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東大 x 江角泰俊 x 隈研吾 。特別展示 『被覆のアナロジー —組む衣服/編む建築』@インターメディアテク

こんにちは。
インターメディアテクで11月5日から開催される特別展示 『被覆のアナロジー —組む衣服/編む建築』の内覧会に行ってまいりました。

本展は、ファッションデザイナーの江角泰俊氏と建築家の隈研吾氏およびインターメディアテクとの企画による世界初公開展示となります。

衣服と建築、異なる分野であっても人間の活動においてはいずれも「まとう」ことを定義する創作物である。衣服であれば身体を包み、建物であれば人々の営みを包む。両者は広く人間の活動を取り巻く「被覆環境」と位置づけることができる。

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江角氏が2020年に隈氏と対談した頃からあたため、隈氏もその想いに共感し実現した今回のプロジェクト。

医学部にあった100年以上前の机が並ぶレクチャールーム「アカデミア」での記者発表
空間・展示デザイン Ⓒ UMUT works

「組む衣服/編む建築」は衣服と建築に類似する構造的・組織的な成り立ちに着目し、生産技術の発展による自由度の向上、環境負荷に配慮した自然素材の利用、再生繊維や材料のリユースなど、有機的に統合された新しいデザイン手法を提示しようとする試みである。

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江角氏手掛けるブランド「エズミ(EZUMi)」の2021年春夏コレクションは、隈研吾設計の南青山のサニーヒルズが会場でしたね。(記事「隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則」)

マックイーンに憧れ、マックイーンが卒業したロンドンのセントラル・セント・マーチンズに辿り着いたという江角氏。
セントマで、ファッション&テキスタイル科を専攻後、「アレキサンダー・マックイーン」などで経験を積んだ氏が自身のブランドコンセプトに掲げたのは「理 / LOGIC」。

そして隈氏は、「19世紀最高の建築理論家ゴットフリート・ゼンパーは建築とは編んでつくるものだと見抜いていました」と語り、「コンクリートは固めて壊すしかないけれど、編むというのは成長の可能性がある。『編む建築』は建築の原点でありとても未来じゃないか!」と。

「建築はシステムに基づいてつくっていく。そのシステムの裏にどんな「理」があるのか考えるのが大切」と隈研吾氏。

フェルトの壁面。
硬さと柔らかさを持つフェルト。建築とファッションの中間。

3種類のサイズの30枚の襟を組み合わせたドレス。

襟を部分とした時に、ユニット形成し作り出される構造は、結果として独創的で自由なカタチを生み出すことができる。

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「それぞれをボタンで留めることにより様々な組み合わせが出来るんですよね、LEGOみたいに。」と江角氏。Analogy of Couture。

英国陸軍由来のコート、トレンチ。トレンチとは陸上戦で銃撃から逃れるために掘られた「塹壕」を意味しているそう。

ゴールドラッシュのアメリカ西部で、鉱夫を支える丈夫な作業着が必要なことから誕生したのがジーンズ、そしてGジャン。

どのドレスも裾の広がり方が美しかった。

竹衣服。衣服では通常使用されない素材である竹を使い、日本の伝統工芸、竹職人の技を衣服へと昇華する新たな試み。

今回の竹衣服に携わったのは、隈氏と縁のある「横山竹材店」。重要文化財の仕事も手がける京都の竹材店です。

英国ヴィクトリア時代のクリノリンの様なシルエットを誇張しているスカート。

双曲面構造を応用した新たな編み方を開発して誕生したドレス。

ゴムを使用することで、可動域を作り着用を可能としています。

やたらめったら編む「やたら編み」という職人技を用いた竹トップス。

隈氏の生み出すものは建築のメティエダール 。
その土地に息づく文化、自然に敬意を払い、土地の空気を抱え込み大胆に昇華する。地元の素材や技術を使い、その土地にあるもので循環させていく。真の「持続可能」。

圧縮力と張力の力のつり合いによって、構造が自己安定するシステム「テンセグリティー(Tensegrity )」をファッションに応用。身体からの衣服への新たな距離を作ることで、衣服としての構造体の境界線を越えていくことができる Tensegrity Garment。

「間メディア実験館」であるインターメディアテク 。

インターメディアテクでは、目に見え、感じることができる実物や現場こそが、多様な情報伝達手段の結節点だと考えています。この発想は、文字も画像もない太古の時代の情報伝達の根源を扱う考古学や人類学の研究成果に通じるものです。そこでは、実物や現場が発するメッセージはそれらがおかれた場所や見る者の受け止め方によって異なっていて、その様態は社会を映し出す鏡になりうる、とも主張されています。

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古い教室の一部が丸の内のビジネス街に入ると、うっすらした違和感がなんだか新鮮で、窓から見える東京駅舎までも違う次元に移動したように感じます。(記事「東京駅前の「驚異の部屋」を見に行こう!インターメディアテク(東京大学総合研究博物館+日本郵便)② / 前編」)

空間・展示デザイン Ⓒ UMUT works

ここは実験場。様々な点が交差し新たな線が生み出される空間。領域を超えたデザインが生まれる場。なんだかエネルギーの高い磁場みたい。

医学部の100年以上前の机にはインク瓶を置くための窪みがあります。
空間・展示デザイン Ⓒ UMUT works

この実験場で開催されることに大きな意味がある本展。
「アカデミックであるけれど突き抜けているインターメディアテク 」と隈氏。

昭和6年竣工の旧東京中央郵便局舎(現 KITTE)は、逓信省営繕課の吉田鉄郎による外観設計。昭和モダニズムの粋を集めた建築物。インターメディアテクは、細分化せずダイナミックに空間を活かし、当時の余韻を見事に保存しています。

そうそう、鶴丸好きの私が江角氏で思い浮かべたのが、JALの女性CAに初導入されたパンツスタイルが画期的だった制服。業務に支障をきたさないよう配慮されたパフスリーブと袖丈、リブの色と長さも素敵でした。(記事「急に格納庫が見たくなって「JAL工場見学 〜SKY MUSEUM〜」に行ってきた」)

2020年4月から導入されたJALの制服。飛行機 x ファッション。

インターメディアテク に来ると心が動く。
視覚的な美しさだけでまとめられた陳列棚、そっけないキャプション、わざと動線を乱した什器の配列。
自分で考え、自分を信頼する大切さを教えてくれる。教育って個の特性をとことん伸ばしてあげること。子どもたちは教えてもらわなくても自分の好きを知っている。それを削らなければいいだけ。
(記事「東京駅前の「驚異の部屋」を見に行こう!インターメディアテク(東京大学総合研究博物館+日本郵便)② / 後編」)

身体を包む衣服も、人々の営みを包む建物も内包するものを現すラッピング。見えないけれど感じることが出来る意識というエネルギーは確実にラッピングに反映している。美しいって嬉しい。

ブラックボックス化した複雑なデザイン・生産のプロセスを、編む・組むといったプリミティブな手法によって透明化し開放すること。そして、透明性の確保による副産物として、生産から流通、消費、廃棄、再生産といった循環型プロセスによる持続可能性の担保が可能となると考える。

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衣服の素材を建築に、建築の構造を衣服に。
新しい視点を体感しに是非。

特別展示 『被覆のアナロジー —組む衣服/編む建築


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