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「半分ろうそく《毎週ショートショートnote》応募作品」

ある春の日、蝋燭作り一筋60年の
ベテランの蝋燭職人は久しぶりに
心が熱くなっていた。 
 孫娘から電話があったのだ。
「おじいちゃん 私もうすぐ
結婚するの。それで急で、悪いんだけど
ブライダルキャンドルを作ってくれない。
大きいのがいいの」
 翌日から、老人は制作に取り掛かる。
デザイン、香り等々一心に考えた。
キャンドルの 原型が完成し
彩色やデコレーションをする。
ここからが、老人の一番の腕の見せ所。
 老人は、桜の花を描き始めた。しかし
翌日、老人は作業中に、急に胸を押さえて、
倒れてしまった。 苦しい息の下で
「ろうそく・・半分ろうそく。。続きを」
というと天国へ旅立った。 これを
耳にした孫娘は、急いで工場にやってきた。
「私が残りの半分つくる。ジイジには、よく作り方
教わっていた」
 徹夜して、蝋燭を完成させた。
老人の デザイン画以上の 蝋燭が完成した。
 結婚式の日、新郎新婦の手で
ブライダルキャンドルが点火され、
スパークが、華やかに燃え上がった。
孫娘は、その輝きの中に、ジイジの
嬉しそうな笑顔があったのを
見逃さなかった
「ジイジ 半分ろうそく ありがとうね」と
炎の中のジイジに 小さな声で語りかけた

たらはかにさんの毎週ショートショートの企画に参加しました

#結婚式の思い出 #老人 #小説 #町工場
#毎週ショートショートnote #結婚式  
#ろうそく作り

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