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杜若と在原業平

杜若(かきつばた)。
燕子花とも書く。
5月から6月にかけて咲く、和の風情のある花。

『和の美を育む』という木村孝(きむらたか)さんの本には、たおやかな美しい言葉で日本の美が紹介されている。
繰り返し読む、好きな本だ。
その中の「杜若」。

『古今集』の中に、伊勢物語の作者、在原業平の歌が出てくることに触れている。

からころも きつつになれし つましあれば はるばるきぬる たびをしぞ思ふ

「かきつはた(杜若)」の五文字が句の頭に読み込まれていることで知られる句を紹介している。

また、この句は、句の終わりの文字を逆に読めば、「ふるはしも(麗しも)」
と読み込まれていることがわかる。

なんと優雅で知性のある句だろう。

「こうしたことを知ると、絵画や文様の意味もひとしお興味深く感じられることと思います。」と締められた文章。

恥ずかしながら私は、杜若もあやめも菖蒲も・・・どう分けていいのか、理解していなかった。

杜若は、花弁の根元が白一色で模様なし。
あやめは、花弁の根元が白と黄色、網目模様がある。
花菖蒲は、花弁の根元が白と黄色、模様なし。

それぞれ背丈も自生する場所も異なるという。
あやめと菖蒲はユリ目、杜若はキジカクシ目アヤメ科アヤメ属に属するという。

池や沼などの近くや湿地に自生するという杜若には、その間を歩くために八橋がつきものだということから、「流水」「八橋」「杜若」の意匠も、工芸品やきものの文様によく見られるという。
(八橋というお菓子もあるが、細い板を継ぎ渡して折れ曲がった形にかけた橋のことである。)

燕子花とも書くのは、花の姿が飛ぶ燕に似ているから。
「顔佳花(かおよばな)」という別名もあるのだという。
典雅な花の美しさ。

もうすぐ、端午の節句。
兜を出さなければ・・・と思いながら読んだ。

和の美しさが散りばめられた本である。



書くこと、描くことを続けていきたいと思います。