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ホースシューネックレス

天使みたいなショートカットにフレアスカートで、いつも素敵な靴を履いていた。

40歳半ばとはとても思えないスタイルと、可愛らしさを持っているその人は、
鎖骨が少し見えるくらいに襟が開いた淡い色のアンサンブルに、きらりと光る
ホースシューネックレスをしていた。

とても小さい金色の馬蹄形で、光る石が埋め込まれていた。

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蹄鉄は幸運のお守り、と聞いたことがある。
『U字が幸運を受け止める』のだそうだ。

馬が生活に欠かせない存在だった西欧では、馬の蹄を護る蹄鉄を、魔除けのお守りとしたと聞いたことがある。
多くの民家の玄関に古蹄鉄が飾られていたそうだ。

ケルト民族の神話では、神の一族の戦いにおいて鉄器と騎馬で勝利を収めたというエピソードから、馬蹄は邪気を追い払う力があるともされていた。

イタリアでは、昔、村人が権力者の馬の蹄鉄を直し、収入を得たことから、『幸運のアイテム』として扱われたとか。

そして、蹄鉄を打ちつける時の釘の数が『7』。
内側に3本、内側に4本で、ラッキーセブンになる。


「幸運のお守りね。よく似合っている。」
というと、顔が綻んだ。

「実は、馬がとても好きなの。大学時代に乗馬をしていて。
馬は賢くて、私に寄り添ってくれる大事な友達だったの。」

大学まで過ごした神戸から結婚を機に関東へ来て、高校生と中学生の息子さんがいた。
離婚したばかりで、20年の主婦業を経て働き出したばかりだという。
元々、この世のものとは思えないような純粋さで生きている人だから、社会の荒波に揉まれるのは、辛いことのように見えた。

思い出のマーニーに出てくるような水辺の家に、薔薇を育てて住んでいた。
育てた薔薇の写真は、見事だった。
「この家があるから、やっていけるの。」

ふわりとしたカーテンが揺れていた。

透明感がありすぎて、眩しいくらいだった。
今は、どうしているだろう。

家が離れてしまい、コロナが広まってから会えなくなってしまった。
馬蹄のネックレス、フレアスカート、素敵な靴。
彼女らしい軽やかさ。

再び会える日を待っている。





書くこと、描くことを続けていきたいと思います。