【Vol.1】当たり前を当たり前にした、「メニュー・UI」の開発の歴史
こんにちは。LUMIXの仕様開発チームです。
カメラを操作する上で必ず目を通すことになる画面、それが「メニュー」です。
メニューには、メーカーが考えるユーザビリティ(操作性・使いやすさ)があらゆる視点で検討され、盛り込まれています。
LUMIXでは、スマホが無い時代からタッチパネルでの操作をカメラに導入し、コンデジ市場で高い評価をいただいていました。
そして、世界で初めてミラーレス一眼を開発する際には、モニター上のGUI(画面上の見やすさ、操作性)やタッチパネル、そして光学ファインダーに変わるEVFなど、メニュー開発においても様々な可能性に挑戦することになります。
今回の記事では、そんなメニュー開発の歴史と、LUMIXのメニューのこだわりをお話しさせていただきます。
LUMIXの「メニュー」のはじまり
まずはメニュー開発の歴史からお話しましょう。
PanasonicがLUMIXブランドを立ち上げ、本格的にデジカメ市場に参入したのは2001年頃のこと。
まだコンパクトデジカメも普及しておらず、もちろんスマホも無い、フィルムカメラからデジタルカメラへの移行が急速に進んでいた時代です。
当時LUMIXは、カメラメーカーとして後発だったこともあり、ブランド力・商品力を向上するためにも、「時代が移行する中で必要とされることは何か」を常に考えながら、あらゆる面での進化に取り組んでいました。
小型での高倍率ズームや手ブレ補正機能といった技術が進化する中、 メニューや操作系も進化の対象となったんです。
それからは、LUMIXのデザイン部門や本社の研究部門とも一体になり、他社の良質なカメラも研究しながら、操作系に関するヒューリスティック調査を毎年行いました。
この調査の報告をもとに、ボタン操作、モニター上のアイコン表示や大きさ、配置、 記録画素数の設定のしやすさ、画像消去のしやすさなど、「カメラビギナーにもわかりやすいGUI」にこだわって改善を繰り返してきました。
そんな中、スマホが普及していない、つまりタッチパネルの操作が今ほど浸透していない時代に「タッチシャッター・タッチAF」を初めて導入したのが、2008年に発売されたFX500です。
このカメラでは、タッチシャッター・タッチAFだけではなく、撮影モードやメニュー操作も画面上にタッチで行えるようになりました。
当時の調査でも、FX500使用前は他社のカメラの方が評価が高いのに、FX500使用後はPanasonicの評価が上がったという結果が報告されています。
当時は特別に意識していた訳ではありませんが、白物家電でも意識していた「初めての人にも優しいデザイン」が、LUMIXのUIの源流にあるように思います。
コンパクトデジカメ時代から、ユーザに寄り添う姿勢を貫いてきたのです。
ミラーレス一眼の誕生、メニューの変化
2008年、LUMIXはミラーレス一眼カメラを世界で初めて開発、発売しました。それが、G1です。
ミラーレスだからこそ導入できたこだわりは、何といってもOVF(光学ファインダー)に代わる新たな価値を持つEVF(電子ビューファインダー)でした。
世界初ミラーレスが生み出したEVFの価値
どうすれば光学ファインダーの性能に近づきながら、EVFとしての新しい価値を提供できるのかを考えたとき、その最たる違いは「EVFならファインダーの映像をリアルタイムで変化させることができ、映像にアイコンも重ねて表示できること」だと感じました。
EVFなら、撮影前に明るさや色味の調整がすぐに反映され、見たままの映像を写真として切り出すことができます。
例えば、フォトスタイルをモノクロに設定した場合は画面上にモノクロ表現が反映され、シャッタースピードを遅くする長秒撮影時には噴水が糸を引くような効果が画面に反映されます。
これは、今ではミラーレス機として当たり前ですが、一眼レフでは実現できないことだったんです。
一眼レフでは相当慣れていないと、撮影環境に対して露出やボケ感が思ったように設定できているかは、一度撮影して再生画面から確認しないとわからないものでした。
ミラーレスでは、EVF越しに絵作りが反映された画像を確認できることから、一眼レフのような「設定の確認」の手間が省かれ、瞬間を逃さず撮影できるように進化したと考えています。
ミラーレス一眼カメラのUIを創る
世界初ミラーレス、G1のUIを開発する際に意識していたことは以下の通りです。
また、G1は一眼レフ機の対抗モデルとして開発を進めてきましたが、 GF2ではマイクロフォーサーズ+ミラーレスならではの小型軽量を実現し、エントリーユーザに刺さるモデルにしようということで、コンデジで導入していたタッチ操作を導入しました。
タッチ操作の進化
2010年12月発売のGF2では、コンデジで実現していたタッチシャッター・タッチAFに加え、新たな機能として「ボケ味コントロール」と「Q MENUにおけるタッチ操作」を導入しました。
開発当時は他メーカーも小型軽量を売りにしたカメラを出していましたが、タッチ操作にはまだ対応できていなかったんです。
GF2も更なる小型軽量に取り組み、女性もターゲットにしていたので、ネイルをされている方でも押しやすいアイコンやバーの太さを意識していたのですが、こちらは販売店の方からも好評をいただいていました。
「ボケ味コントロール」は、ライブビューを見ながら直感的に被写界深度(絞り)を設定できる機能です。当時、同時期にボケをコントロールする機能を持ったカメラは他社からも出ていましたが、タッチ操作には対応していませんでした。
このようにGF2では、ボケ味コントロールやQメニュー、Fn機能などのカメラの基本操作を、撮影画面からタッチで直感的にできるようにしました。
その後、2012年12月に発売されたGH3ではメニューやFnボタンを含め、すべてタッチ操作が可能となりま した。
実はGH3の頃にはターゲット層を少しハイエンドユーザにシフトし、カメラの操作に慣れている方に使ってもらうことを想定した設計に変えていきました。また、この頃にはスマホも普及してきており、多くの方がデジタルデバイスに慣れてきていると考えていたんです。
時代に合わせてユーザが持つ知識やスキルも変化していきます。時代に合わせてLUMIXのUIもどう進化していくのか、それを常に意識しています。
一方でGH3は、前述の通りタッチ操作に力を入れているものの、ボタン操作をおざなりにするわけではありません。ボタン操作とタッチ操作が両立することは、常に意識していました。
やはり、タッチ操作をすることで手をカメラから離さなければならない場合もあり、タッチを避けるユーザも少なからずいます。ボタン操作を基本としつつ、タッチ操作を追加していくという意識を常に持って設計しています。
UIについては、操作性を重視した結果、他社よりもタッチアイコンの大きさは少し大きくなったのですが、 操作性と一覧性のバランスが取れたUIとして定評がありました。
GH3で操作性が改善され、GH4ではさらなる動画機能や性能が進化し、「神機」との評価もいただき、ハイエンドユーザにも多く使っていただけるようになりました。
しかし、ハイエンドユーザの要望に対応していく中で、機能が増える毎に情報量も増え、この時点で、特に初心者にとっては「何を選べばいいかわからないメニュー」になりかねない状態になっていたんです。
そこで私達はGH5、そしてSシリーズへと開発が進む中で、ある決断を重ねていきます。
(続きます)
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