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【Vol.2】世界を変えた、Panasonic手ブレ補正技術の進化と軌跡

LUMIXの手ブレ補正開発チームが語る、手ブレ補正の開発裏話。本記事は後編となるVol.2です。

▼前編はこちらから!

機能の紹介と開発ストーリー

それではここで、改めてLUMIXの各手ブレ補正の紹介と、担当者から開発時のストーリーをお話させていただきます。

ボディ内手ブレ補正「B.I.S.」

撮影:Kazoo

カメラ本体に搭載されたセンサーシフト式の手ブレ補正機構を「B.I.S.」と呼びます。ブレ検出センサーと補正ユニットがカメラに内蔵されており、上下・左右・回転のブレを打ち消すようにイメージセンサーを動かすことで、補正します。

カメラボディのB.I.S.制御を担当している岸場氏

5軸ブレ補正を実現したGX7MK2からブレ補正の制御をハードウェアからソフトウェアへと移行したことで、柔軟に新しい技術を取り入れられるようになりました。

以前は専用のハードウェアで制御を行っていたため、新しい仕組みを入れるにしても、ハードウェアの開発から行う必要があり商品化までに2年ぐらいの期間が必要でした。

ですが現在はソフトウェアで制御しているため、機種開発中に思い付いたアイデアを柔軟に導入するような、これまでには不可能だった開発ができるようになりました。

レンズ内手ブレ補正「O.I.S.」

交換レンズ自体に内蔵された手ブレ補正機構を「O.I.S.」と呼びます。光学式手ブレ補正機構によってブレを補正します。

交換レンズのO.I.S.制御を担当している溝端氏

O.I.S.はLUMIXの手ブレ補正の中で最も歴史が古いものです。後述するDual I.S.で高性能な手ブレ補正を実現するために、劇的に進化を遂げたB.I.S.同様、O.I.S.も性能を引き上げる必要がありました。そこで2017年に手ブレ補正性能向上プロジェクトが立ち上げられ、当時の望遠系レンズで最高性能を目指し取り組みました。

まず新規に手ブレ補正性能を阻害する度合を評価できるシミュレーションソフトを開発しました。性能阻害要因を順位付けし、改善すべき項目を明確にしました。特に、手ブレを検知するジャイロセンサーの特性と、補正アクチュエータの制御精度という二つの重要なポイントが性能阻害要因として上位にランクインしていたため、これらを改善することで性能向上を達成しました。

このような取り組みは継続的に行われており、マイクロフォーサーズで培った技術はフルサイズ用の交換レンズにも適用され、ユーザーからも高い評価をいただいています。

Dual I.S.2

LUMIX Sシリーズの全ての機種、一部を除くGシリーズの多数の機種に搭載されている「Dual I.S. 2」は、高精度ジャイロセンサーで検出した手ブレ情報をもとに、ボディ内手ブレ補正(B.I.S.)とレンズ内手ブレ補正(O.I.S.)を連動して制御することで、これまで以上の手ブレ補正効果を獲得しています。

▼詳細はこちらから

これまではそれぞれ単独でしか動作していなかったB.I.S.とO.I.S.を掛け合わせ、更なる手ブレ補正性能向上を実現できないかという発想から、世界初のB.I.S.とO.I.S.の協調補正システム「Dual I.S.(現在のDual I.S.2)」が生まれました。

個人的に印象に残っているのは、既に発売済みだったレンズにも新機能のDual I.S.機能を追加したことです。複数のレンズをファームウェアアップデートにより対応できるようにする作業は大変でした。

システム的に古く、性能を進化させることが難しいハードウェア構成のレンズでも、ユーザーにとっては貴重な資産です。発売済みのレンズでも可能な限り新しい機能に対応させたいという想いから、ファームウェアアップデートでDual I.S.をご利用いただけるよう開発しました。

これを機に皆様も、お手持ちの機材の更新をお試しください!

▼その他の機能についてはこちらの記事もご覧ください!

