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干し草の中から美容師を探す

昨日、初めての美容院に行った。
かれこれ10年以上、実家のすぐ近くの美容院に通っていた。最初は駅前を歩いているときにカットモデルをやりませんか?と声を掛けられたのがきっかけである。当時大学生の私は、厳しかった高校時代までの反動か、長く伸ばした髪を明るくしたりパーマを当ててみたりと色々試しては変えてをしていたので、多少下手でもタダで切ってくれるなんてラッキーと思ったのだ。

そもそも中学高校の頃はイギリスの全寮制の学校にいたので、美容院で髪を切れるのは年に3回だったし、前髪は自分たちで切っていたので、2-3ヶ月おきに1万円前後かかる美容費に辟易としていたのだ。とはいえ無料に釣られて知り合った美容師さんとその後10年以上の付き合いになるとは想像もしていなかった。

厳しかった中学高校時代の話はこちらの記事でも少し言及しているので、もしご興味があれば↓

大学を卒業し、就職したタイミングで地方配属になった。陸の孤島のような場所だったにも拘らず、自ら死ぬ確率を高めることはあるまいと思い、車は買わなかった(私は著しく運転が下手なのだ)。足がない故、消去法で駅前のそれっぽい雰囲気の美容室に行ってみたが、私の頭の形や髪のクセを把握しているいつもの美容師さんには到底敵わなかった。それ以来、遠方に住んでいても必ず実家の近くの美容院に行くことにした。

幼少の頃から髪の長い女の子に憧れていたが、厳しい祖母の「髪は短い方が賢く見えるから」という持論により、会う度に短く切られていた。中学生になり、前述の寮生活が始まった。学校が始まると次に帰宅するまでの間にかなり髪が伸びる。そして休みの間に美容院でコッソリ「伸ばしたいのであんまり切らないでください」とオーダーし、大して長さが変わらないまま帰ってきたら私を見た母は不満げではあったが、翌日から長期間離れ離れになる娘に対して文句は言わなかった。

そんなこんなで高校生の頃には憧れのロングヘアになったのだが、二十歳の誕生日に思い切ってショートに戻したら周囲からはショートの方が断然似合うと絶賛された。私の髪の長さに込められた憧れと地道な努力を思うと認めたくなかったが、確かに自分でも髪は短い方がしっくりきた。

それ以来、結婚式のタイミングを除いては10年間ショートヘアを貫いていたのだが、ある日、白髪が生えたり髪が細くなって髪が衰える前に人生最後のロングヘアを謳歌しようと思い立った。

切りたい衝動を何度も抑え、うねりが止まらない梅雨も、頭の中がサウナ状態の真夏も乗り越え、わずか一年で立派なロングヘアになった。しかし、イマイチしっくりこない。せっかく伸ばしたのだからヘアアレンジでもしようと思うのに、髪の量が凄まじく多いので全然お手本どおりにできない。どの美容院に行っても「こんな毛量は見たことない!」と驚かれるレベルなのでポニーテールさえ満足にできない。色々と調べて試行錯誤しまくった結果、このポニーテールチューブを2本使えばなんとか1つに結ぶことができた。

結び跡が付かないのも推しポイント。毛量が多い人、特別多くなくても髪を長時間しっかりまとめたい人は試さない理由がない↓

それでも理想のロングヘアとはなんか違うし、来週招待されている結婚式に向けていくら練習してもキレイなまとめ髪ができない。かと言って美容室でセットしてもらうほどの気概もない。ということで、急遽バッサリとショートに戻すことを決断した。

急いでいつもの美容院を予約しようと思ったのだが、そう言えばその美容師さんは先月から新しい美容院に転籍したのだったと思い出した。切る技術はひとえに美容師にかかっていると思うものの、従前の美容院と雰囲気もかなり違い、単価も高い。行ってみて気に入るかもしれないが、家からも遠いし、これは新たな美容師を探す時が来たのかもしれないと思った。

特に女性の方は分かるかもしれないが、自分に合う美容師を探すのは至難の技だ。干し草の中から針を探すより難しい。美容院自体の口コミが高くても、結局当たる担当の腕次第だし、担当にも当然得手不得手がある。最近美容師自身が自分の技術を動画やリールにまとめてInstagramで発信しているのを見かけるが、腕が良さそうで行ってみたら、態度が横柄すぎて失敗だったという話もよく聞く。 

