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【Vol.1】映像撮影技術の集大成。制作環境に変革をもたらす「GH7」、誕生。

2024年6月6日(木)、LUMIXはGHシリーズの新しいラインナップとして「LUMIX GH7」を発表しました。

GH6の発売から約2年。LUMIXは、像面位相差AFの搭載やリアルタイムLUTの開発など、様々な面で進化を遂げてきました。

GH7では、これらの進化はもちろん、進化し続ける映像制作の現場に向けて、大きな利点と変革をもたらす新たな取り組みにも挑戦し、あらゆる面でクリエイティブな活動を支援できる機能を取り入れています。

こちらの記事では、そんなGH7の魅力や開発背景を、それぞれの開発メンバーからお話しします!

開発チーム

「Mr.GH」 香山、開発を振り返る

商品企画:香山

この度、満を持してGH7を発表しました。

このカメラには、これまでLUMIXでは実現できていなかった様々な機能が搭載されています。

具体的な機能や開発話をご紹介する前に、簡単にGHシリーズの歴史を振り返りましょう。

これまでにもお話したことはありますが、GHシリーズは当初「ファミリー向け」に開発された歴史があります。

お子様の学校行事や家族のイベントなどで活躍する「写真も動画も撮れるハイブリッドなカメラ」として世に出した訳ですが、転機となったのはGH2、そしてGH3です。

GH3

GHユーザーの間では語り草となっている、とある事件が起こりました。

そう、GH2のファームウェアがハッキングされ、高いビットレートでの撮影が可能なファームウェアが広まったんです。

我々メーカーとしては、動作保証という観点からこのような行為は推奨できるものではありません。

しかし、視点を変えると「お客様がアレンジして引き上げられた、カメラ本来のポテンシャル」に、我々も気づかされた機会になりました。

実際、海外で実施されたブラインドテストでは、名だたる映像制作向けのカメラを差し置いて、ハッキングファームウェアを搭載されたGH2の映像が最多得票を取った事例もあります。

こうした当時の背景から、「GHシリーズはより高尚な映像制作を叶えるカメラになれる」と、方向性や可能性を改めて見つめ直す転機となり、今回のGH7まで、その思想は受け継がれています。

GH7の進化点

GHシリーズはこれまでに、以下のような系譜を辿ってきました。

GH1:写真も動画も綺麗に撮れるミラーレスカメラ
GH2:フルHD60fps対応ミラーレスカメラ
GH3:ALL-Intra/IPBのMOV形式に対応
GH4:世界初「4Kが撮れるミラーレスカメラ」
GH5:世界初「4K60p動画が撮れるミラーレスカメラ」
GH6:フルサイズ級の画質を叶える「ダイナミックレンジブースト」、多彩な表現を実現する「スローモーション撮影」など

時代のトレンドやクリエイターの皆様のニーズを汲み取りながら、エポックメイキングな機種たり得る性能を実現しています。

そして、この度GH7では、大きく以下のような進化を遂げることができました。

・「像面位相差AF」搭載
・「リアルタイムLUT」搭載
・「ダイナミックレンジブースト」のISO感度領域を大幅に拡大
・「Apple ProRes RAWの内部収録」対応
・「プロキシ記録」搭載
・「Frame.io」対応
・「32bitフロート録音」対応
・「ARRI LogC3」での撮影を実現

クリエイターの皆様に、驚きと喜びをご提供できるカメラになっていると思います。

これらは大きな例であり、これら以外にもGH7では様々なアップデートがなされています。詳細は、それぞれの担当者からお話させていただきますので、そちらも是非ご覧ください。

GH7実現に至る背景、商品企画の想い

GH7を実現するにあたり、開発メンバーの皆さんには多大な無理をお願いしました。

ここ数年、社会情勢の影響もあり、映像制作の撮影スタイルも変わってきています。

特に「ワンオペ」、つまり一人で複数の作業をこなすスタイルが増えてきました。

だからこそ、カメラとのマッチングやスムーズな編集を終えるためのワークフローが重要であり、かつ、クリエイターとして映像作品が評価され、自身の名前を広く認知させていくことも、クリエイターの重要な戦略になってきているように感じているんです。

そのため、GH6からこだわってきた「表現力」、豊富なフレームレートやダイナミックレンジなどは、GH7でも確実に維持していきたい。さらに、動画記録無制限の信頼性や、LUMIX同士の絵合わせによる編集耐性の自由度も重視し、ワークフローへの更なる貢献も叶えたい、そう考えました。

そこで、GH7には協力会社との連携を含めた機能進化を盛り込み、これを実現することを開発メンバーにも強く要望してきました。

社内開発では時間軸やスピード感をコントロールしやすいですが、協力会社と進行する場合、マッチングやビジネスとしてWin-Winの関係を築くためには、繊細なコミュニケーションが必要不可欠。様々な苦労をさせたと思います。

また、「編集の自由度」と対局にある「撮って出しのクオリティ」にも強くこだわりました。これも、リアルタイムLUTとの連携により、撮って出しから高いクオリティの映像を実現しています。

さらに、AFの進化や、空冷ファンを搭載しつつも小型軽量に抑えるなど、様々な面で開発に要望を出しました。

なぜなら、GHシリーズは「マイクロフォーサーズの中で最もハイエンドなカメラ」であり、GH7は「これまでのハイエンドカメラから、さらに一段階高めた完成度」をクリエイターの皆様に提供したいと考えているからです。

開発メンバーには無理なお願いもしましたが、ゴールを共有し、同じ目的に向かって開発を進めることができました。このカメラが皆様のお手元に届くことを、非常に楽しみにしています。

