見出し画像

型破りの青春

モントリオールでの1ヶ月半があっという間に過ぎました。これからフィンランドに向かう飛行機に乗るところ、乗り継ぎのストックホルムの空港のベンチでこれを書いています。

「型破りの青春を謳歌してください」

モントリオールでの今夏最後の試合の日の朝、モントリオールに来てから知り合ったおじさまからのメールの文末にそうありました。

型破りの青春という言葉がすごく素敵ですぐにメモ。確かにこれは、型破りの青春かもしれないなと思うとすごくキュンとして、ここに来るまでの過程と何故か思い入れが強かったモントリオールへの遠征が実現できたことを振り返っていました。

誰一人、何一つ知らないままとりあえず飛行機と宿泊先を予約して渡ってきたモントリオール。そんな型破りの青春ができた2024年夏についてせっかくなので語りたいと思います。先に言っておきます。長いです。笑 長いので気になる章だけでもぜひ読んでいただけたらとても喜びます。

ずっと戻ってきたかった北米

大学を卒業してから、もう一回北米に戻ってホッケーをしたいとずっと言っていました。1回目の北米は正直、大変の方が強かったと感じるからこそ。英語も周りと同じくらいには喋れない、北米の文化も何も知らないまま行って、一つ一つの出会いや経験を楽しむよりも何よりも、初めての大変さや怖さや緊張の方が優って上手くいかないこととか悔しいこととかがどんどん積み重なっていく毎日を少しずつ登りながら大学を卒業できた感覚でした。自分にとってそれは必要なステップだったし、それがあって今があるからもちろんプラスなんだけど、それでも今度は、英語を喋れて、文化もある程度理解していて、少し余裕のある自分で北米の新しい地に降り立って生活を始める経験をしたい。そしてもう一度、そんな自分として北米でアイスホッケーをしたい。大学を卒業して2年、そんな思いがだんだん強くなってきていました。

6月の半ば、ダメ元で行きたいと思っていたモントリオールのこの3対3トーナメントに参加できると連絡をもらい、ギリギリなのも分かっていたけど、どうしても行きたいと直感的に行くことを決めました。

正規のシーズンではないし、夏のトレーニングの意味も込められた3対3のリーグだったけれど、大袈裟かもしれないけれど、神様から与えてもらった第2のチャンスだと思いました。北米でアイスホッケーをする2回目のチャンス。3対3に毎年出ているのは、カナダ代表選手をはじめとした誰もが知っている世界トップの女子アイスホッケー選手たちで、男子の方は、モントリオール出身のNHL選手とAHL選手で固められていて。この場で、このレベルで試合がしてみたかった。世界トップのレベルで活躍している人たちと同じ場所で毎日トレーニングして、毎週チームメイトやライバルとしてアイスホッケーをしたかった。そんな思いだけで後は特に深く考えずに挑戦を決めました。

参加することを決めてカナダに渡る日までは、試合がない日の練習環境探しをし、宿泊地も練習場の近くで探して無事に予約。トレーニングセンターに連絡した時は「基本的にカナダ代表選手対象の練習で、質の良い練習をするために人数制限があるから、人数達してない時だけ来てもいいっていう感じだけどそれでも良いならおいで。ウエイトトレーニングは既に定員を超えているから参加できない」と言われたけど、カナダだからどこかしら練習があるだろうと、とりあえず来てなんとかしようと思って、こっちにやってきました。

これまでの経験的に、こういった場に一人で乗り込んでいくと、最初はよそ者感がすごく強くて遠巻きに見られて、皆んなに受け入れてもらえるまでに時間がかかると思っていたのでカナダに行く前は久しぶりにすごく緊張していました。自分で望んでいくはずなのに、直前でちょっと逃げたくなるようなこの感じ。「久しぶりだな、この感覚」と思いながら初めての練習の日は朝から緊張して早めにリンクへ向かい。だけど着いてみると、ものすごくウェルカムしてもらい、色んな人に「よく来たね」と言ってもらい、こんな世界があるのか、と思いました。レベルの高い場所ほど外から来た人に対して厳しい反応になると信じきっていた、自分の常識が少し覆った瞬間。その後初めての試合でテクニックでディフェンスを抜いた後、ベンチに戻るとみんなの反応が更に変わっていて、今まではあまり経験してこなかった、実力を認めてもらい仲間に入れてもらうを経験できたこともとても嬉しかったです。


