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【Vol.1】世界を変えた、Panasonic手ブレ補正技術の進化と軌跡

こんにちは。LUMIXの手ブレ補正開発チームです。

LUMIXには、ボディ内手ブレ補正「B.I.S.」やレンズ内手ブレ補正「O.I.S.」、そしてその双方を組み合わせた「Dual I.S. 2」やS5IIから搭載された「アクティブI.S.」など、いくつもの手ブレ補正機能が搭載されています。

今でこそ当たり前のようにデジタルカメラに搭載されている手ブレ補正ですが、実は手ブレ補正を世界で初めて発明したのはPanasonicなんです。

こちらの記事では、Panasonicの手ブレ補正開発の歴史や、LUMIXの手ブレ補正の強みについてご紹介させていただきます。

左から、中田・岸場・櫻井・溝端・大原・江島・杉野・板屋

手ブレ補正開発の歴史

LUMIXの手ブレ補正開発初期から制御要素開発に携わってきた大原氏

世界で初めて手ブレ補正を開発したPanasonic。そのキッカケは、実はハワイでの動画撮影にありました。

手ブレ補正開発の歴史は古く、1980年頃にまで遡ります。当時のエンジニアはもう残っていませんが、残っていた記録からお話させていただきましょう。

原点は、ハワイで見た「同僚の回転運動」

世界初光学式手ブレ補正搭載 ビデオカメラ PV-460

松下無線研究所時代の話です。

カーナビに利用しようとジャイロセンサーの研究開発を手掛けていた大嶋という社員が、同僚と一緒にビデオカメラを持ってハワイに行きました。

当時のビデオカメラは肩に乗せて撮影するような大型で、ドライブ中に同僚が外の景色を撮ろうとすると非常にブレたそうです。

しかし、その同僚の身体の揺れを防ごうとする回転運動を見た大嶋は、その動きが当時開発を手掛けていたジャイロセンサーの動きに近いことに気づきました。

当時手掛けていたカーナビ用のジャイロセンサーの開発チームは、訳あって解散していた為、培った技術をカメラの手ブレ補正に応用できないかと思い付いたんです。

そこで大嶋は、当時まだ大型でカメラへの搭載が難しかったジャイロセンサーの小型化から取り掛かり、更にブレ補正メカニズムや補正アルゴリズムの開発を成功させ、1988年に世界で初めて手ブレ補正機能を搭載したカメラ「PV-460」を商品化しました。

海外需要が後押しし、世界的ヒット商品に

基板右側にある黒いチップが現在のジャイロセンサー

手ブレ補正を初搭載したPV-460は、発売と同時にアメリカの展示会にも出展しました。

当時、国内のビデオカメラ市場では「小型化」が主流となっており、手ブレ補正機構を搭載したカメラは比較的大きく見えてしまったようです。

そこで、国内ではなく海外市場に目を向け展示会に出展したところ、来場者からも驚きと感動の声を頂戴し、PV-460は大ヒット商品に!

同時に、この手ブレ補正の技術は科学的にも高く評価され、学会でも発表。手ブレが与える影響を初めて検証した研究成果として、新規性・独自性の高い原著論文として認定されました。

特許も出願し、名実ともに「世界で初めて手ブレ補正をカメラに搭載したメーカー」になった瞬間です。

LUMIXの手ブレ補正搭載の歴史

手ブレ補正機構・アクチュエータ開発を統率する江島氏

ここまでは「Panasonic」としての手ブレ補正開発についてお話させていただきました。ここからは「LUMIX」の手ブレ補正についてご紹介しましょう。

手ブレ補正の進化

LUMIXで初めてO.I.S.が搭載されたカメラ FZ1

LUMIXの手ブレ補正は進化し続け、その種類も増えていきました。以下にその進化の流れと、初搭載された機種名をご紹介します。

コンパクトデジカメが普及し始めた2000年頃、LUMIXとしてもユーザーが手軽に高品質な写真を撮影できるように、カメラを小型化して普及を目指しました。

その中でも当時、失敗画像要因として大きなウェイトを占めていた「手ブレ」を無くしたい想いから、まずは高倍率機種に手ブレ補正を入れるべく、開発が始まったことがLUMIXの手ブレ補正の始まりです。

その技術はその後、低倍率コンデジ、交換レンズヘと受け継がれていき、今では標準から望遠に至るまで多くの交換レンズに「レンズ内手ブレ補正」が搭載されています。

LUMIXのブレ補正システム

その後、手ブレ補正がついていない広角レンズやオールドレンズでも手ブレ補正を効かせたいというユーザーからの要望を受けて、LUMIX初のボディ内手ブレ補正機構(2軸)の開発に取り組みました。

ボディサイズへの影響を抑えつつ手ブレ補正の性能を確保するため、アクチュエータやメカ構成などの新規開発から始まり、様々なテストを行ったうえで、ボディ内手ブレ補正機構を搭載したカメラ「GX7」が商品化。

その後、アルゴリズム、アクチュエータ、各種デバイスの進化を経て、5軸対応手ブレ補正システムを導入した「GX7MK2」、さらにレンズ内手ブレ補正とボディ内手ブレ補正を掛け合わせた「Dual I.S.」のような、LUMIX独自の手ブレ補正機能の開発を経て、最新モデルのS5IIに搭載された「アクティブ I.S.」まで開発が進んでいます。

メカから見るボディ内手ブレ補正

手ブレ補正機構・アクチュエータ開発リーダーの杉野氏

ボディ内手ブレ補正(B.I.S.)の開発が本格的に着手されたのは2012年の話です。

レンズ交換式カメラで、オールドレンズのような手ブレ補正機能が搭載されていないレンズでも手ブレ補正を効かせたいという声から、開発に取り掛かりました。

当時はSTM(ステッピングモーター)方式でイメージセンサーを動かし手ブレを補正していたのですが、STM方式では目標性能に届くまでに様々な課題があり、本当に苦労しました。もう見たくもありません(笑)

そういった意味でも、メカ視点からこの10年で大きな転換点になったと言えるのが2016年。手ブレ補正の駆動方式をSTM方式からVCM(ボイスコイルモーター)方式に変更したこと。

(左)GX7のSTM方式
(右)GX7MK2のVCM方式

VCM方式に変更したことにより、上下左右だけではなく回転の動きにも対応できるようになりました。これにより、様々な手ブレに対してより滑らかに補正をかけられるようになります。

手ブレ補正機構・アクチュエータ開発担当の板屋氏

またSTM方式の弱点に「音」と「熱」がありました。この方式の手ブレ補正って実はものすごい熱が出るんです。

モーターの駆動音や熱が動画撮影に悪影響を与えGX7では動画撮影中のB.I.S.駆動はできませんでしたが、これらの課題もVCM方式に変更したことで大きく緩和され、GX7MK2では動画中の手ブレ補正動作も可能となりました。

熱で言えば、2017年のGH5からは放熱性を向上させ、「動画記録時間無制限」を実現、以降のマイクロフォーサーズはこのGH5が基本となり設計されています。

S1

2019年、LUMIX初のフルサイズ機S1にもB.I.S.が搭載されています。

同年に発売されたS1Hにおいては、新たにボディ内にファンを付けて放熱性を向上させることで、動画記録時間無制限を実現しました。

また、今年発売されたS5IIはB.I.S.可動部からファンに直接熱を伝えることで、ボディの小型化と放熱性能の向上も実現されています。

このように、メカから見た手ブレ補正の進化は「モーター」と「放熱」との戦いでした。

(続きます)

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