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作詩-言葉たち-vol2

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2016年4月の記事一覧

涙雨を抱いて

大気に孕まれた水が
空気の境を這い出してくる寸前
空があついねずみ色を帯びる
きっともう涙腺は限界なんだ

それでも泣けない君の背を
風があたたかく撫でてゆく

生温い風はヒトの不快指数を上げるけど
赤ん坊が泣くのは当然のように
悲しみを抱えきれない涙が産声をあげるのだって
当然じゃないか

涙を拭ったりなんてしなくていいよ
ただ 今は泣けばいいよ
寄り添う腕はそこにあるから

たくさんのものを見

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思い出すということ

流されてゆく自分
流れてゆく時間
さらさら さらさら・・・・・・音も立てずに

――今何が見えているの?

こたえようとして思い知る
一瞬前のことを思い出せない

言われなければ
忘れたことすら忘れたまま
何も残せずにいた、と
空恐ろしくなる

自分も、時間も、街も、みんな
流れゆくことに慣れすぎたの?

私が見ているもの
見えているものが、見ているもの
立ち止まってみないとわからない自分の記憶

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