初試合

最低限、氷上の練習時間が確保できたら、後は自分でジムでも通ってトレーニングしよう、と思っていた当初の心配をよそに、結果的にカナダ代表とプロ選手の練習にも結構参加させてもらい、カナダの大学リーグチャンピオンだった大学での練習にも誘ってもらい、それに加えて平日はプロ組のウエイトトレーニングに毎日参加させてもらい、コーチに「毎日練習しすぎても怪我のリスクとかあるからそんなにしないでいいよ」と言われるほど毎日全力で取り組める環境を与えてもらっていました。「日本からせっかく来たから」と、色んな人が本当に親身になって環境を与えてくれて、時間をとってビデオミーティングをしてくれるコーチもいて、今まで一番くらい本当に質の高い練習とトレーニングを1ヶ月半重ねることができた物凄い充実した1ヶ月半でした。

今まで画面上でしか見たことなかった、世界一の国の中でもトップ選手たちとトレーニングや練習、そして同じチームで試合をし、たくさん刺激を受けて挑戦できる最高の夏。今までもずっとカナダに来たい、うまい選手たちと一緒に居たいと思っていたけれど、今だからこそ叶った、というかこのタイミングで叶うべくして叶ったことだなと結果的に思います。

数年前の自分なら、3年前の自分なら、1年前の自分なら、「このリーグに挑戦したい」と思ってもどう行動したらいいか分からなかっただろうし、トレーニングセンターと自分でやりとりしてこの環境に飛び込むこともできなかっただろうし、チームに所属するわけでもないのに夏に一人で海外に来て合宿するなんて考えもなかったと思います。エージェントをつけたりしたら逆に得られなかったような経験も、ずっと行きたい、やろう、やってみようとなったから実現できたのだと。

計画も何もしていなかったけど、タイミングが重なって、結果的にこの夏が再び北米に挑戦できる最高の機会になりました。初めての北米の経験から今までが、この夏に繋がったのだと思うと、つい大変なことばかりを思い出しがちだった大学生活とか海外での失敗とかにより愛着が湧いて。大学時代のリベンジでもあり続きでもある、型破りの青春。自分の過去にありがとう〜〜!!と、今はちょっとエクストラに思うことができます。

実現可能にしてくれた人たちへ

出発するには3週間もない時期にこのリーグでプレーしてもいいと連絡を受け、「いく!」と即決しつつも、心の中で「でもこの時期にどうしよう」と思っていました。春と夏の初めは、一年の中で唯一家族と過ごせる時間でもあって、それを1ヶ月早めてカナダに行くことになる。その後はそのままフィンランドに移動する。夏の間に家族で計画していたこともあったし、家族のために日本でやりたいこともあった。でもこの話をした瞬間、両親二人とも「すごい機会じゃん!!!行っておいで!!!」と喜んでくれたのを見て、「行こう!」とすぐに思うことができました。お父さんお母さん、快くそして喜んで送り出してくれて本当にありがとう。そして毎週朝早くからライブで試合見てくれてありがとう。いつも応援してくれてありがとう。2人がいるから私はいつも挑戦できていると本当に思います。モントリオールきてよかったよ、最高だよ。

そして知り合いゼロで来たはずのカナダなのに、気づけば家族みたいな人ばかりに囲まれてモントリオールを去ることになっていました。初めての試合で、「誰も知らないのに一人で来たの?すごい勇気あるね」と言ってくれたチームメイト達。今までは、勝負の世界では特に、過程とか決断はいくら大変なものでも自分が踏ん張るのが当たり前のもので、見てもらえるのは結果だけだと思っていたから、その決断自体をちゃんと見てくれる人がいて本当に嬉しかったです。毎日練習やトレーニングに行くとみんなが声をかけてくれる。モントリオール出身のトップ選手が集まる場に7週間毎日通う外から来た私を普通に受け入れてくれ、休みの日にはフェスに誘ってくれたり、トレーニングの後車で送ってくれたり、オススメのカフェを教えてくれたり。「また来年の夏戻ってきてね」と言ってもらえたその言葉だけでここに来て仲間になれてよかったと心から思います。