色々とリサーチを重ねた結果、とある美容師に行き着いた。しかし基本のカット料金が4500円くらいなのに、指名料も4500円する。そもそも指名料を取る美容院で指名をしたことがないのに、カット料金と同じ値段の指名料。9000円あればトリートメントをしてもお釣りが来る。一瞬指名料のかからない美容師で妥協しようかとも思ったが、それではリサーチの意味もない上に、胸下まである髪をバッサリ切るのに何の根拠もない美容師に預けていいものか甚だ疑問である。結局、清水の舞台から飛び降りる思いでカットだけで9000円の予約を取った。

予約した店は程よいアクセスの場所にあり、最近オープンしたところでピカピカだった。初対面の人に髪を触られる経験が非常に久しぶりで緊張したが、9000円払って緊張までしては割に合わんと思って努めて平静を保った。私がその美容師を選んだのはショートカットを得意としているという情報を得たからであるが、バッサリ切りたい旨を伝えると「絶対にかわいく切れます。任せてください。」と言われた。

私は人見知だし、美容院でよくある、間を持たせるためだけの世間話はしたくない派だ。その美容師は黙って鏡を見つめる私に対して、自分のショートカットスキルに対する自信の高さと、ショートに切る上でのうんちくをちょこちょこ独り言の延長のように語っていた。アメリカ人ならば"ME! ME! I can do this! Let me handle this!"くらいのテンションでいてくれないと、本当にこの人に頼んで大丈夫かと不安になるが、謙虚な日本人がこんなに自信に満ち溢れていて、しかもそれを口に出すのは珍しい。

ビッグマウスでないことを祈りながらカットの様子を見たり、独自のテクニック論を聞いていると、次第に言わんとしていることが分かってきて面白くなってきた。暇つぶし用のタブレットも渡されていたのだが、素人目にも分かる見事な手捌きに、次第に目が釘付けになった。

仕上がりが近づき、私にも完成系が見えてきた頃に「すごく上手だけど、なんかあと一歩足りない気がするなぁ」と心の中で思ったのだが、敢えて何も言わなかった。しかしそれも計算のうちだったようで、最後の最後に私が気になっていたところを整えていた。そして完全に施術が終わり、鏡を見るとそこには完全無欠のショートヘアがあった。事前に伝えていた、すぐにクセが出ることやヘアセットスキルが皆無なこと、仕事と小さな怪獣の育児を両立していて髪に気を遣う余裕がそんなにないこと等全てを考慮した仕上がりで、効果的なアドバイスももらった。

そしてその夜お風呂に入って自分で乾かしても、翌朝起き上がって鏡を見ても、最後に美容室の鏡で見た仕上がりと何ら変わりがない。いつも「どんな髪型でもかわいいよ」しか言わない夫が、言葉を失うほど感動していた。かく言う夫自身は、指名どころかいつもセルフカットなので料金についてどう話したものかと悩んだが、杞憂に終わった。私は、干し草の中から運命の美容師を見つけたのだ。

その美容師は「ショートカットが似合わない人はいない。自分のところに来れば必ず完璧なショートヘアに仕上げる。」と豪語していたので、今のショートカットがイマイチ気に入らない人や、ショートに挑戦したい人は是が非でも行ってみてもらいたいと思う。指名料の4500円は絶対に価値がある。

この美容師を日本中のショートヘアと潜在的ショートヘアの方に紹介したくて堪らない気持ちと、誰にも教えたくない気持ちが拮抗している。ということで、今回は対価を払ってでも完全なショートヘアを手に入れたい方にのみ公開することにする。立地は東京23区内とだけ書くが、遠方から訪れる価値は大いにある。

※有料部分には、今回私が感動した美容師のお名前、ご本人の仕事用InstagramのURL、お店の予約サイトのURLを記載しています。
※ご本人とは今回初めてお会いし、貼ってあるURLから予約しても私には1円の紹介料も入りません。
※料金は端数は切り上げており、クーポンやポイントも使ったため、正確なものではありません。

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