよね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?