本当にみんな優しかったし超学ばせてもらったチーム
着いた翌週には新しい友達が連れて行ってくれたフェス

そしてアイスホッケー以外でもたくさんの方にお世話になりました。まさかのモントリオール滞在もあと5日というところで泊まっていたエアビーを追い出されるなんてハプニングもあったけれど、その時は、こちらで出会った日本人お姉様とご主人が快く家に泊めてくれることに。毎日美味しいご飯を素敵な家でご馳走になり、自分のためだけに同じような料理を作っていた毎日から素敵な食卓を囲む毎日に、日常が一気にグレードアップしました。家族のようにこんなに愛を注いでもらって短期間でモントリオールに家族と呼ぶような人たちが出来ました。ここで出会った日本人のお友達とはいろんなところに遊びに行って、観光にも付き合ってもらって、短期間なのにものすごく濃い時間を過ごすことができました。最後の方は、気がついたら毎週末のオフは暇がないほど色んな方との予定が増えて。日本にいる知人を介して繋がった日本人のご家族は、週末にお寿司に連れて行ってくれたり、観に来てくれる予定だった最後の試合は風邪をひいて観戦できないにも関わらず、お土産とその日の夕食まで差し入れで持ってきてくれたり。誰も知らずに、なんのコネクションもなしにきたはずなのに、1ヶ月半の間に仲良くしてくれたり、気にかけてくれたり、応援してくれたり、お世話までしてくれる人たちがたくさん出来て、最後のお別れの時は本当に泣きそうになりました。本当に人に恵まれ続けていたなあああ。モントリオールでの生活がこんなに充実していたのは本当に、ここで出会った人たちのお陰です。本当に本当に本当に、ありがとうございました。みんなにこの愛が届きますように。


5日間泊めてくれたミッキーさんと
ミッキーさんのお庭で朝ごはん
仲良くなったあきちゃんとノートルダム聖堂デート


チャレンジし続けられた1ヶ月半

毎日のアイスホッケーで上手くいく日も課題もあり、間近でトップ選手と競争したり一緒にプレーしたりして感じることもたくさんあったけれど、この期間は常に、どんな時も「今」に集中して全力で挑戦し続けようと思っていました。シーズンを通してプレーするチームではないからこそ、評価を気にせずに思いっきりプレーできる環境。詳しい毎週のアイスホッケー日誌はメンバーシップに書いていましたが(メンバーシップ見てくださっている方々ありがとうございます!!)、一番印象に残っているのは一番最後の週の最後のプロとの練習です。

カナダ代表選手とPWHLのプロ選手しかいない日で、スキル練習の日ではあったものの、トレーニングキャンプ終盤ということもありバトル中心のすごくインテンスな練習。スピードも速いしフィジカルバトルもあるし、速いリアクションも求められる。その時はもう「どうしよう」なんてそんなこと一切感じることなく、毎シフト全力で何も考えずにただただ勝負するその気持ちと勢いが自分にあることに気づきました。1対1のバトルのドリルでスタートの合図がなる前の自分の感覚がなぜか鮮明に頭の中に残っています。あの時の自信というか体で感じた「やるしかない」という自分を信頼するような感覚が、最近の中では一番心地よくゾーンに入れたような感覚だったような。スキルや経験や強さで言ったら同じレベルとは決して言えない相手達だけど、そこに臆さずに挑戦できている自分を感じて、どこまでかはわからないけど「まだまだいける」「成長している」と思えたことが心から嬉しかったです。最後の試合まで、段々とスコアが増えて行ったり得点に絡む頻度が高くなったりして実際の場で経験と実績を積めたことが自信になって来たかな、と思っています。

ここで世界トップの選手と一緒にプレーすることで、改めて自分の心の中で強く感じる目標もできました。また同じ舞台で戦えるように戻ってきます。

リーダーであること

もう一つ、今回この環境で感じたのはリーダーの在り方について。チームカナダのキャプテンやチームカナダとして長年活躍してきている選手など世界のアイスホッケー界を引っ張るリーダーを間近で観察し続けて、リーダーとは「自分の余裕があるときだけリーダーなのではなくて、常にリーダーなのだ」と改めて感じました。

自分が今回どれだけ受け入れてもらったかもそうですが、他にも、彼女達が周りの人にどう接しているかを常に見て、強く感じたこと。人間的な部分を持ちつつも、ユーモアがありつつも、本当に大事な場面で誰かを傷つけたり犠牲にしたりしないところ。そして自分達の今を積極的にコミュニティや次世代に還元しているところ。

一緒のチームでプレーしていたチームカナダのキャプテンともう一人のプレイヤー(二人は最近結婚しています!超お似合いだしおめでたすぎる)は、忙しい時間も積極的に時間を作って次世代へ向けたアイスホッケーキャンプを開催したり、どれだけ疲れていても負けた試合でも、観に来てくれた小さいファン達にサインするために最後まで試合会場に残ったり。

世界トップチームのリーダー達をみて、こういうリーダーがいるから組織も強くなるし、その次の世代も育っていくと思いました。

そして自分もそういうリーダーになりたいし、こういった経験をさせてもらっている以上そうあるべきだとも。

もちろん自分が成長して行くことが自分にとって大事だけど、リーダーであるということに関しては自分のためではなく、今まで自分一人では決して成立し得なかったここまでの経験を還元していきたいなと思うし、すごく綺麗事に聞こえてしまったとしても、周りの人とか社会とか大切な人たちにとって良いものを残していきたいと思います。