クリエイターの声を形にした新機能

機種リーダー:堀江

香山は「メンバーにたくさん無理を言った」と言いましたが、GH7では設計や技術のメンバーからも「こういったカメラにしていきたい」と多くの提案をさせてもらい、様々な課題に取り組んでいます。

GH6の開発期間中は自粛期間だったこともあり中々現場で生の声を拾うことが難しかったのですが、GH7の開発期間では状況が緩和され、クリエイターの皆様からGH6の改善点やご要望も多く頂戴することができ、多角的な視点からワークフローへ貢献できるよう開発を進めることができました。

GHシリーズが既に築き上げてきたブランドイメージや信頼性を損なわないよう挑戦していくことはプレッシャーではありましたが、「現場で止まらないカメラ」であることは絶対に譲れない要素として維持しつつ、新機能を盛り込むことができて嬉しく思います。

個人的に特に印象的な進化が「32bitフロート録音」の対応です。

GHユーザーにはワンオペの方が多いため、現場の省力化に貢献できる機能を非常に強くご要望いただいていました。フロート録音もその一つです。

動画撮影では「音の収録」も大きな課題となります。音声収録の面でも大きく貢献していくため、今回GH7に合わせてLUMIX純正アクセサリーの「XLRマイクロホンアダプター」をリニューアル(DMW-XLR2)しました。

また、Apple ProRes RAWの内部収録ができるようになったことも大きなメリットだと感じています。

もとより高い電力を消費する記録メディアに対して、さらに高いビットレートで読み書きさせる。これをGH6から大きく筐体のサイズを変えることなく実現することは、正直非常に厳しい条件でしたが、なんとか実現することができました。

GH6のボディはご好評をいただいており、ご利用されているサードパーティ製アクセサリーとの互換性の観点からも、GH6からボディを大きく変更しないことは、検討当初から決定されていました。

GH7は、これまでのGHシリーズの信頼性とブランドイメージを維持しつつ、さらなる進化を遂げたカメラです。

ぜひ手に取って、その優れた性能と使いやすさを実感していただければと思います。

「心を動かす映像制作」を追求したカメラ

マーケティング:中西

カメラを通じて映像制作をする際、多くの場合「人の心を動かせる映像を作り続ける」ことがクリエイターにとっての普遍的な目的であり、映像作品の価値だと考えています。

これを前提とした場合、カメラに求められる重要な要素は「いかに品質の高い映像を撮影できるか」と「いかに手間なくクイックに作品化できるか」の2点です。

前者は言うまでもありませんが、後者については仕事での映像制作と趣味の映像撮影で少し意味合いが異なります。仕事の場合は、例えば「ディレクションや編集作業における品質向上」に時間を費やしたいと感じるのではないでしょうか。

一方で、趣味で撮影されている方は、撮って出しの映像が既に作品のような品質になっていることを好むと考えられます。

この「品質」と「効率」を両立させることが普遍的な価値であり、GH7においてはこれを高い水準で実現することが重要だと考えました。

「皆様がこれまで以上に高いクオリティの映像作品を撮れるカメラ」を実現するにはどうすればいいのか。
「皆様がこれまで以上に簡単に映像作品を撮れるカメラ」を実現するにはどうすればいいのか。

この2つの観点はGH7の開発から訴求に至るまでのあらゆるプロセスで欠かせなかったものです。

世界で通用する映像クオリティ

LUMIXには現在、大きく分けてフルサイズのSシリーズとマイクロフォーサーズのGシリーズの2つのシリーズがございます。

センサーサイズの観点から申し上げますと、基本的な画質そのものはフルサイズに軍配が上がりますが、一方で、スピード感を持った撮影ができる利点はマイクロフォーサーズにあると、LUMIXでは位置付けております。

GH7においては、「総合的な映像クオリティがフルサイズに負けない高いレベルに到達できるか」が品質面の大きなテーマとなり、一方で「クリエイターがゴールとする品質に対していかに手間なく到達できるか」が効率面の重要なテーマとなりました。

主たる追加機能は香山から紹介した通りになりますが、マーケティング視点からも特にお伝えしておくべき点として、やはりARRI社との連携により実現した「ARRI LogC3」の搭載が、GH7の映像品質を語る上での大きなポイントになるでしょう。

「映画界の王様」と言われるARRIの絵作りを再現できたことは、本当に凄いことです。

GH7の発表と同時に、いくつかの映像作品を同時公開し、それに合わせてメイキング動画も公開しています。

今回、制作を依頼させていただいたクリエイターがカメラに求める水準は非常に高く、果たしてどのようなフィードバックが返ってくるのかドキドキワクワクしていましたが、撮影後に「非常にクオリティの高い映像が、効率的に撮れるカメラだ!」とお墨付きをいただけたことは、まさに狙い通りと大きな自信に繋がりました。

その中でも今回は、ARRI社のカメラをメインカメラに、GH7をサブカメラにした映像作品を撮影するチャレンジングなプロジェクトに挑戦しています。

技術的な観点で色がしっかりとマッチしていることは開発プロセス中に確認できていたものの、実際に撮影した場合に果たしてどのような評価をされるのか気になるところでした。そういった意味でも挑戦的な作品となっているので、ぜひ、ご確認ください!

(動画公開は6/9を予定しております)

今回、クリエイターが目指すゴールに向けて、「品質」と「効率」の2軸で貢献できる素晴らしいカメラを生み出すことができたと思っています。ぜひGH7を手に取って、その魅力を実感していただければ幸いです。

Vol.2では「動画性能・画質」について担当者よりお話しします。

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