静止画と動画の補正アルゴリズムに違いはあるのか

撮影:Kazoo

実は、静止画と動画では手ブレ補正の優先順位が違います。

静止画は、「精度」を最優先としています。精度とは、手ブレの検出とイメージセンサーの位置制御を極めて高精度に行うことです。

手ブレの検出にはジャイロセンサーが用いられ、その誤差を工場出荷時の調整や信号処理で補正し、精度を向上させています。イメージセンサーの位置制御でも同様に、工場出荷時の調整と信号処理による補正が重要です。位置検出にはホールセンサーという磁気センサーが使用されます。しかし、ホールセンサーは周囲の磁界の影響を受けやすく、その歪みやノイズを工場出荷時に実際にイメージセンサーを動かしながら調整し、ミクロンオーダーの制御を実現しています。

一方、動画においては手ブレを正確に補正することよりも、パンニングなどでカクツキが発生しない自然な動きで補正を行えるよう「滑らかさ」を重視しています。

滑らかな補正を実現するには、現在の手ブレの状態に合わせて補正パラメータをダイナミックにコントロールする複雑な制御が必要になります。我々LUMIXにはムービー時代から積み上げて来た技術があり、その技術をB.I.S.、O.I.S.に最適化できたことで、動画ブレ補正も多くのクリエイターにご好評をいただいています。

「手ブレ補正ブースト」「アクティブI.S.」が誕生した理由

B.I.S.メカ制御を担当しS5ⅡにアクティブI.S.を導入した中田氏

YouTubeを始めとした動画共有プラットフォームの普及により、動画撮影のニーズが増加しています。そんなニーズもあり、GH4/5の成功を受けたLUMIXは「動画撮影時の手ブレ補正の進化」に取り組むことを決定したんです。

調査を進める中で、三脚を使用して撮影するシーンが多いことに気づきました。しかし、三脚を使用すると機動性が落ちるというデメリットがあり、また、シチュエーションによっては三脚を使うこと自体が難しい場合もあります。

そこで、完全に映像を停止させることを目指す静止画向けの手ブレ補正の考え方が活かせるのではないかと考え、「手ブレ補正ブースト」を開発しました。

手ブレ補正ブーストは、手持ちでの固定アングルにおける動画撮影に特化した機能です。被写体の動きに関わらず画角を固定するフィックス撮影でも、手ブレ補正ブーストをONにすることで、三脚やジンバルを使用せずともブレを軽減して撮影できます。

【LUMIX Ability】手ブレ補正機能について解説

ユーザーからの評価も高く、LUMIXの利点の一つとして挙げていただける機能となりました。

S5II

そして、S5IIより最新の「アクティブI.S.」が搭載されました。

GX7MK2から回転補正が可能なB.I.S.が導入されましたが、実はB.I.S.ユニットの制御面ではそれ以降大きな進化がありませんでした。

しかし制御を見直す過程で、B.I.S.ユニットの持つ能力が最大限に活用されていないことに気づいたのです。

そこでB.I.S.ユニットが持つ能力を無駄なく活かし切る制御を開発し、補正できる手ブレの大きさを最大で2倍に拡大したのがアクティブI.S.となります。

B.I.S.の要素開発と製品導入を統率する櫻井氏

当社はマイクロフォーサーズマウントとフルサイズのLマウントの二つの製品ラインを持っていますが、センサーサイズの違いからB.I.S.で補正可能な手ブレの大きさはフルサイズの方が原理的に小さくなります。

しかし、アクティブI.S.技術によってマイクロフォーサーズ機種に近い補正範囲をフルサイズでも実現できるようになりました。その結果、歩き撮り撮影など大きなブレが発生するシチュエーションでも効果的な手ブレ補正が可能になりました。

「ブレ補正」で撮影体験を変えていく

現在は、動画クリエイターがさらに快適に撮影できるよう、手ブレ補正機能の改良を続けています。

次の段階は歩行だけでなく、より激しい動きでも安定した映像が撮影できるような機能を生み出すこと。

現代のトレンドは静止画から動画へと移行しつつありますが、それに伴って私たちは静止画の極限を追求し続けるとともに、動画撮影の技術向上にも一層の力を入れていきます。

私達が目指すのは、静止画と動画の両方で快適に撮影できる手ブレ補正を開発し、最高品質の撮影体験を提供することです。

世界で初めて手ブレ補正を生み出したメーカーの名に恥じぬよう、これからも世界を牽引する手ブレ補正技術を生み出していきます。

▼LUMIXのタッチアンドトライは最寄りの販売店、またはLUMIX BASE TOKYOまで!

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