アイスホッケープレイヤーとして技術を高めていきたいと思うのと同時に、人間的な部分でももっともっと成長できるし、そういった意味でも必要とされるアスリートでありたいと強く思います。まずは今目の前でできることからだけど、改めて去年から主催している Beyond Edgeの存在意義とかそれを通してコミュニティに還元できることを考えさせられました。これは利益とか関係なく持続的にずっと続けて行けたらな、と思っています。

情熱を持って仕事ができる幸せ

今回、モントリオールへのチャンスが浮上した時にすぐにいけたのも、自分がどこにでもすぐにいける状態だったから。前もどこかで書いたように、去年あたりからアスリート社員とかデュアルキャリアとか興味あるなと思っていたのですが、うまく自分のやりたいこと・できることとアスリート社員として求められることとが一致しなかったり拠点に制限がかかったりしたのもあって、だったら自分で始めよう!と夏から海外行きたい人向けにコンサルを始めたり、英語指導したりしていました。

でもそれ以外にもやっぱり何か挑戦してみたいと密かに思っていたところ、今回、モントリオールにいる間に新しく、日本のUpmindというマインドフルネスの会社でもお仕事させてもらうことが決まりました。元々ずっと海外のマインドフルネスアプリを使っていて、でもUpmindのことを知ってからなぜかもう直感的に「ここでお仕事したい」と思いその熱量のままその日にコンタクトし(たまに自分でもビビるくらいの瞬発的行動力を発揮します)、8月からご一緒させていただいています。

やってる内容は一旦置いておいて、自分が今まで興味を持って自分なりに勉強していた分野でもあり(自分のためなのでかなりムラはある)、自分自身がメンタルヘルスであれこれを経験してきたこともあり、会社のビジョンすごく共感するし、関われることを幸せに思いながらとても楽しくモチベーション高く仕事させてもらっています。いろいろなことをさせてもらいながら自分に対しても「こういうこと知らないな」とか「これは今はまだあまり得意じゃないな」とかも気づきながら、(毎日すごく色んなことに気づかせてもらってます)、たくさん学んで成長させてもらっております(成長の部分に関しては希望です笑)。パッションを持って関われる仕事ができる機会をいただけたこと、なのにかつ柔軟な時間で関わらせてもらっていることに感謝の気持ちでいっぱいなので、ここから精一杯貢献できたら嬉しいです。

アイスホッケーと仕事と、自分の中でも使う部分が違って、両方とも全力でやることで両方のパフォーマンスが上がっていて、調子いいなとすごく感じます。いただいたチャンスに感謝しながら、これからも全力で取り組んでいきたいです。

ありがとうモントリオール

計画していなかったけど思わず良いことが起こったり、素敵な出会いに恵まれたり、目の前のチャンスを掴むことができたり、そんなことの連続でとても濃い1ヶ月半でした。改めて、モントリオールにきて本当によかった。辛いとか大変とかあまり思うことなく、健康で無事で快適に過ごせたのは、本当に出会った人たちのおかげだと思います。

改めて。全てのことが自分で実現できているわけではなくて、むしろ、目の前のチャンスを掴む勇気が出た自分というのもこれまで色んな人に支えてきてもらっているからいるわけで、もういつも言って聞き飽きてるよって思う人もたくさんだと思いますが、これを何倍にもして返していく、還元して行くのが私の長期的な使命でもありやって行くべきことでもあると思っています。そのためにも今は、目の前にあることを全力で取り組んでいって起こしていく小さなポジティブの重ねで前に進んで行けたらいいな、と思います。

いかにも今年のハイライト的なテンションで書いてきましたが、ここからまた新しいシーズンが始まります。次の行き先はフィンランド。去年は北米の夢が叶わずにその次の選択肢と思って行った北欧の舞台。でもフィンランドでの去年があってこそ今年の夏はカナダに行くことができたので、また今年もこの置かれた場所で全力で咲きに咲いて、良い方向に進んで行けたら良いなと思っています。

モントリオール生活を応援してくださった皆さん、出会ってくれた皆さん、本当にありがとうございました!おかげさまで型破りの青春を謳歌した夏を過ごすことができました。この夏を経て、またパワーアップした佐野月咲として今シーズンも過ごしていきたいと思うので、暖かく見守っていただけたら嬉しいです♡

月咲


いただいたサポートは海外での活動費や、日本でのスポーツ支援活動に使用させていただきます!いつも本当にありがとうございます!