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「届かない手紙」詩―拝啓父さん

松下友香さんの企画に参加させていただきました

天国に住む父さんに手紙を
書いてみました

拝啓 父さん

父さん 天国で母さんと仲良く暮らしてるかな
今の 父さんは 何歳の時の父さんとして
天国にいるのかな
もしかしたら キラキラした学生服姿だったりして!!
母さんと出会った時代の 姿かな

父さんが 入院する日
小さなカバン 一つ提げて
「水虫も 治してもらうよ」と
家の門を 出て行ったけど
ボクは かなり 不安だった

父さんには 最後まで言えなかったけど
検査で 肝臓に3つ雲のような白い影が
見つかったんだよ

「余命は 良くて3ケ月です
手術は無理」と 眼鏡の奥の
冷たい目で 主治医に言われた

僕は 本屋で 抱えきれない本を
買い込んで 何とか治療の道は
ないかと 捜したんだ

でも父さんの病状は 日々悪化して
すぐに 酸素テントに入れられた

ボクは 思い余って
丸山ワクチンを 取りに行き
主治医の反対を 押し切って
使ってもらったんだ

でも 父さんの病状は
一向に 改善しなかった
「手遅れ」だった・・・

酸素テントの中から
「ビールが飲みたい タバコが吸いたい」と
母さんを 困らせたよね

思い切って 存分に 飲ましてあげれば
良かったと 今も 悔いてる

天国へ 旅立つ日
苦しそうな息の下で
「世のため 人のために やってきたのに
どうして こんな事になったのか・・」と
つぶやいたね

母さんは 何度も
父さんの名をよんだけど
父さんは 何も言えなかった

ボクは握っていた 父さんの手が
段々と 力をなくしていくのを
必死で 止めようとしてた

主治医は 父さんを解剖したいと
言ったけど ボク断ったよ!
さんざん 会社勤めで 苦しい思いをして
また 死後も 痛い思いをさせたくなかった

父さん 治してあげられなくて
ごめんなさい
ボク 全然 非力だった・・・
もっと もっと 父さんには
長生きして ほしかった

ボクの 社会人の姿や
孫の手も 握ってほしかった

百日紅の花が 
庭を華やかにする 季節になると
父さんの 真似して
木の下で 空を見上げてみてる

父さん ボクがそちら側に
行く時は 迎えに来てね
ボク 方向音痴 治ってないから・・
じゃあ またね・・・さよなら

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