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【詩】そこにあるもの

目一杯の太陽の光を浴びても
まだ寒かった
もうすぐ春も終わるのに
ポケットにあるカイロで暖を取った
頬に当てたカイロが
人の温もりに感じて
ほんの少しだけ時を忘れた
数分前の今を行き来して
過去に囚われそうになった
重なった嘘を整理して
また重ねた嘘
盗むんじゃなくて借りただけだよ

11時53分の時計と6時53分の時計があって
世界旅行をした気分になった
くの字に曲げた脚の空白を埋めるように
そっと寄り添う愛犬の言葉のない優しさが
どうしようもないわたしを慰めた
感情を追い越せなくて
生きることへの慰めを求めては考えた
何かに縋って生きていく事への恐怖心が
わたしを支配した
傲慢でしかなかった欲望
言葉の陰に埋もれた言葉が
余計にわたしを傷付けた
暗闇が嫌だから全て光にしたかった
でもそんな事出来るはずもなく
ただ何も信じられず疑うしかなかった

カーテンの隙間から溢れる光が
朝を告げる
まるでわたしを暗闇から救う光のようだった
そこにはもう
以前のわたしは居なかった
わたしは赤ん坊のように
生まれ変わった気がして
本当の意味での
わたしを、
人生を、
生きることを、
輝きを、
ようやく見つけられた
同時に醜かった過去が
一瞬でも輝かしく、愛おしく感じた
全てが起こるべくして起こった事だと
悟らされた
そして見えなかった愛に
ようやく気付く事ができた
手の届くところにあったのに
気付けなかった
でも、もう苦しまないよ
最初から愛で包まれていたのだから
もう傷付かなくてもいい
祈りも愛もわたしの中にある

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